世界有数の資産運用会社であるインベスコ・リミテッドは、2021年4月7日、「ESG投資 スチュワードシップ・レポート 2020」を発行した。このレポートは、エンゲージメント の事例、議決権行使へのアプローチ、社会的平等と気候変動への取り組みについて、詳細に説明している。インベ スコでは、2023年までに全ての運用戦略においてESG 分析を投資の意思決定プロセスに取り入れるESGインテグレ ーションを達成することにコミットしている。現在は、運用戦略の約75%でESGインテグレーションを実現しており、2023年までに100%の達成を目指す。
インベスコのESG投資の運用資産残高は、2019年末の210億米ドルから、2020年末時点で345億米ドルに増加した。また世界各国で、40以上のESG関連の投資商品を提供している。
インベスコのグローバル・ヘッド・オブ・ESGを務めるキャサリン・デコニック・ロペス氏は次のように述べている。
私たちは不確 実性の時代に直面していますが、コーポレート・ガバナンスを重視し、スチュワード・シップ活動に注力するインベスコの姿 勢に変わりはありません。私たちはお客さまが直面する課題を解決し、長期的なリスク管理を行いながらもお客さまにとっ ての新たな収益機会創出を実現すべく努力しています。私たちの全ての活動にESGは取り入れられており、お客さまと 共に目標を達成するうえでESGは不可欠なものです。
このレポートでは、以下の3つにフォーカスしてインベスコのESG理念を説明している。
- ESG課題(マテリアリティ): ESG課題をリスク調整後及び経済的な意味において考慮することを指します。特 定の地域における法律に基づく制限に該当する場合を除けば、インベスコはESGを制約とはみなさない。
- ESGモメンタム: ESGパフォーマンスが時間と共に改善するという考えは、特に興味深いと考える。ESGの実践 面が改善している企業は、長期的に良好な財務パフォーマンスを上げることができるとインベスコでは考えている。
- エンゲージメント: インベスコは、責任ある投資家としての責任を真摯に受け止め、エンゲージメントは企業に対 して継続的な改善を促す機会と考えている。投資先企業との対話は、ファンダメンタルズ分析において、投資 プロセスの中核をなす部分です。世界有数の運用資産額を有する投資家として、企業経営や企業戦略、経営 の透明性、資本配分、さらにはより広範なESGファクターについて、経営陣と対話する機会を活用している。
また以下の取り組みについても、このレポートに報告されている。
- 議決権行使: インベスコの「グローバル・コーポレート・ガバナンスおよび議決権行使に関する方針」(グローバル・ プロキシ―・ポリシー)は、投資家としての議決権行使に関する広義の理念と原則を定めている。インベスコは、 アクティブ投資家としての責任を真摯に受け止め、議決権行使はインベスコの運用プロセスに不可欠であると考えている。2020年は、世界74市場において、1万399件の株主総会で24万7,465件の決議について議決権を行使した。投資家の声をより強く企業に届けるため、インベスコのパッシブ戦略においても、アクティブ戦略の運 用者の意思決定に沿った議決権行使を行う。その結果、インベスコはアクティブ投資家として投資先企業に対してより大きな影響力を持つことになる。
- エンゲージメント: 顧客の資産を運用し、守りそして成長させる役割を担うインベスコにとって、企業の経営陣 とのエンゲージメント、および議決権行使は非常に重要である。将来の企業価値に影響を及ぼす可能性のあるESGの課題について、企業に質問や異議を申し立てることがある。運用チームは、ESGに関連するものを含む様々な課題について、投資を検討している企業や投資先企業の経営陣とエンゲージメントを行う。2020年 に行った、企業とのミーティング件数は、前年度比100%増となる、2,000回以上に及んだ。 グローバルESGチームのエンゲージメント・ミーティングにおける、上位5テーマの以下の通り。➢ 気候変動 : 44.25%
➢ 役員報酬 : 22.21%
➢ ESGに関する情報開示 : 14.16%
➢ ダイバーシティ : 12.39%
➢ 人権問題 : 8.85% - 各種イニシアチブへの参加: インベスコは、複数の外部団体のメンバーやサポーターとしての活動を行っており、業 界におけるアドボカシー(発信者)の役割を果たしている。2020年、インベスコは、Climate Action 100+に 参加し、Climate Bond Initiative(気候債券イニシアチブ)のパートナー、Transition Pathway Initiative (TPI)のサポーター、One Planet Asset Managers(OPAM)のメンバーになった。また、Confluence Philosophy Belonging Pledge to Advance Racial Equityに署名している。
- 気候変動: インベスコとインベスコの顧客にとって、注力すべき重要な分野である。インベスコは気候関連財務情報 開示タスクフォース(TCFD)の正式サポーターとなり、気候変動を考慮した資本配分を行う企業に投資を行うことで、課題解決に貢献している。2020年、インベスコは、企業運営に関わる気候変動から生じる財務的及び 物理的リスクについての開示を要求する株主提案のうち、55%以上に対して賛成する議決権行使を行った。 また、インベスコは気候変動に関する企業による監督やコントロール・メカニズム、メタン排出を含む温室効果ガスの 削減についての透明性を高めることも求めている。
- 社会的平等: インベスコが熱意をもって取り組んでいる、もう一つの重要な分野である。一企業として、インベスコ は、Invesco Women’s Network、LGBT Network、Black Professional’s Networkといったグローバル での取り組みを行っている。インベスコは、グローバルにおける幹部層の女性の割合を、2022年までに、現在の33%から35%以上にする目標を掲げている。インベスコは、企業におけるダイバーシティの必要性を理解し、全 社的に目標達成に向けて尽力している。
- ESGintel: インベスコのグローバルESGチームが、社内のテクノロジーやイノベーション・チームと共同で構築した独自のESGツールです。ESGに関するインサイト、指標、データポイント、変化の方向性を提供するもの。ESGintelは投資先企業におけるESGに関するリスクと機会について、インベスコ独自の見解を提供している。
インベスコの「ESG投資 スチュワードシップ・レポート 2020」→https://www.invesco.com/us- rest/contentdetail?contentId=03ccdd83ce388710VgnVCM1000006e36b50aRCRD&audienceType=I nstitutional