2021年9月に償還した投資信託―21本中12本が運用期間途中での繰上償還


9月は21本の追加型株式投資信託が償還、このうち12本が繰上償還

投資信託協会によると、2021年9月に21本の追加型の株式投資信託が償還を迎えました。

この21本のうち半数以上となる12本のファンドは、設定された時点で定められていた信託期間(運用期間)を満了せずに、運用期間の途中で信託期間を繰り上げて償還されたものでした。満期償還は7本、残りの2本は、ファンドの基準価額が一定の額に上昇した場合に繰上償還を実施するという条件を満たしての償還でした。

2021年9月に償還した投資信託

繰上償還の理由

2021年9月に繰上償還されたファンド12本の繰上償還の理由を見ると、残高の減少により当初定めた運用方針に則った運用を継続することが困難になったことを理由に償還されたファンドが8本、受益者から受益権の全部について解約を行いたい旨の申し出があったためという理由が2本、基準価額が一定の水水準に下落した場合に償還する規定があり、実際に基準価額がその水準に下落したためという理由が1本、残り1本はSBIアセットマネジメントが運用していた「SBIインド・スリランカ・バランス・ファンド」で、同ファンドは、投資先ファンドであるSBIボンド スリランカ短期国債ファンド (適格機関投資家専用)の運用会社より、2020年の新型コロナウイルスの影響によりスリランカの主要産業である観光産業が大きく落ち込んでおり、今後の投資環境の悪化も想定すると、リスク対比での収益の獲得が困難となる可能性が高くなることが予想されるため、繰上償還することが受益者の利益に資するものと判断したとの通告を受けたため繰上償還されました。

 

繰上償還の影響

投資信託の繰上償還は、投資家にとっては投資リスクの一つです。

保有している投資信託が繰上償還になった場合、その時点で評価損失が生じていた場合、償還時点で投資家の損失は確定されることになります。基準価額が回復することを期待して保有していた投資家も損失を確定し、現金化せざるを得なくなります。一方、償還時に利益が出ていた場合は、利益を確定して通常は税金を支払うことになります。

さらに、繰上償還が投資家にとって大きな問題となるのは、資産計画を見直さざるをえなくなるということです。時間をかけて選んだ投資信託が、想定していた運用期間途中で運用終了されてしまうため、老後や子供の教育資金を目的とした資金計画をやり直す必要が生じてしまいます。

この繰上償還リスクを回避するためには、投資信託を購入する前に、次の点を確認することが大切です。

  • 運用残高(純資産総額)が十分大きいこと
  • 運用残高が減少傾向にないこと

なお、投資信託協会のデータによると、ETFを除いた追加型株式投資信託の1本当たりの平均残高は約145億円です(2021年6月末現在)。一方で、純資産総額(残高)が500億円を超える投資信託は322本(2021年6月末現在)存在しています。少なくとも残高が平均以上あり、その残高が増加傾向にある投資信託を選択すべきです。

 

1口当たり償還額

2021年9月に償還したファンドのうち、上場投資信託(ETF)の「NEXT FUNDS R/Nファンダメンタル・インデックス上場投信」を除く20本の投資信託の1口当り償還額(A)を見ると、設定時の基準価額である10,000円を上回る金額で償還したのは11本だけでした。

1口当り償還額が最も高かったのは、岡三アセットマネジメント株式会社の「日本新生ファンド(愛称:ライジングパワー)」で、1口当り償還額は20,460.73円でした。同ファンドは、2001年9月に設定されたファンドで、2021年9月に満期償還を迎えました。

一方で、1口当り償還額が最も低かったのは、ニッセイ アセットマネジメントの「ニッセイブラジル高配当株ファンド(毎月決算型)」で、1口当り償還額は1,744.07円でした。

 

1口当たり償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額

1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額(トータル・リターン)で見ると、この合計額(A+B)が10,000円を下回ったファンドが5本ありました。つまり、これら5本のファンドを設定時に購入し、償還まで保有した人のトータル・リターンはマイナス(損失)だったことになります。

1口当り償還額と期中分配金の合計額が最も高かったのも、岡三アセットマネジメントの「日本新生ファンド(愛称:ライジングパワー)」で、合計額は26,060.73円(1口当り償還額20,460.73円+分配金5,600円)でした。

