2020年10月に償還した投資信託ー7本は繰上償還


10月は25本の追加型株式投資信託が償還、このうち7本が繰上償還

投資信託協会によると、2020年10月に25本の追加型の株式投資信託が償還を迎えました。このうち7本は、ファンドが設定された時点で定められていた信託期間を満了せずに信託期間を繰上げて償還されたものです。

満期償還と繰上償還の内訳

繰上償還の理由

繰上償還の理由はファンドにより異なりますが、最も多い理由は残高の減少により運用方針に則った運用が継続できなくなったというものです。10月に繰上償還されたファンドの理由は次の通りです。

  • クローバー・アセットマネジメント株式会社の「かいたくファンド」は、ファンドの併合により繰上償還されました。併合は「かいたくファンド」を消滅ファンド、「コドモファンド」を存続ファンドとして2020年10月26日付で実施され、「かいたくファンド」の保有者には、保有口数に応じて「コドモファンド」の受益権が割り当てられました。なお、クローバー・アセットマネジメントでは、9月にも、「らくちんファンド」と「コドモファンド」の併合を実施しています。これにより、3本のファンドが1本に併合されたことになります。

 

  • 9月に繰上償還したファンドのうち1本(KIM マルチストラテジー リンクファンド(SMA専用))は、受益者から全受益権口数の解約の請求を受けたための償還でした。全ての受益権が解約されると運用残高はゼロになり、ファンドは存続することができなくなります。

 

  • 2本は運用残高が減少したことで、目論見書に定めた運用の基本方針に則った運用を継続することが困難になったためという理由で繰上償還されました。

 

  • 1本(GSエマージング・資産分散ファンド)はファンド・オブ・ファンズですが、投資先ファンドが残高の減少を理由に繰上償還されることになり代替のファンドが見つからなかったという理由で繰上償還されました。

 

 

繰上償還の影響

投資信託の繰上償還は、投資家にとっては投資リスクの一つです。

繰上償還時に、保有している投資信託に評価損失が生じていた場合、償還時点で投資家の損失は確定されることになります。一方、償還時に利益が出ていた場合は、利益を確定して税金を支払うことになります。

さらに、繰上償還が投資家にとって大きな問題となるのは、資産計画を見直さざるをえなくなるということです。時間をかけて選択した投資信託が、想定していた運用期間途中で償還(運用終了)されてしまうため、老後や子供の教育資金を目的とした計画をやり直す必要が生じてしまいます。

この繰上償還リスクを回避するためには、投資信託を購入する前に、次の点を確認することが大切です。

  • 運用残高(純資産総額)が十分大きいことと
  • 残高が減少傾向にないこと

 

なお、投資信託協会のデータによると、ETFを除いた追加型株式投資信託の1本当たりの平均残高は約100億円です。一方で、純資産総額(残高)が500億円を超える投資信託は260本(2020年6月末現在)存在しています。少なくとも平均残高以上で、残高が増加傾向にある投資信託を選択すべきでしょう。

 

1口当たり償還額

2020年10月に償還した投資信託25本の1口当り償還額(A)を見ると、設定時の基準価額である10,000円を上回る金額で償還したのは12本だけでした。

1口当り償還額が最も高かったのは、クローバー・アセットマネジメント株式会社の「かいたくファンド」で、1口当り償還額は23,487円でした。

一方で、1口当り償還額が最も低かったのは、日興アセットマネジメント株式会社の「日興ハイブリッド3分法ファンド毎月分配型(新興国通貨戦略コース)」で、1口当り償還額は1,572.94円でした。

 

1口当たり償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額

1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額で見ると、25本中7本は、この合計額(A+B)が10,000円を下回りました。

1口当り償還額と期中分配金の合計額が最も高かったのは、クローバー・アセットマネジメントの「かいたくファンド」で、合計額は23,487円(1口当り償還額23,487円+分配金0円)でした。

一方、1口当たり償還額と期中分配金の合計額が最も低かったのは、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社の「GSエマージング・資産分散ファンド」で、合計額は8,342.86円(1口当たり償還額4,742.86円+分配金3,600円)でした。

 

