エンジニアリング・レポート #
エンジニアリング・レポート(Engineering Report)とは、不動産投資法人(=不動産投資信託)の運用会社が投資を検討している不動産物件の状況を把握し、投資判断を行うために専門業者に依頼する建物の状況調査報告書のことです。国土交通省の「不動産鑑定評価基準」においても「建築物、設備等及び環境に関する専門的知識を有する者が行った証券化対象不動産の状況に関する調査報告書」と定義されています。
不動産投資信託の資産運用会社は、ファンドが投資する不動産の選定・取得の判断を行う際にエンジニアリング・レポートを取得し、売主からの表明や保証と合わせて不動産に問題がないかを確認します。このレポートは、不動産の取得後に発生する可能性のあるリスクを完全に排除するものではなく、リスク管理のための一手段として投資判断に活用されます。
エンジニアリング・レポートと鑑定評価の違い #
不動産評価においては、不動産鑑定士が行う鑑定評価もありますが、不動産鑑定士は鑑定評価に際して必要なエンジニアリング・レポートの提出を求め、その内容を分析・判断した上で鑑定評価に活用します。
エンジニアリング・レポートで調査する物的状況には、以下の内容が含まれます:
エンジニアリング・レポートに含まれる調査内容
– 対象不動産の建物状況
– 公法上及び私法上の規制、制約等(法令遵守状況調査)
– 修繕計画
– 再調達価格
– 有害物質(アスベスト等)に係る建物環境
– 土壌汚染
– 地震リスク
– 耐震性
– 地下埋設物
金融庁の指針に基づく留意点 #
金融庁の指針は、エンジニアリング・レポートの作成や活用における透明性と正確性を確保し、リスクの把握・管理を徹底するための留意点として設けられています。不動産関連ファンド運用業者がエンジニアリング・レポートや鑑定評価書を受領する際には、以下の点に留意することが求められます。
- 作成業者の選定基準:エンジニアリング・レポート作成業者および不動産鑑定業者について、客観的基準に基づき選定し、第三者性が確保されているか。
- 情報提供と管理:レポートや鑑定評価を依頼する際に必要な情報を提供し、提供状況を適切に管理しているか。
- 受領時の確認事項**:エンジニアリング・レポートを受領する際に以下の点を確認。
- 土壌汚染や有害物質の調査が必要な根拠に基づき行われ、その結果が客観的に担保されているか。
- 各部位の修繕・更新費用の見積もりが算定根拠に基づいているか。
- 法令遵守の検証に際して、法律や地区計画等の条例も含めて必要な確認が行われているか。
- 鑑定評価書の内容確認:鑑定評価書がエンジニアリング・レポートの内容を反映しているか、反映していない場合はその理由が明確にされているか。
- デューデリジェンスの活用:デューデリジェンス結果に基づき取得・売却価格を算定する際に、エンジニアリング・レポートや鑑定評価書の内容が活用されているか。
エンジニアリング・レポートのまとめ #
エンジニアリング・レポートとは、不動産投資法人が投資検討時に対象物件の物的状況を把握するために、専門業者に依頼して取得する調査報告書です。調査内容には建物の状況、修繕計画、法的遵守状況、土壌汚染、地震リスクなどが含まれます。このレポートは投資判断に活用されますが、取得後の欠陥を完全に保証するものではありません。また、金融庁の指針に基づき、第三者性の確保や情報の適切な提供・検証が求められます。