投資口の分割 #
不動産投資法人の投資口とは、株式会社の株式に相当するもので、投資主の地位を表す単位です。投資口の分割とは、1口を2口や5口など複数の割合で分割することを指し、これにより1口あたりの価格(投資単価)が引き下がり、投資家が購入しやすくなります。また、不動産投資法人にとっては発行済み投資口数が増え、投資家層が拡大し、流動性の向上が期待されます。
2014年のNISA導入を背景に、個人投資家が投資口を購入しやすくするため、2013年には複数の不動産投資法人が投資口の分割を実施しました。分割は基準日に投資主名簿に記載された投資主に適用され、権利付き最終日までに投資口を保有する必要があります。分割後、投資口の価格は理論的に分割比率に応じて低下しますが、投資家の資産価値に変動はなく、流動性の向上が見込まれます。
投資口分割のメリット #
1. 投資口の購入がしやすくなる
投資口の分割により、1口あたりの価格が引き下げられるため、投資家にとっての購入コストが下がり、少額からの投資が可能になります。これにより、個人投資家も不動産投資法人に参加しやすくなります。
2. 投資口の流動性向上
分割によって発行済み投資口数が増えることで、取引量が増加し、流動性が向上します。流動性が高まると、投資家は売買をしやすくなり、投資口価格が安定しやすくなります。
3. 投資家層の拡大
投資口の分割は、比較的小口の投資を希望する投資家にとっても魅力的となり、新たな投資家層の参入が期待できます。特に、NISAのような少額投資非課税制度との相性が良く、個人投資家を取り込みやすくなります。
4. 市場での注目度向上
分割を行うと、投資口が比較的安価になり、多くの投資家の目に留まりやすくなります。これにより、投資口の取引が活発になり、価格の安定性や上昇が期待される場合もあります。
5. 柔軟な資金管理が可能
分割によって投資口が小口化されることで、投資家は必要に応じて保有投資口の一部を売却するなど、資金管理の柔軟性が高まります。
これらのメリットにより、投資口分割は不動産投資法人にとっても投資家にとっても魅力的な手法とされています。
投資口分割の具体例 #
2014年1月に少額投資非課税制度(NISA)がスタートしましたが、投資単価の引き下げによりNISAにおいて不動産投資法人の投資口が購入しやすくなることを期待して、2013年12月には不動産投資法人による投資口の分割の発表が相次ぎました。
2013年12月に実施された投資口の分割
投資法人名 | 分割の割合 | 基準日 | 効力発生日 |
---|---|---|---|
フロンティア不動産投資法人 | 1口につき2口 | 2013/12/31(実質的には2013/12/30) | 2014/1/1 |
日本ロジスティクスファンド投資法人 | 1口につき5口 | 2014/1/31 | 2014/2/1 |
森ヒルズリート投資法人 | 1口につき5口 | 2014/1/31 | 2014/2/1 |
東急リアル・エステート投資法人 | 1口につき5口 | 2014/1/31 | 2014/2/1 |
日本プロロジスリート投資法人 | 1口につき5口 | 2014/2/28 | 2014/3/1 |
投資口分割は、投資法人が定めた基準日と呼ばれる日において、投資主名簿に記載された投資主の保有する投資口を対象に実施されます。基準日に投資主名簿に記載されているためには、その3営業日前の権利確定日=権利付き最終日までに、投資口を購入してある必要があります。これは、購入の決済が完了するのが購入後3営業日後であるためです。
例えば、大和ハウスリート投資法人(当時は大和ハウス・レジデンシャル投資法人)(8984)は、2013年2月28日(木)を基準日として1口につき2口の割合で投資口分割を実施しましたが、この場合は、2月25日が権利付き最終日でした。投資口の価格は2月25日の終値が757,000円で、翌日の権利落ち最初の取引日の始値は366,000円と、分割を反映して約半分の価格になりました。その後も、投資口の分割は続いています。
投資口の分割まとめ #
投資口の分割とは、不動産投資法人が投資口1口を複数の割合で分割することで、1口あたりの価格を引き下げ、投資家が購入しやすくする仕組みです。これにより、個人投資家層の拡大や流動性の向上が期待でき、取引が活発化するメリットがあります。