ETFといえば、通常は市場全体に広く分散投資するファンドというイメージが強いですが、実際には米国ではニッチな分野に特化したETFが次々と登場しています。
ETF市場は、S&P500やラッセル2000のような広範な市場を対象としたインデックスETFから始まり、その後、特定のセクターに投資する業種型やテーマ型ETFへと進化し、近年ではますます対象が絞られたニッチなETFが登場しています。
そうした流れの中で、2015年10月13日に米国NASDAQに上場したのが、「Loncar Cancer Immunotherapy ETF(CNCR)」でした。これは、がん治療の中でも特に免疫療法に特化したETFであり、「ロンカー」は運用会社であるLoncar Investmentsの名称に由来します。
それまでにも、医薬品業界やバイオテクノロジー企業に投資するETFは存在していましたが、がん免疫療法という極めて限定されたテーマに絞ったETFは初めてのものでした。
その後、同ETFの名称は「Range Cancer Therapeutics ETF」(レンジ・キャンサー・セラピューティクスETF)に変更され、免疫療法に限定せず、さまざまながん治療法に幅広く投資する方針に改められました。
このETFの運用会社であるExchange Traded Concepts, LLCは、「バイオテクノロジー分野の企業価値が大きく下落している現在でも、がんは依然として解決が難しい公衆衛生上の課題であり、今後も投資および技術革新の中心であり続ける」と考えています。
Range Cancer Therapeutics ETFについて #
Range Cancer Therapeutics ETF(レンジ・キャンサー・セラピューティクスETF)は、手数料および経費控除前のパフォーマンスで、レンジ・オンコロジー・セラピューティクス指数(Range Oncology Therapeutics Index)に連動する投資成果を目指しています。この指数は、がん(腫瘍)治療薬および治療法の開発や流通に関わる企業の株式で構成されるポートフォリオのパフォーマンスを反映することを目的としています。
Range Cancer Therapeutics ETFの概要
- 名称:Range Cancer Therapeutics ETF
- 上場市場:NASDAQ
- ティッカーコード:CNCR
- 連動対象指数:Range Oncology Therapeutics Index
- 設定日:10/13/2015
- 経費率:0.79%(2025年3月末現在)
- 運用会社:Exchange Traded Concepts
- 構成銘柄数:66(2025年4月16日現在)
- 最新チャート:https://www.nasdaq.com/market-activity/etf/cncr
Range Oncology Therapeutics Indexについて #
ベンチマークである「Range Oncology Therapeutics Index」 は、がん治療に力を入れている企業の株価の動きを示すために作られた指数です。具体的には、次のいずれかに当てはまる企業を、同じ構成比率で組み入れています。
- 売上の半分以上が、がん治療に関する製品から得られている企業
- 現在開発中の薬のうち、半分以上ががん治療薬である企業
投資リスクと留意点 #
ETFの魅力のひとつは「広く分散された投資」ですが、Range Cancer Therapeutics ETFはがん治療という限定的なテーマに投資しているため、分散効果は限定的であり、以下のような特徴があります:
- 構成銘柄数が66と比較的少なく、日経225やTOPIX連動型ETFと比べて分散が効きにくい
- 医薬品開発の成功・失敗や、規制当局の判断による影響を受けやすく、価格変動が大きくなる可能性がある
- 一方で、革新的ながん治療法が注目された場合には、急激な値上がりが期待されるケースもある
このように、リスクとリターンの振れ幅が大きい、ハイリスク・ハイリターン型のテーマETFと言えます。
Range Cancer Therapeutics ETF(CNCR)のまとめ #
Range Cancer Therapeutics ETF(CNCR)は、がん治療に特化した米国上場のテーマ型ETFです。売上や開発薬の半数以上ががん関連である企業に、均等な比率で投資しています。医薬品開発の成果次第で大きな値動きが見込まれる一方、リスクも高いファンドです。