投資した金額(元本)の9割程度が保証されるなど、リスク(損失)が限定される仕組みのファンドをリスク限定型ファンドと呼びます。株価が大きく値下がりしても元本の損失が限定されるというメリットがある一方で、株価が上昇した場合の利益も、通常の株式投資信託よりは小さくなるという特徴があります。
リスク限定の方法 #
限定する元本の損失の割合はファンドにより異なります。また、リスクを限定する方法(仕組み)もファンドにより異なります。リスクを限定する形としては、次の3つの方法が代表的なものです。
<銀行保証を利用する> #
特定の銀行と保証契約を結び、ファンドの償還時にファンドの基準価額が保証額を下回っていた場合に、銀行がその差額分をファンドに補填することでファンドの基準価額の損失を限定します。
<短期金融商品と先物等の利用> #
運用資金の大部分(8割など)は短期金融商品や高格付けの債券などで安定した運用をおこない、残りの部分に日経平均株価の指数先物取引や指数オプション取引などを組入れて運用します。先物等の利用により株価の上昇時にある程度の収益があがるようにする一方で、安定運用の部分で保証した元本の確保を行います。
<仕組債を利用する> #
あらかじめ償還価額の上限と下限が限定されている株価指数連動の仕組債で運用し、ある程度平均株価に連動する成果をめざし、ファンドとしての償還額をたとえば80%や90%程度確保します。このような仕組みのファンドも条件付日経平均株価連動ファンドという形でリスク限定型ファンドとして売られています。
リスク限定型ファンドのリスク #
リスク限定型ファンドは、投資家の損失を一定範囲内に抑えることを目的としたファンドです。しかし、リスクを制限しているからといって完全にリスクがないわけではありません。以下にリスク限定型ファンド特有のリスクを挙げます。
1. 上昇リターンの限定:
– リスクを制限する代わりに、ファンドの上昇幅も制限されることが一般的です。例えば、株式市場が大きく上昇しても、リスク限定型ファンドではその上昇を全て享受できない可能性があります。
– 収益機会を逃すリスクがあるため、短期的な高リターンを目指す投資には適さない場合があります。
2. 制約付き損失:
– リスクが限定されているとはいえ、元本割れや一定範囲の損失が発生する可能性はあります。市場の急激な変動や予想外の事態により、ファンドの損失が当初設定したリスクの範囲を超えるリスクも完全には排除できません。
3. コストの増加:
– リスクを限定するためにデリバティブ取引やヘッジを利用する場合、ファンドの運用コストが増加し、そのコストがリターンを圧迫する可能性があります。
4. 複雑な仕組みに伴うリスク:
– リスク限定型ファンドは、リスクを限定するために複雑な金融商品や戦略(例:オプション、スワップ)を用いることが多く、これによりリスクの正確な理解が難しくなることがあります。
– 一部の仕組みが予想外の市場変動に対して脆弱性を持つ場合、投資家が意図しないリスクが生じる可能性もあります。
5. 流動性リスク:
– リスクを限定するために用いる金融商品が流動性に乏しい場合、急な換金が難しくなる可能性があります。特に市場の混乱時には、ファンドの資産を売却してキャッシュにする際の流動性リスクが顕在化することがあります。
リスク限定型ファンドのまとめ #
リスク限定型ファンドは、損失を限定するメリットがある一方で、上昇リターンの制約やコストの増加、流動性リスクなど、独自のリスクが存在します。リスクを低減しつつ収益を確保したい投資家にとっては選択肢の一つかもしれませんが、ファンドの仕組みや潜在的なリスクを十分理解したうえで投資することが重要です。