4月は33本の追加型株式投資信託が償還、このうち25本が繰上償還
投資信託協会によると、2020年4月に33本の追加型の株式投資信託が償還を迎えました。このうち7割以上の25本ものファンドが、設定時に定められていた信託期間を満了せずに信託期間を繰上げて償還されました。
繰上償還の理由
繰上償還の理由については、25本中21本は、運用残高が減少し、本来の商品性を維持して、目論見書の運用の基本方針に則った運用を継続することが困難になったためというものです。
1本は、投資していた外国投資信託が残高減少により繰上償還されることが決定したため、投資対象が存在しなくなってしまうためでした。
この他、2本のファンドについては、全残存口数に対して受益者からの解約請求があったために繰上償還されました。
また、1本(アムンディ・ダブルウォッチ)については、日々の基準価額の最高値の90%を「フロア水準」とし、基準価額の下落をこの「フロア水準」までに抑えた運用を目指していましたが、実際に、基準価額がファンドの定めるフロア水準に達したため繰上償還するという、あらかじめ定められていた条件を満たしての繰上償還でした。
このように、4月の繰上償還も、ほとんどは直接的あるいは間接的に残高(受益口数)の減少により運用方針に則った運用ができないことが理由であったと言えます。
繰上償還の影響
投資信託の繰上償還は、投資家にとっては投資リスクの一つです。毎月多くの投資信託が繰上償還されてしまうことからもわかるように、自分の保有する投資信託が繰上償還されてしまう可能性は、残念ながら低いとは言えない状況にあります。
保有している投資信託に繰上償還時に評価損失が生じていた場合、たとえ投資家が将来的にファンドの基準価額が回復すると期待していたとしても、償還時点で投資家の損失は確定されてしまいます。一方、償還時に利益が出ていた場合は、利益を確定して税金を支払うことになります。
さらに、投資家にとって大きな問題は、資産運用計画を見直さざるをえなくなるということです。せっかく時間をかけて選択したファンドが想定していた運用期間途中で償還(運用終了)してしまうので、資産運用計画を再考せざるを得なくなります。
この繰上償還リスクを回避するためには、投資信託を購入する前に、①残高が十分大きいことと②残高が減少傾向にないことを確認することが大切です。なお、投資信託協会のデータによると、ETFを除いた追加型株式投資信託の1本当たりの平均残高は約100億円です。また、純資産総額(残高)が500億円を超える投資信託は238本(2020年3月末現在)存在しています。少なくとも平均残高以上で、増加傾向にある投資信託を選択すべきでしょう。
1口当たり償還額
2020年4月に償還した投資信託の1口当り償還額(A)を見ると、設定時の基準価額である10,000円を上回る金額で償還したのは33本中14本だけでした。
1口当り償還額が最も高かったのは、三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社の「生物多様性企業応援ファンド」で、1口当り償還額は16,201.39円でした。同ファンドは2010年8月に設定され、2020年4月に満期償還を迎えました。
一方で、1口当り償還額が最も低かったのは、大和アセットマネジメント株式会社の「インドネシア株ファンド」で、1口当り償還額は5,660.39円でした。同ファンドは、2010年5月に設定され、この4月に満期償還しました。
1口当たり償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額
1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額で見ると、33本中9本は、この合計額(A+B)が10,000円を下回りました。
1口当り償還額と期中分配金の合計額が最も高かったのも「生物多様性企業応援ファンド」で、合計額は18,551.39円(1口当り償還額16,201.39円+分配金2,350円)でした。
一方、1口当たり償還額と期中分配金の合計額が最も低かったのは、岡三アセットマネジメント株式会社の「アジア中小型株オープン」で、合計額は6,972.59円(1口当たり償還額6,572.59円+分配金400円)でした。同ファンドは、2013年2月に設定され、ファンドの純資産総額が減少傾向にあり、今後も残高の大幅な増加も見込みにくい等という理由で4月に繰上償還されました。
運用期間
2020年4月に償還した投資信託の運用期間を見ると、運用期間が最も長かったのは、1998年7月設定されたインベスコ・アセット・マネジメントの「インベスコ 欧州エクイテイファンド」でした。同ファンドは、欧州の株式に分散投資するファンドでしたが、純資産の減少により、受益権口数が信託約款に定める繰上償還の基準となる口数(10億口)を下回る状況が続いているという理由で繰上償還されました。
一方、運用期間が最も短かったのは、2017年3月28日に三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社が設定した「米国ハイイールド・リスクレーダー戦略ファンド」でした。同ファンドは最終受益者より全残存口数に係る解約意向表明を受けたため繰上償還されました。
2020年4月に償還した追加型株式投資信託
運用会社 | ファンド名 | 償還日 | 償還時純資産総額(百万円) | 償還時1口当たり償還額(A) | 期中分配金(円)(B) | 合計(A)+(B) | 満期・繰上 |
野村 | グローバル・コーポレート・ハイブリッド証券ファンド(為替ヘッジあり)2016-06 | 15日 | 1,056 | 9,887.18 | 420.00 | 10,307.18 | 満期 |
大和 | 富山応援ファンド(地域企業株・外債バランス/毎月分配型) | 10日 | 1,101 | 8,343.36 | 5,265.00 | 13,608.36 | 満期 |
