3月は34本の追加型株式投資信託が償還、このうち13本が繰上償還
投資信託協会によると、2022年3月に34本の追加型の株式投資信託が償還を迎えました。償還とは投資信託が運用を終了することを言います。
この34本のうち満期償還は21本で、残りの13本のファンドは、設定された時点で定められていた信託期間(運用期間)を満了せずに、運用の途中で信託期間を繰り上げて償還されたものでした。約4割のファンドが繰上償還したことになります。
繰上償還の理由
2022年3月に繰上償還されたファンド13本の繰上償還の理由を見ると、ほとんどのファンドが、残高の減少により当初定めた運用方針に則った運用を継続することが困難になったためというものでした。投資信託は残高が少なくなると、効率的な分散投資を行うことが困難になります。
上場投資信託である「NEXT FUNDS JPX日経400インバース・インデックス連動型上場投信」は、受益権の口数が20営業日連続して5万口を下回った場合、信託契約を解約し、信託を終了させることが規定されていて、実際に受益権の口数が2022年1月21日から2022年2月18日まで20営業日連続して5万口を下回ったことにより償還されました。
また、あおぞら投信の「あおぞら・新グローバル分散ファンド」シリーズの4本は、基準価額が11,500円に達したら債券による安定運用に切り替え、償還予定日までその運用を継続することを前提とするファンドですが、4本とも基準価額が11,500円に到達したのち、運用方針に基づき安定的な債券運用に切り替え運用を行っていたものの、純資産総額の減少により、効率的な運用および商品性の維持が懸念されることから、信託終了(繰上償還)することが受益者にとって有利であると運用会社が判断したものでした。
繰上償還の影響
投資家にとって投資信託の繰上償還は投資リスクの一つです。
保有している投資信託が繰上償還になった場合、その時点で評価損失があれば、償還時点で投資家の損失は確定されることになります。基準価額が回復することを期待して保有していた投資家も損失を確定し、現金化せざるをえません。一方、償還時に利益が出ていた場合は、利益を確定して通常は税金を支払うことになります。
これにより、投資家は資産運用計画を見直さざるをえなくなります。時間をかけて選んだ投資信託が、想定していた運用期間途中で運用終了されてしまうため、老後や子供の教育資金を目的とした資金計画をやり直す必要が生じてしまうわけです。
多くのファンドが繰上償還される現状を鑑みると、ファンドの選択には十分な注意が必要です。
この繰上償還リスクを回避するためには、投資信託を購入する前に、次の点を確認することが大切です。
- 運用残高(純資産総額)が十分大きいこと
- 運用残高が減少傾向にないこと
なお、投資信託協会のデータによると、ETFを除いた追加型株式投資信託の1本当たりの平均残高は約145億円です(2022年1月末現在)。一方で、純資産総額(残高)が500億円を超える投資信託は336本(2022年1月末現在)運用されています。少なくとも残高が平均以上あり、その残高が増加傾向にある投資信託を選択すべきです。
1口当たり償還額
2022年3月に償還した投資信託の1口当り償還額(A)を見ると、「NEXT FUNDS JPX日経400インバース・インデックス連動型上場投信」を除く33本中12本は設定時の基準価額である10,000円を下回る金額で償還しました。
1口当り償還額が最も高かったのは、T&Dアセットマネジメント株式会社の「T&Dダブルブル・ベア・シリーズ7(ナスダック100・ダブルブル7)」で、1口当り償還額は26,811.91円でした。同ファンドは、2020年に信託期間2年のファンドとして設定され、2022年3月に満期償還を迎えました。追加型株式投資信託としては、信託期間2年というのは極めて短いと言えますが、ブルベア型のファンドは信託期間が5年程度など短い傾向にあります。
一方で、1口当り償還額が最も低かったのは、T&Dアセットマネジメント株式会社の「T&Dダブルブル・ベア・シリーズ7(ナスダック100・ダブルベア7)」で、1口当り償還額は2,585.79円でした。
1口当たり償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額
1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額(トータル・リターン)で見ると、この合計額(A+B)が10,000円を下回ったファンドが11本ありました。
1口当り償還額と期中分配金の合計額が最も高かったのも、「T&Dダブルブル・ベア・シリーズ7(ナスダック100・ダブルブル7)」で、合計額は26,811.91円(1口当り償還額26,811.91円+分配金0円)でした。
一方、1口当り償還額と期中分配金の合計額が最も低かったのは、「T&Dダブルブル・ベア・シリーズ7(ナスダック100・ダブルベア7)」で、合計額は2,585.79円(1口当たり償還額2,585.79円+分配金0円)でした。
運用期間
2022年3月に償還した投資信託の運用期間を見ると、運用期間が最も長かったのは、アセットマネジメントOne株式会社が1995年3月24日に設定した「ハイパーバランスオープン」でした。ファンドは、純資産総額の減少を理由に繰上償還されました。
投資信託の信託期間は5年、10年というものから無期限のものまであります。老後資金の確保のように長い期間をかけた資産形成を目的としている場合は、より長期での運用が可能な信託期間が「無期限」とされているものを選択する方が良いでしょう。実際に、確定拠出年金用の投資信託の信託期間は全て無期限となっていますし、つみたてNISAの対象ファンドは無期限または20年以上とされています。
【2022年3月に償還した追加型株式投資信託】
運用会社 | ファンド名 | 純資産 総額 |
1口当り 償還額 (A) |
期中 分配金 (B) |
合計 (A) + (B) |
満期/繰上 |
