純資産総額 #
ファンドを購入する際に確認すべき重要なポイントの一つが、純資産総額、つまりファンドの規模です。純資産総額が大きい方が良いか、小さい方が良いかについては意見が分かれますが、一般的には純資産総額が小さいファンドよりも、大きいファンドを選ぶのが望ましいと言われています。
純資産総額が大きい方が良い理由 #
最大の理由は、小さなファンドでは十分な分散投資が難しいためです。また、純資産総額が30億円未満の小さなファンドは、途中で繰り上げ償還されるリスクも伴います。
一般的に、純資産総額が大きいファンドには次のようなメリットがあります。
1. 十分な分散投資が可能 #
投資信託の基本は分散投資です。市場、業種、銘柄などを分散することで、リスクを抑えつつリターンを獲得します。規模が小さいファンドでは十分な分散投資ができませんが、規模が大きいファンドでは十分な分散投資が可能です。
2. 規模のメリットにより経費率が低く抑えられる #
純資産総額が大きなファンドでは、投資にかかるさまざまな費用が多くの資産に分散されるため、1口あたりの経費負担が軽減され、コスト効率が高まります。しかし、投資家が負担する信託報酬率は決まっているので、規模の拡大によるコスト効率の改善が投資家に必ずしも直接的な恩恵を与えるわけではありません。投資家が間接的に負担する売買委託手数料については、大口取引による規模のメリットが働き、売買委託手数料のコストが相対的に低くなる可能性はあります。
一部の運用会社では、ファンドの規模の拡大によるコスト削減を背景に信託報酬率を引き下げるところもあります。これは、運用会社が意図的に信託報酬率を見直したり、ファンド規模に応じた信託報酬率を設定していた場合に限られます。
3. 積極的な情報公開が行われている #
運用会社は全てのファンドの情報公開を行なっていますが、会社にとって「旗艦ファンド」とされることが多い規模の大きなファンドは、他のファンドより情報提供が充実している傾向があります。
4. 充実した運用体制が整っている #
規模の大きなファンドは運用会社にとっても重要なファンドであるため、運用体制が小規模ファンドよりも充実しやすい傾向があります。運用に関わる人材やサポート体制、運用にかけられる費用も充実し、安定した運用体制が整っていることが多いといえます。
純資産規模の減少にも注意 #
ファンドの規模を確認する際、もう一つ重要なことが純資産規模が減少傾向にないかどうかです。たとえ純資産総額が200億円や300億円と十分な規模であっても、純資産が減少し続けているファンドには注意が必要です。純資産総額の減少には、投資している市場全体の下落によるものや、運用が上手くいっていないことによるもの、解約増加によるものがあります。特に解約増加が原因の場合、その理由を確認することが重要です。
純資産総額が大きいファンドのデメリット #
純資産総額が大きいファンドにはメリットが多い一方で、巨大なファンドには以下のようなデメリットも存在します。
1. 運用の柔軟性の低下 #
資産規模が大きいファンドでは、運用の柔軟性が低下することがあります。資産規模が大きくなりすぎると、一度に大量の資金を投入するのが難しくなるため、ファンドが個別銘柄や特定の投資対象に柔軟に投資できなくなることがあります。
特に小型株や流動性の低い市場では、大規模なファンドが大量の株式を売買することで市場に影響を与え、売買価格が不利になることがあります。そのため取引コストが増加し、ファンドのパフォーマンスが悪化する可能性があります。
例えば、ある銘柄に100億円の投資をしようとしても、その銘柄の市場取引量が少ない場合、一度に大規模な取引が難しく、売買のたびに価格が変動し、コストが増える可能性があります。
ただし、これは流動性の高い市場を対象とするインデックスファンドには該当しません。流動性の高い市場では取引量が多いため、売買注文が市場に与える影響が小さく、巨大なインデックスファンドでもスムーズに売買ができ、売買コストやスプレッドも抑えられます。たとえば、アメリカのS&P500や日本の東証プライム市場では流動性が非常に高いため、巨大なファンドでも運用上の問題が発生しにくいといえます。
2. 投資対象の制限 #
資産規模が大きいファンドは、一定規模以上の市場や銘柄にしか投資できない場合があります。流動性の低い小型株やニッチな市場では、投資可能な銘柄が限られるためです。例えば、小型株市場では、ファンドがその規模に見合った金額を投資するための適切な銘柄が少なく、投資対象が制限される可能性があります。
ファンドの純資産総額についてのまとめ #
純資産総額が大きいファンドには、分散投資の効果や情報提供の充実などのメリットがあります。ファンドを選ぶ際には、純資産総額が適切な規模であることに加え、その規模が減少傾向にないかも確認することが重要です。