6月は 25本の投資信託が償還、このうち7本が繰上償還
投資信託協会によると、2019年6月に25本の追加型の株式投資信託が償還を迎えました。このうち7本の投資信託は、設定時に定められていた信託期間を満了せずに繰上償還されました。
繰上償還の理由
繰上償還の理由については、2本については、運用会社が当初自己設定を行い、販売会社と投資家の獲得に努めたものの、未だに運用資金は自己設定時の運用会社の自己資金のみであり、今後の販売見通しもたたないというものでした。残りの5本は運用残高が少なく、効率的な運用を継続することが困難になったためというものです。結局のところ、7本とも、残高不足が繰上償還の理由です。
繰上償還は、投資信託のリスクの一つです。毎月多くの投資信託が運用期間を満了する事なく繰上償還されています。繰上償還時に評価損失があった場合、損失が確定されることになります。利益が出ていても、利益を確定して税金を支払い、加えて、当初想定していた投資計画も見直す必要が生じます。投資信託を購入する前に、残高が十分大きいことと、残高が減少傾向にないことを確認することが大切です。
1口当たり償還額
2019年6月に償還した投資信託の1口当り償還額(A)について見ると、設定時の基準価額である10,000円を上回る金額で償還したのは25本中10本だけでした。
1口当り償還額が最も高かったのはスパークス・アセット・マネジメント株式会社の「スパークス・日本株・ロング・ショート・プラス」で、1口当り償還額は17,027.35円でした。「スパークス・日本株・ロング・ショート・プラス」は、ロング・ポジションとショート・ポジションを同時に保有することにより、市場の上昇、下落に左右されにくい安定的なリターンを目指すファンドとして2009年6月に設定され、2019年6月に満期償還を迎えました。スパークス・アセット・マネジメントは、「マクロはミクロの集積である」という投資哲学を掲げ、ボトムアップ・リサーチを行う独立系運用会社です。
一方で、1口当り償還額が最も低かったのは楽天投信投資顧問の「楽天日本株トリプル・ベア3」で、1口当り償還額は1,932.11円でした。同ファンドは、日々の基準価額の値動きが日経平均株価の値動きに対して概ね3倍程度反対の動きになることを目指すベア型の投資信託です。
1口当たり償還額と分配金の合計
また、1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額で見ると、この合計額(A+B)が10,000円を上回ったファンドは23本中15本だけでした。
1口当り償還額と期中分配金の合計額が最も高かったのは、フィデリティ投信の「フィデリティ・世界小型株投信」で、合計額は18,071.04円(1口当り償還額10,071.04円+分配金8,000.00円)でした。
1口当たり償還額と期中分配金の合計額が最も低かったのは、楽天投信投資顧問の「楽天日本株トリプル・ベア3」で、1口当り償還額は1,932.11円(1口当たり償還額1,932.11円+分配金0円)でした。
償還した投資信託の運用期間
2019年4月に償還した投資信託の運用期間を見ると、運用期間が最も長かったのは、2004年10月に設定されたゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントの「GSグローバル・マーケット・ストラテジー(年1回)と(年2回)でした。両ファンドは、計量モデルを用いて株式、債券、通貨を対象とした複数のロング・ショート戦略に分散されたポートフォリオを構築することにより、特定の戦略からの影響を抑制しながら、投資元本の増加を目指すファンドとして、2004年に運用が開始されました。両ファンドとも長期にわたり効率的な運用を提供するに十分な資産規模の維持に困難という理由に6月に繰上償還されました。1口当たり償還額と期中分配金の合計額は、年1回分配型が5,251.35円、年2回分配型が6,352.18円でした。
一方、運用期間が最も短かったのは、パインブリッジ・インベストメンツの「パインブリッジ米国優先REITオ―プン<為替ヘッジなし>」と「パインブリッジ米国優先REITオ―プン<為替ヘッジあり>」でした。同ファンドは、2017年7月に自己設定を行い、販売会社および受益者の獲得に努めてきたものの、2019年に入ってからも自己設定時の委託者の自己資金のみであり、今後の販売見通しもたたないという理由で6月に繰上償還されました。
2019年6月に償還した追加型株式投資信託
運用会社 | ファンド名 | 償還日 | 純資産総額(単位:百万円) | 1口当り償還額(単位:円)A | 期中分配金(単位:円)B | 合計(A+B) | 満期・繰上
