ETFの分割(ETF Split)とは、上場投資信託(ETF)の1口を複数の口数に分けることで、1口あたりの価格を引き下げることです。これにより、より少額での投資が可能となります。例えば「2:1」の分割では、1口のETFが2口に分割され、1口あたりの価格は概ね半分になります。
分割によって投資家が保有する口数は増えますが、評価額(時価総額)自体は変わらず、投資価値に直接的な影響はありません。
この仕組みにより、ETFの価格が高額になった場合でも、少額からの投資が可能となり、個人投資家にとって取引しやすくなることが期待されます。株式の分割(Stock Split)と同様に、ETFの分割は主に取引の利便性向上と流動性の改善を目的として実施されます。
ETF分割の仕組み #
ETFの分割については、以下のように整理できます。
1. 分割比率の設定 #
分割比率とは、ETFの1口が何口に分割されるかを示すものです。
例:
– 2:1 の分割 → 1口を2口に分割
– 10:1 の分割 → 1口を10口に分割
これにより、1口あたりの価格は分割比率に応じて減少します。
2. 保有口数の増加 #
分割により、投資家の保有するETF口数が分割比率に応じて増加します。
例:
– 分割前に100口保有していた場合、2:1の分割後には200口になります。
– ただし、評価額(価格 × 口数)は変わりません。
3. 価格の調整 #
ETFの分割後には、1口あたりの価格も分割比率に応じて調整されます。
例:
– 分割前の価格が10,000円で、2:1の分割を実施した場合 → 分割後の価格はおおよそ5,000円になります。
ETF分割の目的 #
1. 取引の利便性向上
ETFの価格が高騰すると、個人投資家にとって一口単位での購入が困難になることがあります。分割によって価格を引き下げ、より少額での投資を可能にすることで、投資の間口が広がります。
2. 流動性の向上
価格が下がることで、取引単位あたりの呼値(最小売買単位)も細かくなり、スプレッド(買値と売値の差)が縮小することで、流動性が改善されることがあります。
3. 心理的効果
価格が低くなることで、「手が届きやすい」「割安に感じる」といった投資家の心理に働きかけ、需給が変化することがあります。
ETF分割の事例 #
TOPIXブル2倍上場投信(1568)
- 2015年6月23日、日本初のETF分割を実施。1口を2口に分割。
- 運用会社であるシンプレクス・アセット・マネジメントは、基準価額が3万円以上となり、呼値が50円単位に拡大したことなどを理由に「流動性向上と投資家の利便性確保」を目的としたと発表。
日経平均ブル2倍上場投信(1579)
- 2021年3月5日、10口を20口に分割。
- 運用会社のシンプレス・アセット・マネジメントは、基準価額の上昇に伴い、 1口当たりの市場価格が3万円以上となり呼値が50円単位となったこと、および、受益権の分割により投資単位当たりの金額を引き下げ、受益権の流動性を高めることで、投資家の利便性を向上させることを目的に分割を実施と発表。
TOPIXブル2倍上場投信(1568)
日経平均ブル2倍上場投信(1579)
- 上記2ファンドとも、2024年7月2日、1口を100口に分割。
- 上記2件の分割について、運用会社のシンプレクス・アセット・マネジメントは、ETFにおいて基準価額の上昇に伴い、受益権の分割により投資単位当たりの金額を引き下げ、受益権の流動性を高めることで、投資家の利便性を向上させることを目的に分割を行なったと発表。
iシェアーズ・コアTOPIX ETF(1475)
- 2024年8月13日、1口を10口に分割。
- 運用会社のブラックロック・ジャパンは、基準価額の上昇に伴い東京証券取引所での1口当たりの市場価格が上昇し、呼び値単位が変更になることを踏まえ、投資家の利便性を向上させることおよび、既存の受益者が取引単位変更に伴う受益権の1単位未満(いわゆる端株)について、市場での売買可能性を確保するために、受益権の分割および売買単位の変更を行うと発表。
グローバルX 半導体関連-日本株式ETF(2644)
- 2024年10月11日、1口を2口に分割。
- 運用会社のGlobal X Japanは、最低取引価格を引き下げることによる投資家の利便性を勘案し、変更するものと発表。
iシェアーズ・コア 日経225 ETF(銘柄コード︓1329)
iシェアーズ JPX日経400ETF(銘柄コード:1364)
- 両ファンドとも2025年4月7日、1 口を10口に分割
- 運用会社のブラックロック・ジャパンは、最低売買金額を引下げることにより投資家の利便性を向上させるため、受益権の分割を行うと発表。
ETF分割における留意点 #
ETFの分割は、投資しやすい環境を整えるための制度的な調整であり、投資対象のファンダメンタルズやリスク・リターンに直接的な影響を与えるものではありません。 ただし、価格や流動性の変化により、需給や投資家の行動に間接的な影響を及ぼす可能性がある点には留意が必要です。
ETFの分割:まとめ #
ETFの分割とは、ETFの1口を複数の口数に分けて1口あたりの価格を引き下げることで、より取引しやすく、投資の敷居を下げるための施策です。分割により、保有口数は増加し価格は下がりますが、評価額に変化はなく、投資価値に直接的な変動はありません。とはいえ、取引の利便性や心理的ハードルが下がることで、流動性の向上や投資家層の拡大に繋がる可能性があります。