シンセティックETF #
一般的な指数連動型ETFは、対象となる指数を構成する銘柄をすべてほぼ同じ組入比率で保有する「レプリケーション手法」(ダイレクト・レプリケーション)を採用するか、業種配分や配当利回りなどの指数の特性に適合するようなサンプルポートフォリオを構築することで、指数との連動を図ります。一方、シンセティックETFは、スワップ契約を用いて指数に連動する投資成果を追求します。これを「シンセティック・レプリケーション手法」といいます。
シンセティック・レプリケーション #
シンセティック・レプリケーションでは、ファンドは指数の構成銘柄を直接保有せず、銀行とスワップ契約を結びます。ファンドは投資家からの払い込み資金を銀行に提供し、銀行はその代わりに、対象指数のリターンをファンドに対して保証します。
この仕組みにより、トラッキングエラーが最小限に抑えられ、同時にファンドの運用コストも低く抑えることができます。欧州のETFではこのシンセティック・レプリケーションが広く採用されています。また、香港証券取引所に上場しているETFの場合、法律によりシンセティックETFの場合は「シンセティック」であることを明記することが定められています。ファンド情報の「Replication Method(レプリケーション手法)」の欄に「Synthetic」と記載されています。
シンセティックETFの特徴: #
現物資産を保有しない #
シンセティックETFは、対象とする指数や資産を直接保有せず、スワップ契約などのデリバティブ取引を通じて、そのパフォーマンスを再現します。これは、通常の現物ETFが実際に株式や債券などを保有するのとは異なります。
デリバティブを活用したパフォーマンス再現 #
シンセティックETFは、金融機関(通常は銀行)とのスワップ契約に基づき、指数や資産のリターンを保証されます。このため、対象資産を物理的に購入しなくても、スワップ契約を通じて同じパフォーマンスを享受することができます。
カウンターパーティリスク #
スワップ契約を用いるため、契約相手方の信用リスク(カウンターパーティリスク)が存在します。相手方がスワップ契約を履行できなくなるリスクがあるため、担保(コラテラル)を差し入れるなどしてリスクを軽減します。
コストの効率性 #
現物を保有しないため、取引コストや管理コストを抑えやすく、通常の現物ETFに比べて低コストで運用されることが多いです。特に、新興国市場や流動性の低い資産に対する投資でその効果が顕著です。
トラッキングエラーの抑制 #
デリバティブを用いることで、現物の取得や管理に伴う誤差を避け、指数のリターンにより正確に連動するよう設計されています。そのため、トラッキングエラーが少ない傾向があります。
市場への幅広いアクセス #
シンセティックETFは、特定の市場や資産に直接アクセスしにくい場合にも、スワップ契約を通じてそれらの市場に対する間接的な投資が可能です。これにより、新興市場や特殊な資産クラスにも簡単に投資できます。
シンセティックETFのリスク #
一般のETFでは、取引所価格と実際の資産価値から算出される1口当たり純資産額(NAV)との乖離やトラッキングエラーが主なリスク要因ですが、シンセティックETFの場合、デフォルトなどによりスワップ契約が履行されないリスク、すなわちカウンターパーティリスクが主なリスクとなります。
このカウンターパーティリスクを軽減するために、シンセティックETFでは、スワップ契約の相手方の銀行が、カストディアンに対しファンドの資産額に相当する有価証券を担保として差し入れます。カストディアンとファンドの間で質権設定契約が結ばれ、スワップ契約が履行されなかった場合には、その有価証券を処分して、ファンドの損失を補填する仕組みが整えられています。
シンセティックETFまとめ #
シンセティックETFは、スワップ契約を用いて指数に連動する投資成果を追求します。効率的に広範な市場や資産クラスにアクセスするための手段として便利ですが、カウンターパーティリスクなどの独自のリスクがある点を理解し、活用することが重要です。