ダークプール #
ダークプールは、証券取引所や認可された私設取引システム(PTS=Proprietary Trading System)を通さず、取引参加者が匿名で、注文価格や注文量を外部に公開せずに証券取引を行う非公開の市場(取引プラットフォーム)です。
通常の取引所では、買い手と売り手の注文が公開され、誰でも取引の詳細を確認できますが、ダークプールでは注文情報が公開されないことが特徴です。これにより、大規模な取引を行う投資家(機関投資家など)が、市場価格に影響を与えることなく取引できます。
ダークプールは、内部の取引情報が外部に出ないため、英語で「dark pool of liquidity(流動性のダークプール)」と呼ばれ、日本語では「ダークプール」と呼ばれています。金融庁は、2019年2月19日に開催された金融審議会ワーキング・グループの資料で、ダークプールを「電子的にアクセス可能で、取引前に透明性のない(気配情報を公表しない)取引の場」と定義しています。
2つの証券取引 #
証券取引には、証券取引所で行われる「取引所取引」と、それ以外の「取引所外取引」があります。
取引所取引 #
取引所取引は、東京証券取引所、ニューヨーク証券取引所、ロンドン証券取引所など、認可された証券取引所を通じた取引で、最も一般的な証券取引の形態です。取引所取引には、立会取引と立会外取引があります。
- 立会取引: いわゆる市場が開いている時間の取引です。たとえば、東京証券取引所での日本株の現物取引は9:00~11:30および12:30~15:00に取引所で行われます。
- 立会外取引: 立会時間外に行われる取引で、東京証券取引所ではToSTNet(Tokyo Stock Exchange Trading Network System)取引と呼ばれます。主に、証券会社の自己売買や機関投資家による大口取引が行われ、取引時間は取引の種類により異なります。
取引所外取引 #
取引所外取引には、証券会社が認可を受けて開設する私設取引システム(PTS)と、それ以外にダークプールと呼ばれる取引があります。証券会社はコンピュータシステムを使い、顧客の注文と対当する取引相手を見つけて取引を成立させます。
PTSとは #
PTSでは、証券会社は東京証券取引所と複数のPTSに接続し、株価(気配値)を自動的に比較して、最も有利な価格で注文を発注できる「SOR(スマート・オーダー・ルーティング)」を利用します。これにより、より有利な価格での約定が可能です。
日本国内のPTSには、ジャパンネクストPTS、Cboe Japan、大阪デジタルエクスチェンジ、Japan Alternative Marketなどがあります。
ダークプール #
ダークプールは、証券会社がコンピュータシステムを用いて、顧客の注文と対当する取引相手を探し、社内で注文をつけ合わせて取引を成立させます。これにより成立した取引はToSTNetに発注され、約定が行われます。
ダークプールの主な仕組み: #
- 非公開の注文: 売買注文は市場に公開されず、参加者同士が匿名で取引します。これにより、大口取引が市場に影響を与えることなく行われます。
- 取引価格: 通常、ダークプールでの取引価格は公開市場の価格に基づいて設定されます。多くの場合、市場の売買スプレッド(買値と売値の差)の範囲内で取引が成立します。
- 利用目的: 大規模な投資家が、市場価格に影響を与えずに資産を売買するために利用します。例えば、大口の売買注文を公開市場で行うと、価格が急変するリスクがあるため、価格変動を避けるためにダークプールが使用されます。
- リスクと批判: ダークプールは透明性が低いため、不正取引や市場操作のリスクが指摘されています。また、個人投資家にはアクセスしづらく、不公平だとの批判もあります。
ダークプールは、大規模な取引を秘密裏に行うことで、市場への影響を最小限に抑える取引プラットフォームです。
ダークプールについての規制 #
個人投資家向けダークプールの拡大が見込まれるため、金融庁は、ダークプールの実態把握を行うために、ダークプール取引の透明化等に向けた次の措置(2020年内閣府令、金商業等監督指針改正)を講じました。
【2020年】(内閣府令、金商業等監督指針改正)
(主な具体的措置)
(1) ダークプールへの回送条件・運営情報の説明
顧客保護の観点から、顧客からの注文をダークプールに回送する金融商品取引業者等(ダークプール回送者)に対し、以下を求める。
- 回送先であるダークプールの運営状況を把握すること
- ダークプールへの回送条件や運営情報(運営者の会社情報・参加者情報等)について、顧客の知識・経験等を踏まえた適切な説 明を行うこと
(2)価格改善の実効性の確保に向けた情報の記録・保管
顧客・当局から求めがあった場合に、事後に価格改善の状況の確認ができるよう、ダークプール回送者に対し、以下を求める。ただし、顧客が価格改善よりも優先する事項がある場合を除く。
- ダークプールで対当した価格及び時刻の記録・保管
- ダークプールに回送を行うと判断した際の金融商品取引所、PTS、ダークプールの価格及び時刻の記録・保管
(3)価格改善効果の顧客説明
価格改善を主な目的としてダークプールで取引を行った顧客に対し、個々の取引の価格改善効果の状況について分かりやすく説 明を行うこと
なお、法律等は改正されることがあります。最新の状況については、金融庁のホームページなどで確認して下さい。