⇨繰上償還の理由は運用残高の減少
投資信託協会によると、2018年11月に17本の追加型の株式投資信託が償還を迎えました。
償還した17本のうち設定時に定められた運用期間を満了して償還を迎えた投資信託はわずか1本で、16本はあらかじめ定められていた運用期間を繰り上げて償還する「繰上償還」が実施されました。このうち1本は東京証券取引所に上場していた「上場インデックスファンドCNX Nifty先物(インド株式)」でした。
投資していた投資信託が繰上償還されてしまうと、代わりの投資信託を選ぶなど、資産運用計画を検討し直さなければなりません。これを回避するためには、購入前に投資しようとしている投資信託の①純資産総額(資産残高)にある程度の規模があるか、②そのファンドから資金の流出が続いていないかを運用会社のHPや投資信託協会のファンド情報ページなどを利用して確認することが大切です。
投資信託協会によると、株式投資信託の1ファンドあたり平均運用資産残高(純資産総額)は約160億円です(2018年2月末現在)ので、これより大きいファンドで、残高や受益権口数が増加傾向にあるファンドを選択するのが繰上償還を回避する防衛策と言えます。運用資産残高や受益権口数が減少を続けているファンドについては注意が必要です。
繰上償還の理由
2018年11月に償還した16本の投資信託について、金融庁に届け出された臨時報告書で、繰上償還の理由を見ると、14本が運用残高の減少と増加の見込みがないことを理由としており、1本のファンドにおいては、投資対象の仕組債が連動の対象としている外国投資信託が残高減少を理由に運用を終了するためというものでした。
また、上場インデックスファンドCNX Nifty先物(インド株式)については、対象指標であるNifty50指数先物が上場廃止される見通しとなったことを理由としています。
1口当たり償還額
2018年11月に償還した投資信託の1口当り償還額(A)について見ると、上場インデックスファンドCNX Nifty先物(インド株式)を除いた16本について、設定時の基準価額である10,000円を上回る金額で償還したのは9本だけでした。
1口当り償還額が最も高かったのはステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社の「ステート・ストリートUSハイ・イールド債券オープン」で、1口当り償還額は13,639.38円でした。同ファンドは、米ドル建て外国投資信託への投資を通じて、実質的に米ドル建てのハイ・イールド債券へ分散投資することにより、中長期的にベンチマークであるブルームバーグ・バークレイズ・ハイ・イールド・ベリー・リキッド・インデックス(円ベース)に連動する投資成果の獲得を目指して運用を行うインデックスファンドでした。同ファンドは、2011年に設定されましたが、残高の減少を理由に2018年11月に繰上償還されました。
一方で、1口当り償還額が最も低かったのはNNインベストメント・パートナーズ株式会社の「NN欧州リート・ファンド(毎月決算コース/通貨カバード・コール戦略)」で、1口当り償還額は4,806.74円でした。
また、1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額で見ると、この合計額(A+B)が10,000円を下回ったファンドは4本した。
1口当り償還額と期中分配金の合計額が最も高かったのは、ドイチェ・アセット・マネジメントの「ドイチェ・ジャパンファンド」で、合計額は19,177.33円(1口当り償還額11,977.33円+分配金7,200円)でした。ドイチェ・ジャパンファンドは1998年10月に信託期間が無期限のファンドとして設定され、20年にわたり運用されてきましたが、残高の減少を理由に繰上償還されました。
1口当り償還額と期中分配金の合計額が最も低かったのは「NN欧州リート・ファンド(資産形成コース/通貨カバード・コール戦略)」で、合計額は8,570.82円(1口当り償還額8,570.82円+分配金0円)でした。
運用期間
2018年11月に償還した投資信託の運用期間を見ると、運用期間が最も長かったのは、1998年10月20日に設定された「ドイチェ・ジャパンファンド」でした。
一方、運用期間が最も短かったのは三井住友アセットマネジメント株式会社が2018年2月15日に設定した「グローバル・インフラ関連社債ファンド2018‐02(為替ヘッジあり)」でした。同ファンドは、解約増加による残高の減少を理由に11月に繰上償還されました。
【2018年11月に償還した追加型株式投資信託】
運用会社 | ファンド名 | 償還日 | 純資産総額(単位:百万円) | 1口当り償還額(単位:円)A | 期中分配金(単位:円)B | 合計(A+B) | 満期・繰上
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日興 | 上場インデックスファンドCNX Nifty先物(インド株式) | 14日 | 638 | 144,446.37 | 0.00 | 144,446.37 | 繰上 |
大和 | ダイワ日本株式インデックス・ファンド-シフト12 Ver2- | 5日 | 0 | 12,330.20 | 10.00 | 12,340.20 | 繰上 |
岡三 | 日本株式アクティブオープン | 28日 | 759 | 10,082.45 | 5,999.00 | 16,081.45 | 満期 |
T&D | T&Dハイブリッド証券ファンド限定追加型1405 | 29日 | 833 | 9,691.45 | 380.00 | 10,071.45 | 繰上 |
シュローダー | シュローダー・エマージング・ソブリン債券(現地通貨建て)ファンド(毎月決算型) | 15日 | 270 | 4,965.88 | 5,240.00 | 10,205.88 | 繰上 |
シュローダー | シュローダー・エマージング・ソブリン債券(現地通貨建て)ファンド(1年決算型) | 15日 | 32 | 10,939.17 | 0.00 | 10,939.17 | 繰上 |
フィデリティ | フィデリティ・米国投資適格債・ファンド(毎月決算型) | 13日 | 221 | 7,933.49 | 5,332.00 | 13,265.49 | 繰上 |
フィデリティ | フィデリティ・米国投資適格債・ファンド(資産成長型) | 13日 | 226 | 10,891.05 | 2,975.00 | 13,866.05 | 繰上 |
ドイチェ | ドイチェ・ジャパンファンド | 26日 | 196 | 11,977.33 | 7,200.00 | 19,177.33 | 繰上 |
ステート | ステート・ストリート米国社債インデックス・オープン | 8日 | 0 | 12,261.65 | 0.00 | 12,261.65 | 繰上 |
ステート | ステート・ストリートUSハイ・イールド債券オープン | 30日 | 210 | 13,639.38 | 4,570.00 | 18,209.38 | 繰上 |
NN | NN欧州リート・ファンド(毎月決算コース/通貨カバード・コール戦略) | 29日 | 313 | 4,806.74 | 3,830.00 | 8,636.74 | 繰上 |
NN | NN欧州リート・ファンド(資産形成コース/通貨カバード・コール戦略) | 29日 | 24 | 8,570.82 | 0.00 | 8,570.82 | 繰上 |
三井住友 | グローバル・インフラ関連社債ファンド2018‐02(為替ヘッジあり) | 27日 | 306 | 9,572.54 | 0.00 | 9,572.54 | 繰上 |
あおぞら | あおぞら・USトリプルプラス・ファンド(年4回決算型) | 29日 | 311 | 9,297.03 | 300.00 | 9,597.03 | 繰上 |
あおぞら | あおぞら・新グローバル分散ファンド(限定追加型)2015-05 | 29日 | 354 | 11,375.21 | 0.00 | 11,375.21 | 繰上 |
あおぞら | あおぞら・新グローバル分散ファンド(限定追加型)2016-05 | 29日 | 59 | 11,309.54 | 0.00 | 11,309.54 | 繰上 |
(データ出所:投資信託協会、EDINET)