投資信託には公募の投資信託と私募の投資信託があります。この違いは何でしょうか。
公募と私募 #
証券会社、銀行等で販売されている投資信託の多くは、不特定多数を対象に資金を集めることを前提としている「公募」の投資信託です。テレビや雑誌のコマーシャルなどで見かける投資信託は全て公募の投資信託です。
これに対して、私募投信は、文字どおり「私的な募集」によって集められる投資信託のことです。「私募」の概念は金融商品取引法上では次の2つがあります。
- 多数の投資家を相手に行うのではない募集(多数とは50人以上を指します)
- 適格機関投資家に対して行う募集
多数の投資家を相手に行うのではない募集 #
ここでいう多数の投資家を相手に行うのではないというのは、50人未満を対象とするという意味です。これを少人数私募といいます。
適格機関投資家に対して行う募集 #
適格機関投資家とは、法律(金融商品取引法)で定義された分類です。金融商品取引法では、適格機関投資家は、有価証券に対する投資について専門的な知識や経験を持っている者とされています。
適格機関投資家の範囲については、金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令第10条に詳細に定義されています。具体的には、金融商品取引業者、投資法人、外国投資法人、銀行、保険会社、信用金庫及び信用金庫連合会並びに労働金庫及び労働金庫連合会、農林中央金庫及び株式会社商工組合中央金庫といった金融機関等をさします。
この適格機関投資家のみを対象にする募集を「プロ私募」と呼びます。
私募投信のメリット #
私募投信のメリットは、運用会社側では、公募投信に比べて各種法的書類の手続きが簡単なことで、コストや手間の軽減ができることです。 また、運用会社、投資家に双方にとって、公募と比較し、設定解約の頻度が低いことから、運用が安定し、また長期的な視野にたった運用計画を立てやすい等、パフォーマンスにかかる好要因もあります。
なお、上記のように、私募とは日本の法律上の概念です。したがって、外国に行けば異なる定義や、異なる考え方がありえます。例えば、いわゆるヘッジファンドの多くは日本語で言えば私募にあたるprivate placementという方法で募集されます。
公募と私募の割合 #
投資信託協会によると、2024年8月末現在、投資信託全体(公募・私募含む、ETF、REIT等含む)では、約362兆円が運用されていますが、その公募・私募の内訳は次のとおりです。公募が全体の3分の2の約240兆円を占め、残り3分の1の120兆円が私募投信です。
ファンドの数を見ると、私募投信は8,362本が運用されており、そのうち約8,299本は契約型の投資信託、63本は投資法人(内、不動産投資法人が62本)となっています。
私募投信のまとめ
私募投信は、「私的な募集」により資金を集める投資信託で、公募投信とは異なり、少人数(50人未満)または適格機関投資家を対象にします。メリットとして、法的手続きが簡単でコストが低いことや、運用が安定し長期的な計画が立てやすい点が挙げられます。2024年8月現在、公募投信が全体の約3分の2を占め、私募投信は全体の約3分の1に相当します。