ETFのマーケットメイク制度 #
ETFのマーケットメイク制度とは、ETF(上場投資信託)市場の流動性を向上させるための制度です。一定の気配提示義務を満たしたマーケットメイカー(証券会社等)に対して、東京証券取引所がインセンティブ(報酬)を付与することで、ETFの取引を活発化させようとするものです。気配提示義務とは、売りと買いの注文を提示するということです。これにより、市場において売買が成立しやすくなります。
この制度により、指定されたマーケットメイカーが常に市場で売買注文を提示することで、ETFの取引がスムーズに行われるように支援します。マーケットメイク制度は2018年7月に東京証券取引所に導入されました。
マーケットメイカーは、市場に流動性を提供する役割を果たすため、流動性供給者(LP=Liquidity Provider)とも呼ばれます。
東証ETFのマーケットメイク制度についての概要 #
1. マーケットメイカーの役割 #
マーケットメイカーは、①売買代金比例のインセンティブ、②アクセス料の一部免除、仮想サーバ費用の一部免除といったインセンティブを受ける代わりに、次の気配提示義務を負います。
- 気配提示銘柄数 ・・・定められた銘柄数以上の銘柄において気配提示義務を充足する必要がある
- 気配提示時間 ・・・立会内(計測対象時間)のうち80%以上の時間帯に気配提示を行う必要がある。
- スプレッド・気配提示数量・・・銘柄タイプ別に異なる最大スプレッド/最低気配提示数量を定める
これにより、投資家にとっては、ETFを売りたいときには買い手が、買いたいときには売り手が存在するという状況が常に維持され、流動性が確保されます。マーケットメイカーがいることで、流動性が不足している場合でも、取引が円滑に行われるようになります。
2. マーケットメイクの目的 #
流動性の向上
流動性が低いと、投資家が希望の価格で取引できなかったり、スプレッド(買値と売値の差)が広がったりしてしまいます。マーケットメイカーが常に売買注文を出すことで、このスプレッドを縮小し、投資家がより良い条件で取引できるようにすることが目的です。
取引の安定性
マーケットメイカーは、価格変動が急激に大きくなるのを防ぎ、取引の安定性を維持します。特に、取引量が少ないETFでも安定した取引環境を提供します。
3. インセンティブ #
マーケットメイカーにとっても、ETFの流動性を提供することで次の報酬やインセンティブがあります。
- 売買代金比例のインセンティブ:流動性(日次売買代金)に応じて単価が異なる
- アクセス料の一部免除:マーケットメイクを行う銘柄について、アクセス料を一部免除
- 仮想サーバ費用の一部免除:一定以上の数の銘柄で気配提示義務を満たした場合、仮想サーバ費用を一部免除
インセンティブ(報酬)は東京証券取引所が負担します。また、東京証券取引所がマーケットメイカーに支払うインセンティブに加えて、運用会社が自社の銘柄に対して、独自の義務とインセンティブを設定できる制度(スポンサード・マーケットメイク制度)があり、この場合は、運用会社がインセンティブを負担します。
4. 対象ETF #
マーケットメイク制度の対象は全てのETFです。レバレッジ型・インバース型・アクティブ運用型も対象です。2024年9月現在、実際にマーケットメイカーが付いているETFは、340銘柄中308銘柄です。マーケットメイカーの数が最も多い銘柄は次の4ファンドで、8社が付いています。一方で、マーケットメイカーが「0」の銘柄が32銘柄あります。
【マーケットメイカー8社存在するETF】
銘柄コード | ETF名 | マーケットメイカーの数 |
---|---|---|
1306 | NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信 | 8 |
1321 | NEXT FUNDS 日経225連動型上場投信 | 8 |
1343 | NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信 | 8 |
1346 | MAXIS 日経225上場投信 | 8 |
2024年10月1日現在、マーケットメイカーの数の内訳は次の通りです。
5. メリット #
- 投資家の利便性向上:マーケットメイク制度があることで、投資家は取引の機会が増え、価格の透明性が高まります。
- 取引コストの低減:スプレッドが縮小されることで、売買の際に発生するコストが抑えられます。
- 安定した取引環境の提供:市場の安定性が向上し、価格の大きな変動や流動性不足による取引の停滞が防がれます。
誰がマーケットメイカーになるのか #
証券会社と高速取引業者です。2024年10月現在、次の11社がマーケットメイカーとして指定されています。
- 野村證券株式会社
- 三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社
- Flow Traders Hong Kong Ltd
- Optiver Australia Pty Limited
- Vivienne Court Trading
- Grasshopper Asset Management Pte. Ltd.
- Virtu Financial Singapore Pte Ltd
- IMC Pacific Pty Ltd
- Susquehanna Pacific Pty Ltd
- Jane Street Asia Trading Limited
- Nine Mile Financial Pty Ltd
マーケットメイク制度まとめ #
東証ETFのマーケットメイク制度は、ETFの取引を円滑に進めるために重要な役割を果たしており、特に流動性が低いETFにとって有効なサポートとなります。東証では、こうしたマーケットメイク制度を通じて、より多くの投資家に安定した取引環境を提供することを目指しています。
なお、東京証券取引所では、マーケットメイク制度の有効性を高めるために定期的な見直しやインセンティブの調整が行われています。最新の情報は東京証券取引所のHPで確認して下さい。