アメリカン・エキスプレスは、最新の「2020-2021年ESG報告書」を発表した。最新の報告書では「ダイバーシティー、エクイティー、インクルージョン:DE&Iの促進」「健全な財務基盤の構築」「気候変動対策の推進」という3本の柱を重点とした同社のESG戦略の新たなロードマップを提示し、2035年までに温暖化ガス排出量のネットゼロの達成を含むESG戦略を推進する長期的な目標とイニシアチブの概要を明らかにしている。
最新の報告書には初の開示事項として、基本給データの中央値のほか、社員の採用、昇進、定着率と人種などの社員のダイバーシティーデータの相関関係、ならびに世界全体の社員の賃金と性別の相関関係にまつわるデータが含まれている。
ダイバーシティー(多様性)、エクイティー(公平性)、インクルージョン(包括性):DE&Iの促進
アメリカン・エキスプレスは、多様で公平かつ包括的な社員、市場、社会の支援を掲げている。同社はこの目標をさらに推進するため、10億ドル(日本円で約1,115億円)のDE&I行動計画を2020年10月に発表し、社員、顧客、コミュニティのDE&Iを推進する取り組みの概要を示した。同社は2021年半ばまでに、この目標に向け4億5,000万ドル以上(日本円で約500億円以上)を支出し、多様なサプライヤー(取引先)への支出、助成金や寄付、人種や国籍などのマイノリティーが所有する事業への支援、社員の公平な給与への投資およびNPOなど非営利組織への寄付などを世界で実施している。
また、最新のESG報告書では、同社のESG目標に対する進捗状況を公表している。
社員の構成に関する透明性向上
全社を通して多様な人材が活躍する環境を整えるという同社のコミットメントをさらに確固としたものとするため、社員の募集、採用、昇進、定着における各サイクルでの多様性の実態を公表している。以下は、2020年のアメリカン・エキスプレスの社員構成に関連して開示した主な情報。
- 採用:世界の新規採用者のうち48%が女性で、米国の新規採用者全体のうち50%が人種や民族に多様性があった。
- 昇進:世界で昇進した社員のうち46%が女性であり、米国では昇進者のうち50%が人種や民族に多様性があった。
- 定着率:世界全体で女性の定着率は94%、男性は93%だった。米国では、人種や民族に多様性がある社員の定着率は93%、白人の社員の定着率は94%だった。
同一賃金に関する透明性の向上
アメリカン・エキスプレスは2020年、世界全体で性別の違いによる給与の格差、および米国内の人種や民族の違いによる給与の格差について、共に完全是正を達成した。同社は、今後もこの目標を維持するために、賃金格差の原因となるさまざまな要因を定期的に調査する。例えば、2020年の時点では、世界の女性の基本給の中央値は男性の基本給の中央値の107.6%だったが、米国の人種的・民族的に多様性のある社員の基本給の中央値は、白人の社員の基本給の94.5%であったことが明らかになっている。
健全な財務基盤の構築
アメリカン・エキスプレスは、中小企業のお客様や加盟店との広範なネットワークを持つ世界最大規模の金融機関の一社として、信頼性、安全性、透明性の高い商品やサービスを通じて、人々や企業が社会で活躍するための支援を続けていくとしている。特に、新たなESGの目標では下記の分野に注力する。
スモールビジネスの支援:
アメリカン・エキスプレスは「スモールビジネス・サタデー」や日本での「SHOP SMALL®」の取り組みを通じて、2021年から2025年までに個人経営の小規模小売店や飲食店で1,000億ドル(日本円で約11兆1500億円)の消費を促進することを目指す。 アメリカン・エキスプレスは2020年から2021年の間に、「SHOP SMALL®」の取り組みを通じて、3億ドル以上(日本円で約335億円)を投資することで世界中の小規模ビジネスでの消費喚起を支援した。
コミュニティへの投資:
アメリカン・エキスプレスは、2021年から2025年にかけて経済、保健医療、教育、社会格差の分野で、より公平な社会の構築に向け日々活動しているNPOなどの非営利組織に5億ドル(日本円で約557億円)の投資をする予定。2020年には、アメリカン・エキスプレス・コミュニティ開発センター(CCD)が融資と投資を引き受け、1,700戸以上の住宅の建設につながった。
個人のエンパワーメント:
アメリカン・エキスプレスは、個人および企業がより健全な財務状況を担保することを支援するため、2025年末までに達成すべき二つの新たな目標を発表した。
- 500万人以上に財務の健全性を改善するツール、リソース、教育コンテンツを提供する。
- 経済的および社会的な理由で金融システムを十分に利用できていない400万人以上の方にクレジット(与信枠)の提供を開始する。
気候変動対策の推進
アメリカン・エキスプレスは、より持続可能な世界を構築するため、顧客や社会が低炭素社会に移行するための支援を強化していく。
温暖化ガス排出量ネットゼロへの移行:
科学的根拠に基づく目標イニシアチブ( " class="glossaryLink ">SBTi) に従って、2035年までに地球温暖化ガス排出量のネットゼロを達成することを約束した。これは、事業全体を通じて企業としてのカーボンニュートラルを維持するという2018年の同社の誓約に基づくもの。アメリカン・エキスプレスは現在、サプライヤーと協力して各社の温暖化ガス排出量を追跡、削減し、最終的にはその事業活動に伴う排出量を相殺するよう要請し、サプライヤーによる同社バリューチェーンへの影響を低減させようとしている。アメリカン・エキスプレスはまた、2022年末までにカーボントラッキングやカーボンオフセットのソリューションなどの低炭素生産イノベーションを試験的に実施する予定。
コミュニティ支援:
2021年から2025年にかけて1,000万ドル以上(日本円で11億1,500万円)を気候変動対策に取り組む団体やプログラムに寄付する予定。さらに、アメリカン・エキスプレスの社員が参加する気候変動対策プロジェクト「Green2Gether」のプログラムを通じた社員参加型の支援も拡大する。
アメリカン・エキスプレスのESG報告書は以下の自主的な報告基準および枠組みに準拠して作成されている。
「グローバル・レポーティング・イニシアチブ(GRI)のスタンダード中核オプション」「サステナビリティ会計基準審議会(SASB)」「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」 。