農林債券は、農林中央金庫が発行する債券のことを指します。農林中央金庫は、日本の農業協同組合(JA)や漁業協同組合(JF)、森林組合などの金融機関としての役割を担い、主に農林水産業関連の資金を調達するために債券を発行しています。
農林債券と農林中央金庫 #
農林中央金庫は、農業協同組合、漁業協同組合、森林組合などの出資による、農林水産業の協同組織を基盤とする民間の金融機関で、大正12年に「産業組合中央金庫」として設立され、その後、昭和18年に「農林中央金庫」と名称が改められました。
農林中央金庫は、「農林中央金庫法」に基づいて債券を発行することが認められており、この債券を「農林債券」と呼びます。農林債券の発行により調達した資金は、農林水産業に関連した企業等への融資などに活用されています。
長期債務格付及び短期債務格付も高いことから、農林債券は安全性の高い投資対象と考えられています。2023年度末では円建ておよび外貨建てを合わせた農林債発行残高は3,795億円です。
ただ、2024年5月に農林中央金庫が保有する大量の外国債券が巨額の含み損を抱えていることが公表され、これを受け、6月にS&P グローバル・レーティングは、長期・短期発行体格付けは、それぞれ「A」と「A-1」に据え置くものの、同金庫のアウトルックを「安定的」から「ネガティブ」に変更しました。また、7月には、ムーディーズが農林中央金庫について格下げ方向で見直しの対象としたことを発表しました。その後、9月にムーディーズは農林中央金庫の資本増強策や収益の回復見通しを勘案して格下げを見送っています。
農林債券と投資信託 #
農林債券は円建ての公社債を主要投資対象とし、安定した収益の確保をめざして安定運用を行なう公社債投資信託などが組み入れています。公社債投資信託は株式を一切組み入れず、債券のみで構成されているため、比較的リスクが低く、安定した収益を得ることが期待されます。
農林債券まとめ #
農林債券は、農林中央金庫が発行する債券で、農林水産業関連の資金調達を目的としています。農林中央金庫はJAやJFなどの協同組織が基盤の金融機関で、安全性が高いと評価されていますが、外国債券の含み損を背景に一部の格付け機関がアウトルックを「ネガティブ」に変更した経緯があります。農林債券は安定した収益を求める公社債投資信託の主要な投資対象の一つです。