自己投資口の取得 #
自己投資口取得は、不動産投資法人が、自己の投資口を取得することです。上場企業の自社株買いに相当します。
2013年6月の投信法の改正により、不動産投資法人による自己投資口の取得が可能となりました。ただし、不動産投資法人の場合は、投資信託及び投資法人に関する法律第80条第2項の規定により取得した投資口を相当の時期に処分または償却をしなければならないとされています。この点が、上場企業が自社株を購入し金庫株として長期間保有できるのと大きく異なる点です。
2024年に自己投資口の取得を発表した不動産投資法人 #
発表日 | 投資法人名 | 取得口数、または上限 | 処分方法 |
---|---|---|---|
1月 | アクティビア・プロパティーズ投資法人(3279) | 15,340 口 | 消却 |
2月 | ジャパンエクセレント投資法人(8987) | 15,984口 | 消却 |
3月 | KDX不動産投資法人(8972) | 63,588 口 | 消却 |
4月 | ラサールロジポート投資法人(3466) | 80,900口 | 消却 |
4月 | 大和ハウスリート投資法人(8984) | 11,784 口 | 消却 |
4月 | 日本都市ファンド投資法人(8953) | 10,582 口 | 消却 |
7月 | 野村不動産マスターファンド投資法人(3462) | 47,756 口 | 消却 |
7月 | 大和証券オフィス投資法人(8979) | 10,077口 | 消却 |
9月 | 日本リート投資法人(3296) | 9,000口(上限) | 消却 |
9月 | 日本ロジスティクスファンド投資法人 (8967) | 22,800 口(上限) | 消却 |
10月 | 大和ハウスリート投資法人(8984) | 14,000 口(上限) | 消却 |
10月 | 野村不動産マスターファンド投資法人(3462) | 25,000 口 (上限) | 消却 |
10月 | 大和証券オフィス投資法人(8979) | 14,000 口(上限) | 消却 |
自己投資口取得の影響 #
不動産投資法人が自己投資口を取得し、償却した場合、発行済み投資口数は減少します。そのため1株当たり利益が増え、それに伴い1口当たり分配金も増加するため、投資家からは歓迎されるケースが多いといえます。新規物件取得の需要などがないときの、投資法人資金の有効活用策のひとつとも考えられます。
自己投資口取得の目的 #
1. 投資口の価値向上: #
自己投資口を取得することで市場に流通する投資口の数が減り、需給バランスが変わります。これにより、1口当たり利益の増加し、1口当たり分配金も増加します。また、投資口価格の上昇が期待されます。
2. 安定的な価格維持: #
市場で投資口の価格が下落している際、REIT自らが投資口を取得することで、価格の下落を抑制しようとすることがあります。
3. 資本効率の向上 #
資金を有効に活用し、余剰資金を投資口の買い戻しに充てることで、投資家に利益を還元することを狙います。
自己投資口取得の理由 #
これまでに自己投資口の取得を実施した投資法人の公式発表などから、自己投資口取得の理由としては次が挙げられています。
- 現金を必要とする新規優良物件の取得機会の減少
- 潤沢なフリーキャッシュ
- 投資口価格が割安な水準に放置されている
- 投資口1口当たり分配金の向上による投資主還元
不動産投資法人の自己投資口取得のまとめ #
不動産投資法人による自己投資口取得は、個人投資家にとっては一般的にプラスの効果をもたらすため好意的に受け取られます。ただし、個人投資家は、自己投資口取得が短期的な価格上昇を目指した施策である場合もあることを理解する必要があります。長期的に安定した分配金や価格の成長が見込めるかどうか、REITの財務状況や市場環境を十分に確認しながら投資判断を行うことが大切です。