大和 | ダイワ・ワールドボンド・ファンド(ダイワSMA専用) | 16日 | 1 | 9,075.54 | 5,800.00 | 14,875.54 | 繰上 |
大和 | インドネシア株ファンド | 27日 | 82 | 5,660.39 | 4,600.00 | 10,260.39 | 満期 |
岡三 | 欧州連続増配成長株オープン | 7日 | 137 | 10,701.35 | 0.00 | 10,701.35 | 繰上 |
岡三 | 世界9資産分散ファンド(投資比率変動型) | 20日 | 481 | 9,096.59 | 1,440.00 | 10,536.59 | 繰上 |
岡三 | 円資産アクティブ・アロケーション(株式・債券) | 20日 | 24 | 10,493.59 | 0.00 | 10,493.59 | 繰上 |
岡三 | アジア中小型株オープン | 21日 | 310 | 6,572.59 | 400.00 | 6,972.59 | 繰上 |
インベスコ | インベスコ 欧州エクイテイファンド | 21日 | 166 | 7,950.98 | 1,000.00 | 8,950.98 | 繰上 |
シュローダー | シュローダー・グローバル好利回りCBファンド2016-04(限定追加型)為替ヘッジあり | 24日 | 2,278 | 10,658.36 | 0.00 | 10,658.36 | 満期 |
シュローダー | シュローダー・グローバル好利回りCBファンド2016-04(限定追加型)為替ヘッジなし | 24日 | 349 | 11,195.44 | 0.00 | 11,195.44 | 満期 |
ニッセイ | ニッセイ/BEA ユニオン インベストメント・アジアボンド・セレクション(3ヵ月決算型) | 13日 | 921 | 9,630.14 | 900.00 | 10,530.14 | 繰上 |
フィデリティ | MUFG・フィデリティ・退職金活用ファンド(安定型) | 2日 | 256 | 11,960.87 | 0.00 | 11,960.87 | 繰上 |
フィデリティ | MUFG・フィデリティ・退職金活用ファンド(安定成長型) | 2日 | 747 | 12,227.44 | 0.00 | 12,227.44 | 繰上 |
フィデリティ | MUFG・フィデリティ・退職金活用ファンド(成長型) | 2日 | 1,059 | 12,397.29 | 0.00 | 12,397.29 | 繰上 |
フィデリティ | フィデリティ・マネービルダー・アロケーション70・ファンド | 9日 | 607 | 13,227.40 | 0.00 | 13,227.40 | 繰上 |
フィデリティ | フィデリティ・マネービルダー・アロケーション50・ファンド | 9日 | 468 | 13,752.23 | 0.00 | 13,752.23 | 繰上 |
フィデリティ | フィデリティ・マネービルダー・アロケーション30・ファンド | 9日 | 120 | 14,052.23 | 0.00 | 14,052.23 | 繰上 |
フィデリティ | フィデリティ・退職設計・ファンド(1年決算型) | 20日 | 295 | 11,791.41 | 0.00 | 11,791.41 | 繰上 |
フィデリティ | フィデリティ・退職設計・ファンド(隔月決算型) | 20日 | 261 | 10,545.99 | 1,150.00 | 11,695.99 | 繰上 |
パインブリッジ | パインブリッジ日本企業外貨建て社債ファンド 2015-08 | 24日 | 3,053 | 9,650.96 | 250.00 | 9,900.96 | 満期 |
三菱UFJ | グローバル鉄道関連株オープン | 22日 | 420 | 6,687.03 | 5,900.00 | 12,587.03 | 満期 |
レッグ・メイソン | LM・アメリカ高配当株ファンド(為替ヘッジあり)(毎月分配型) | 10日 | 28 | 8,655.59 | 170.00 | 8,825.59 | 繰上 |
レッグ・メイソン | LM・アメリカ高配当株ファンド(為替ヘッジあり)(年2回決算型) | 10日 | 27 | 8,839.35 | 0.00 | 8,839.35 | 繰上 |
アムンディ | アムンディ・ダブルウォッチ | 30日 | 33,663 | 9,546.45 | 0.00 | 9,546.45 | 繰上 |
三井住友トラスト | 米国ハイイールド・リスクレーダー戦略ファンド | 10日 | 84 | 12,039.47 | 0.00 | 12,039.47 | 繰上 |
三井住友トラスト | 生物多様性企業応援ファンド | 20日 | 51 | 16,201.39 | 2,350.00 | 18,551.39 | 満期 |
三井住友トラスト | 世界ハイインカム債券オープン(毎月決算型) | 21日 | 518 | 6,756.19 | 3,219.00 | 9,975.19 | 繰上 |
三井住友DS | 高格付海外債券ファンド(毎月分配型) | 20日 | 117 | 6,688.13 | 4,335.00 | 11,023.13 | 繰上 |
三井住友DS | 三井住友・グローバルCB戦略ファンド(為替ヘッジあり) | 28日 | 382 | 9,132.39 | 90.00 | 9,222.39 | 繰上 |
三井住友DS | 三井住友・グローバルCB戦略ファンド(為替ヘッジなし) | 28日 | 260 | 8,479.57 | 0.00 | 8,479.57 | 繰上 |
キャピタルAM | CAM優先出資証券ファンド(為替ヘッジあり) | 10日 | 31 | 7,574.17 | 2,500.00 | 10,074.17 | 繰上 |
キャピタルAM | CAM優先出資証券ファンド 通貨選択型(米ドルコース) | 10日 | 72 | 7,800.12 | 4,100.00 | 11,900.12 | 繰上 |
(データ等出所:投資信託協会、EDINET、各ファンドの有価証券届出書・臨時報告書)