日本資産運用基盤グループは、新興・外資系資産運用会社等 が効率よく投資信託ビジネスに参入し、日本の投資家がより幅広い高品質な投資信託商品を利用できるよ う、日本版ファンド・マネジメント・カンパニーの役割を担う子会社として、JAMP ファンド・マネジメント株式会社を設立したと2022年6月28日に発表した。
JAMP ファンド・マネジメント株式会社は、日本の投資家のために投資信託を設定・運用する投資運用業者として活動を行なうことになるため、金融商品取引業(投資運用業・第二種金融商品取引業)の登録を行な い、2023 年春を目途に事業を開始することを目指す。
新会社の概要
商号 | JAMP ファンド・マネジメント株式会社 |
設立日 | 2022 年 6 月 28 日 |
本社所在地 | 東京都中央区日本橋兜町 5 番 1 号 兜町第 1 平和ビル FinGATE BASE A |
資本金 | 10百万円 |
株主 | 株式会社日本資産運用基盤グループ(100%) |
代表者 | 大原啓一 (株式会社日本資産運用基盤グループ 代表取締役社長) |
日本資産運用基盤グループは同社の問題意識について次のように述べている。
欧米を中心とする諸外国とは異なり、日本の資産運用業界では、いわゆる「資産運用会社」がアセット・マネ ジメント(投資運用)業務のみならず、ファンド・マネジメント(投資信託の運営・管理)業務までも担うことが 一般的であるという事業運営における構造的な特徴が存在します。
例えば、欧州で一般的な公募ファンドである UCITS ファンドの運営は、ファンド・マネジメント・カンパニー と呼ばれるファンドの設定や運営・管理を専門とする会社がハブとなり、顧客資金を有価証券等で運用する 投資運用業務は外部の資産運用(アセット・マネジメント)会社に、NAV(Net Asset Value=投資信託の純 資産総額)計算等のファンド運営・管理業務はアドミニストレーターと呼ばれる専門の事務会社に委託する 等、専門の会社による役割分担を通じてファンド全体の運営が行われています。
従って、資産運用(アセット・マネジメント)会社の立場から見ると、専門のファンド・マネジメント・カンパニ ーにファンドの設定・運営管理業務を担ってもらうことで、自らが強みとする投資運用業務に集中しつつ、業 務負担を抑えてファンドビジネスを展開できるというメリットがあります。
また、プロダクトの品質管理の点でも、資産運用(アセット・マネジメント)会社がファンドの投資運用方針や制約等を遵守した投資運用業務を行なう能力を備えているか、実際に行っているか等について、別会社であ るファンド・マネジメント・カンパニーがデューディリジェンスやモニタリングを行なうため、プロダクトガバナ ンスが構造的に担保されているスキームとなっています。
一方、日本の資産運用業界における投資信託ビジネスは、投資信託の設定や運営・管理を行なうファンド・ マネジメント業務も、顧客資金を有価証券等で運用する投資運用業務も、同じ投資信託委託会社で一体的に 営まれるというのが基本的なスキームです。
そのため、個人投資家や金融法人等の機関投資家からの需要が強いビークルである投資信託を用いよう とする場合、資産運用会社は、投資信託委託業のライセンスを取得し、投資運用業務のみならず、ファンド・マ ネジメント業務までも営む必要があります。このことは、新興・外資系資産運用会社等にとって、日本で資産 運用ビジネスを行なおうとする際の大きな参入障壁となっています。
また、足もと金融庁が「資産運用業高度化プログレスレポート」等で問題提起しているプロダクトガバナンス の脆弱性についても、それぞれの投資信託委託会社が社内でガバナンスを働かせようとすることが当然必 要であるものの、ファンド・マネジメント・カンパニーという別会社にその役割を担わせる欧州等におけるファ ンド運営スキームと比べると、構造的な限界が存在しています。
JAMP ファンド・マネジメントの提供ソリューション
JAMP ファンド・マネジメントは、日本の投資家向けに投資信託商品を提供することを企図する新興・外資系資産運用会社等(パートナー資産運用会社等)と連携し、投資運用業者として、以下のような形で、それらパートナー資産運用会社等の投資運用能力を活用しながら、投資信託商品の設定・運用・提供を行なう。
新興・外資系資産運用会社等のデューディリジェンス
新しい投資信託商品の組成を企図するパートナー資産運用会社等の商品企画案をヒアリングし、その商品性や投資家からの需要、手数料水準等を検討し、一定以上の事業性が見込まれる場合には、当該パートナー 資産運用会社等と連携する形で、投資信託商品の設定を行なう。
その際、投資家と約する投資運用方針や制約等を遵守する投資運用業務を行なう能力等を備えている資 産運用会社等であるのか、会社としての事業継続性は問題ないか、運用開始後の投資家サポートにおける連携は十分に期待できるか等のデューディリジェンスを丁寧に実施する。
投資信託資産に係る投資運用業務の委託等
JAMP ファンド・マネジメントが新しく設定する投資信託商品に係る投資運用業務をパートナー資産運用会社等に委託する。その際、投資運用業務の委託というスキームのみならず、当該パートナー資産運用会 社等が運用する外国籍投信への FoF 形式の投資や投資助言といったスキームを利用することも想定している。
投資運用業務のモニタリングと商品品質管理
投資信託商品の設定・運用の開始後は、投資家利益の保護を最優先の目的とし、投資運用業務の委託先であるパートナー資産運用会社等が投資運用方針や制約等を遵守して投資運用業務を遂行しているか、会社 や運用担当組織が安定的に運営されているか、投資家サポートにおける連携は想定通りに稼働しているか 等のモニタリングを継続的に行なう。
万が一、委託先のパートナー資産運用会社等が委託業務の遂行を適切に行なうことができないと判断され る場合には、投資信託委託会社としての権限と責任に基づき、投資運用業務の委託先の変更や委託の中止等を行ない、投資家の利益の保護を図る。
期待される効果
日本資産運用基盤グループによると、JAMP ファンド・マネジメントが、投資運用業者として、日本版ファンド・マネジメント・カンパニーの役割を 担い、パートナー資産運用会社等と連携し、新しい投資信託商品を設定・運用・提供することにより、日本の 投資家がより幅広い高品質な資産運用サービスにアクセスできるようになることが期待される。
日本資産運用基盤グループは、JAMP ファンド・マネジメントが提供するソリューションにより、新しい資産運用会社の市場参入 や健全な競争環境の整備が進むことを通じて、資産運用業の高度化やインベストメントチェーンの活性化を 図り、ひいては持続的な経済成長の実現、国際金融都市としての日本の地位向上に貢献してゆく。