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野村 | 野村ハイパーブル・ベア6(日本ハイパーブル6) | 11日 | 1,612 | 10,302.97 | 0.00 | 10,302.97 | 満期 |
野村 | 野村ハイパーブル・ベア6(日本ハイパーベア6) | 11日 | 312 | 6,463.09 | 0.00 | 6,463.09 | 満期 |
野村 | 野村ハイパーブル・ベア6(マネー ポートフォリオ6) | 11日 | 828 | 9,979.13 | 0.00 | 9,979.13 | 満期 |
野村 | 野村ピクテ・ヘルスケア マネープール・ファンド | 18日 | 4 | 10,011.80 | 40.00 | 10,051.80 | 満期 |
野村 | 野村・グリーン・テクノロジー・ファンド | 18日 | 1,373 | 12,021.82 | 2,450.00 | 14,471.82 | 満期 |
野村 | 野村・グリーン・テクノロジー マネープール・ファンド | 18日 | 1 | 10,011.19 | 40.00 | 10,051.19 | 満期 |
野村 | グローバル・アドバンテージ債券投信A | 25日 | 749 | 9,636.14 | 2,740.00 | 12,376.14 | 満期 |
野村 | グローバル・アドバンテージ債券投信B | 25日 | 82 | 10,574.07 | 3,050.00 | 13,624.07 | 満期 |
大和 | ダイワ・エマージング&ジャパン・ファンド | 20日 | 613 | 11,527.99 | 4,800.00 | 16,327.99 | 満期 |
明治安田 | 通貨分散外国債券ファンド | 27日 | 372 | 6,317.53 | 7,093.00 | 13,410.53 | 繰上 |
フィデリティ | フィデリティ・世界小型株投信 | 20日 | 214 | 10,071.04 | 8,000.00 | 18,071.04 | 満期 |
ドイチェ | DWS 通貨選択型エマソブ ランド | 20日 | 25 | 3,445.77 | 9,100.00 | 12,545.77 | 満期 |
ドイチェ | DWS 通貨選択型エマソブ トルコリラ | 20日 | 89 | 2,100.13 | 8,900.00 | 11,000.13 | 満期 |
ゴールドマン | GSグローバル・マーケット・ストラテジー(年1) | 11日 | 531 | 5,244.35 | 7.00 | 5,251.35 | 繰上 |
ゴールドマン | GSグローバル・マーケット・ストラテジー(年2) | 11日 | 359 | 4,323.68 | 2,028.50 | 6,352.18 | 繰上 |
パインブリッジ | パインブリッジ米国優先REITオ―プン<為替ヘッジあり> | 20日 | 1 | 9,913.91 | 0.00 | 9,913.91 | 繰上 |
パインブリッジ | パインブリッジ米国優先REITオ―プン<為替ヘッジなし> | 20日 | 0 | 10,398.40 | 0.00 | 10,398.40 | 繰上 |
AM One | 米国株式リスクコントロール戦略ファンド<為替ヘッジあり> | 19日 | 35 | 10,110.53 | 0.00 | 10,110.53 | 繰上 |
AM One | 米国株式リスクコントロール戦略ファンド<為替ヘッジなし> | 19日 | 99 | 9,778.89 | 0.00 | 9,778.89 | 繰上 |
三井住友DS | 環境ビジネス日本株オープン | 25日 | 518 | 8,811.76 | 5,500.00 | 14,311.76 | 満期 |
スパークス | スパークス・日本株・ロング・ショート・プラス | 25日 | 53 | 17,027.35 | 0.00 | 17,027.35 | 満期 |
アストマックス | WTI原油先物ファンド(ロング・ポジション) | 25日 | 2,440 | 3,156.08 | 0.00 | 3,156.08 | 満期 |
アストマックス | WTI原油先物ファンド(ショート・ポジション) | 25日 | 42 | 8,117.75 | 0.00 | 8,117.75 | 満期 |
アストマックス | WTI原油先物ファンド(マネー・ポジション) | 25日 | 137 | 9,960.08 | 0.00 | 9,960.08 | 満期 |
楽天 | 楽天日本株トリプル・ベア3 | 14日 | 1,937 | 1,932.11 | 0.00 | 1,932.11 | 満期 |
(データ出所:投資信託協会、EDINET)