一方、1口当たり償還額と期中分配金の合計額が最も低かったのは、ニッセイアセットマネジメント株式会社の「ニッセイブラジル高配当株ファンド(毎月決算型)」で、合計額は8,944.07円(1口当たり償還額1,744.07円+分配金7,200円)でした。

 

運用期間

2021年9月に償還した投資信託の運用期間を見ると、運用期間が最も長かったのは、2001年9月に設定された「日本新生ファンド(愛称:ライジングパワー)」でした。

投資信託の信託期間は5年、10年というものから無期限のものまであります。老後資金の確保のように長い期間をかけた資産形成を目的としている場合は、より長期での運用が可能な信託期間が「無期限」とされているものを選択する方が良いでしょう。実際に、確定拠出年金用の投資信託の信託期間は全て無期限となっていますし、つみたてNISAの対象ファンドは無期限または20年以上とされています。

 

【2021年9月に償還した追加型株式投資信託】

運用会社 ファンド名 償還日 償還時純資産総額(百万円) 償還時1口当たり償還額(A) 期中分配金(円)(B) 合計(A)+(B)(円) 満期・繰上
野村 ノムラ日本株戦略ファンド(野村SMA・EW向け) 7日 33 16,268.35 25.00 16,293.35 繰上
野村 NEXT FUNDS R/Nファンダメンタル・インデックス上場投信 21日 1,205 21,604.59 2,768.00 24,372.59 繰上
日興 時間分散型バランスファンド(成長指向)2017-02 16日 140 13,047.72 0.00 13,047.72 条件
大和 技術成長株オープン 27日 764 9,980.55 2,246.00 12,226.55 満期
岡三 日本新生ファンド(愛称:ライジングパワー) 17日 160 20,460.73 5,600.00 26,060.73 満期
ニッセイ ニッセイブラジル高配当株ファンド(毎月決算型) 28日 372 1,744.07 7,200.00 8,944.07 満期
三菱UFJ iSTOXX MUTB JAPAN クオリティ150アクティブオープン 28日 867 13,004.36 6,900.00 19,904.36 繰上
ピクテ ピクテ中短期債券ファンド(毎月決算型) 27日 130 9,995.59 0.00 9,995.59 繰上
ピクテ ピクテ中短期債券ファンド(1年決算型) 27日 398 9,998.10 0.00 9,998.10 繰上
One みずほオセアニア債券ファンド 20日 829 6,118.29 7,100.00 13,218.29 満期
アムンディ SMBC・アムンディ プロテクト&スイッチファンド 2日 28,095 9,000.00 0.00 9,000.00 繰上
三井住友トラスト ブラジル国債ファンド(毎月分配型 24日 1,084 3,052.83 7,400.00 10,452.83 満期
三井住友トラスト ブラジル国債ファンド(年2回決算型) 24日 429 9,496.95 180.00 9,676.95 満期
三井住友トラスト 外国債券インデックス 為替ヘッジあり(SMA専用) 29日 1 12,940.32 0.00 12,940.32 繰上
三井住友DS 日本中小型クオリティバリュー株ファンド 3日 60 12,397.67 100.00 12,497.67 繰上
三井住友DS カナダ高配当株ファンド 9日 23 11,414.56 30.00 11,444.56 繰上
三井住友DS 米国短期社債戦略ファンド2017-03(為替ヘッジあり) 21日 655 10,550.16 150.00 10,700.16 満期
三井住友DS ニッポン好配当株ファンド(早期償還条項付限定追加型) 27日 1,753 12,901.39 0.00 12,901.39 条件
SBI SBIインド・スリランカ・バランス・ファンド(年4回決算型) 13日 295 13,141.64 200.00 13,341.64 繰上
あおぞら あおぞら・短期ハイ・イールド債券ファンド(為替ヘッジあり) 17日 34 9,928.59 600.00 10,528.59 繰上
あおぞら あおぞら・短期ハイ・イールド債券ファンド(為替ヘッジなし) 17日 70 10,842.56 600.00 11,442.56 繰上

(データ等出所:投資信託協会、EDINET、各ファンドの有価証券届出書・臨時報告書)