投資口の希薄化に関するリスク #
不動産投資法人(REIT)の投資口の希薄化に関するリスクとは、新たな投資口の発行によって既存の投資家の持ち分が相対的に減少することを指します。これにより、既存の投資家が享受する利益や分配金の割合が希薄化するリスクが発生します。以下は、このリスクがもたらす具体的な影響です。
1. 分配金の減少:追加の投資口を発行することで、全体の分配金を分配する口数が増えるため、1口あたりの分配金が減少する可能性があります。特に新規発行によって得た資金が即座に利益を生むわけではない場合、既存投資家の配当収入が短期的に減少するリスクがあります。
2. リート価格の下落:希薄化が進むと、1口あたりの資産価値(NAV)が下がることがあり、それが市場にネガティブな影響を与え、投資口価格の下落を招く可能性があります。また、投資家は希薄化リスクを懸念して売りに回ることがあり、それも価格低下の要因になります。
3. 既存投資家の影響力低下:特に既存の大口投資家にとって、持分の割合が低下することで投資法人の意思決定に対する影響力が弱まることもリスクとして考えられます。
投資口の希薄化の影響のイメージ #
例えば、利益が10億円の投資法人において、発行済み投資口数が100,000口、1口当たり当期利益が10,000円、1口当たり分配金の予想が9,500円(配当性向95%)だったとします。ここで10,000口の投資口の追加発行が行われた場合を考えてみましょう。当期利益が変わらないのであれば、100億円の利益を110,000口で除すると1口当たり利益は9,090円に減少(希薄化)することになります。1口当たり分配金は、必ずしも純利益と同じ割合で減少するわけではありませんが、概ね8,635円程度に減少すると推測されます。1口当たり利益(分配金)が減少するとなると、それを嫌気して投資口価格も下落する可能性があります。
投資口の発行による資金調達 #
不動産投資法人(不動産投資信託)は、資金調達のために投資口を追加発行することがあります。これは、一般の上場企業が資金調達のために株式を追加発行するのと同じことです。
不動産投資信託が増資を含めた資金調達を行う理由には、資産の取得、建物等の修繕、投資法人の運営のための資金、借入金の返済、投資法人債の償還金の手当、敷金・保証金などの債務の返済などがあります。
ただし、増資を行っても、必ずしも利益や分配金が減少するとは限りません。増資により調達した資金で、新たな不動産を購入することで、そこからの収入により営業収益や利益が増加し、それに伴い分配金が引き上げられることもあります。
実際に、多くの不動産投資法人では、公募増資の発表の同日に、運用状況の予想についても修正を公表しますが、業績予想は上方修正されることが多くあります。
不動産投資法人の投資口の希薄化に関するリスクまとめ #
不動産投資法人が新規の投資口発行を行う理由として、物件の追加取得や借入金の返済、既存物件の改修などがありますが、発行後すぐに収益性が向上するわけではないため、短期的には希薄化によるリスクが顕在化する場合がある点に注意が必要です。