運用期間

2020年10月に償還した投資信託の運用期間を見ると、運用期間が最も長かったのは、2005年10月に設定された「北陸・北海道インデックスファンド」でした。同ファンドは、2020年10月に満期償還を迎えました。15年間の運用による償還額と運用期間中に支払われた分配金の合計金額は14,554.96円でした。

なお、10月に満期償還を迎えた多くの投資信託が信託期間を5年、または10年に設定していましたが、老後資金の確保のように長い期間をかけた資産形成を目的としている場合は、より長期での運用が可能な信託期間が「無期限」とされているものを選択する方が良いでしょう。実際に、確定拠出年金の対象になっている投資信託は全て信託期間が無期限となっています。

 

【2020年10月に償還した追加型株式投資信託】

運用会社 ファンド名 償還日 償還時純資産総額(百万円) 償還時1口当たり償還額(A) 期中分配金(円)(B) 合計(A)+(B) 満期・繰上
野村 北陸・北海道インデックスファンド 6日 294 13,329.96 1,225.00 14,554.96 満期
日興 原点回帰・日本株ファンド 13日 390 14,664.53 8,410.00 23,074.53 満期
日興 日興ハイブリッド3分法ファンド毎月分配型(新興国通貨戦略コース) 19日 2,186 1,572.94 7,430.00 9,002.94 満期
日興 日興ハイブリッド3分法ファンド毎月分配型(円ヘッジコース) 19日 333 3,126.33 8,470.00 11,596.33 満期
日興 日興ハイブリッド3分法ファンド毎月分配型(ヘッジなしコース) 19日 37 6,234.47 3,550.00 9,784.47 満期
日興 日興ハイブリッド3分法ファンド毎月分配型(通貨プレミアムコース) 19日 50 3,018.44 6,230.00 9,248.44 満期
大和 ダイワ欧州リート・ファンド(毎月分配型) 21日 1,025 10,033.72 325.00 10,358.72 満期
岡三 東南アジア成長株オープン 14日 133 7,558.27 2,100.00 9,658.27 満期
岡三 成長国通貨・国際機関債オープン 22日 88 3,888.11 5,960.00 9,848.11 満期
ニッセイ ニッセイ日経225アクティブファンド(3ヵ月決算型) 13日 68 11,453.40 1,600.00 13,053.40 満期
ニッセイ ニッセイ日経225アクティブファンド(資産成長型) 13日 82 13,098.13 0.00 13,098.13 満期
ゴールドマン GSエマージング・資産分散ファンド 15日 1,700 4,742.86 3,600.00 8,342.86 繰上
パインブリッジ パインブリッジ日本企業外貨建て社債ファンド 2015-12 7日 1,774 9,933.43 230.00 10,163.43 満期
パインブリッジ パインブリッジ日本企業外貨建て社債ファンド 2016-02 7日 508 9,827.25 185.00 10,012.25 満期
SOMPO 損保ジャパン高金利外国債券オープン(毎月分配型) 26日 14 6,476.14 4,245.00 10,721.14 繰上
東京海上 東京海上・物価連動国債ファンド 26日 397 10,502.07 0.00 10,502.07 満期
東京海上 日本物価連動国債ファンド(ラップ向け) 26日 14 11,044.25 0.00 11,044.25 満期
アムンディ アムンディ・米国債ファンド(毎月決算型) 26日 807 8,964.26 1,060.00 10,024.26 満期
アムンディ アムンディ・米国債ファンド(年2回決算型) 26日 1,278 10,032.41 10.00 10,042.41 満期
三井住友トラスト KIM マルチストラテジー リンクファンド(SMA専用) 26日 320 9,980.65 0.00 9,980.65 繰上
三井住友トラスト SMTAMインド債券オープン(毎月決算型) 29日 1 10,627.53 0.00 10,627.53 繰上
三井住友トラスト SMTAMインド債券オープン(年2回決算型) 29日 1 10,631.70 0.00 10,631.70 繰上
三井住友DS 日興・中国構造改革ファンド 22日 286 19,852.60 0.00 19,852.60 繰上
BNYメロン パシフィック好配当株式ファンド(毎月分配型) 19日 558 5,478.70 7,815.00 13,293.70 満期
クローバー かいたくファンド 23日 764 23,487.00 0.00 23,487.00 併合

(データ等出所:投資信託協会、EDINET、各ファンドの有価証券届出書・臨時報告書)