野村 | 日本企業価値向上ファンド(限定追加型) | 17,421 | 12,113.50 | 40.00 | 12,153.50 | 満期 |
野村 | NEXT FUNDS JPX日経400インバース・インデックス連動型上場投信 | 37 | 338,194.89 | 0.00 | 338,194.89 | 繰上 |
日興 | インデックスファンドJPX日経中小型株 | 156 | 12,862.25 | 0.00 | 12,862.25 | 繰上 |
大和 | ダイワ円債セレクト 日本国債コース | 73 | 9,839.15 | 0.00 | 9,839.15 | 満期 |
大和 | ダイワ円債セレクト 超長期国債コース | 2,046 | 10,321.14 | 105.00 | 10,426.14 | 満期 |
大和 | ダイワ円債セレクト 超長期国債&住宅金融支援機構債コース | 68 | 10,212.86 | 70.00 | 10,282.86 | 満期 |
大和 | ダイワ円債セレクト マネーコース | 112 | 9,967.59 | 0.00 | 9,967.59 | 満期 |
大和 | ダイワ・オーストラリア高配当株ファンド | 1,149 | 11,172.02 | 8,930.00 | 20,102.02 | 満期 |
大和 | ダイワ・オーストラリア高配当株ファンド・マネー・ポートフォリオ | 2 | 9,967.67 | 0.00 | 9,967.67 | 満期 |
T&D | T&Dダブルブル・ベア・シリーズ7(インド・ダブルブル7) | 69 | 16,524.78 | 0.00 | 16,524.78 | 満期 |
T&D | T&Dダブルブル・ベア・シリーズ7(インド・ダブルベア7) | 1 | 2,938.33 | 0.00 | 2,938.33 | 満期 |
T&D | T&Dダブルブル・ベア・シリーズ7(中国・ダブルブル7) | 15 | 4,918.06 | 0.00 | 4,918.06 | 満期 |
T&D | T&Dダブルブル・ベア・シリーズ7(中国・ダブルベア7) | 17 | 9,610.99 | 0.00 | 9,610.99 | 満期 |
T&D | T&Dダブルブル・ベア・シリーズ7(ナスダック100・ダブルブル7) | 87 | 26,811.91 | 0.00 | 26,811.91 | 満期 |
T&D | T&Dダブルブル・ベア・シリーズ7(ナスダック100・ダブルベア7) | 19 | 2,585.79 | 0.00 | 2,585.79 | 満期 |
T&D | T&Dダブルブル・ベア・シリーズ7(金・ダブルブル7) | 42 | 11,794.58 | 0.00 | 11,794.58 | 満期 |
T&D | T&Dダブルブル・ベア・シリーズ7(金・ダブルベア7) | 1 | 6,228.59 | 0.00 | 6,228.59 | 満期 |
T&D | T&Dダブルブル・ベア・シリーズ7(マネープールファンド7) | 63 | 9,983.57 | 0.00 | 9,983.57 | 満期 |
JPモルガン | JPMアセアン成長株オープン | 7,086 | 14,983.34 | 2,900.00 | 17,883.34 | 満期 |
ニッセイ | ニッセイアジアリートファンド(毎月決算型) | 2 | 17,127.99 | 0.00 | 17,127.99 | 満期 |
ニッセイ | ニッセイアジアリートファンド(毎月決算型)限定為替ヘッジあり | 64 | 13,058.84 | 0.00 | 13,058.84 | 満期 |
ニッセイ | ニッセイJPX日経中小型株アクティブファンド | 118 | 8,841.53 | 4,000.00 | 12,841.53 | 満期 |
One | ハイパーバランスオープン | 751 | 11,726.37 | 11,055.00 | 22,781.37 | 繰上 |
One | DIAMコア資産設計ファンド(堅実型) | 77 | 11,208.71 | 0.00 | 11,208.71 | 繰上 |
One | DIAMコア資産設計ファンド(積極型) | 163 | 11,538.73 | 0.00 | 11,538.73 | 繰上 |
三井住友トラスト | JPX日経インデックス400・オープン(SMA専用) | 180 | 14,817.05 | 0.00 | 14,817.05 | 繰上 |
三井住友DS | 日本割安株オープン | 1,136 | 20,117.01 | 5,430.00 | 25,547.01 | 満期 |
三井住友DS | 米国優先リートファンド(為替ヘッジあり) | 477 | 7,589.47 | 2,340.00 | 9,929.47 | 繰上 |
三井住友DS | 米国優先リートファンド(為替ヘッジなし) | 1,073 | 7,759.97 | 2,210.00 | 9,969.97 | 繰上 |
ソシエテ・ジェネラル | ミルバーン・コーナーストーン・ファンド | 487 | 10,607.17 | 0.00 | 10,607.17 | 繰上 |
あおぞら | あおぞら・新グローバル分散ファンド(限定追加型)2019-04 | 233 | 11,003.02 | 0.00 | 11,003.02 | 繰上 |
あおぞら | あおぞら・新グローバル分散ファンド(限定追加型)2019-07 | 217 | 11,045.90 | 0.00 | 11,045.90 | 繰上 |
あおぞら | あおぞら・新グローバル分散ファンド(限定追加型)2019-10 | 208 | 11,007.76 | 0.00 | 11,007.76 | 繰上 |
あおぞら | あおぞら・新グローバル分散ファンド(限定追加型)2020-01 | 140 | 11,039.05 | 0.00 | 11,039.05 | 繰上 |
(データ等出所:投資信託協会、EDINET、各ファンドの有価証券届出書・臨時報告書)