インベスコ、ソブリン投資家へのグローバル調査結果を発表


インベスコは2022年7月18日、 第10回目となる インベスコ グローバル・ソブリン・アセット・マネジメント・スタディ を発表した。 この調査は、 ソブリン投資家と中央銀行の投資動向について詳細な分析を提供するもの。今年の調査では、 81のソブリン投資家と58の中央銀行の投資責任者、資産クラスの責任者、シニア・ポートフォリオ・ストラテジスト、計139名への個別面談調査を行った。調査対象となった運用資産総額は23兆米ドルに上る。

 

インベスコ グローバル・ソブリン・アセット・マネジメント・スタディの主なポイント

  • インフレの影響により、 資産配分の見直しが促され、 債券への資産配分を引き下げ、 プライベート・マーケットへの投資を選好
  • ウクライナとロシアの紛争の影響で、 北米、 アジア太平洋地域への資産配分を増やすと予想
  • 米ドルは依然として主要な世界の準備通貨であるものの、 人民元への資産配分が増加
  • 現在デジタル資産に投資しているソブリン投資家は全体のまだ7%
  • ソブリン投資家の規模拡大と、 より高い専門性が求められるプライベート・マーケットへの投資の必要性に直面し、 マネジャーのアウトソーシングを促進

 

インフレ・ショックにより、 難しい選択が示されている

ソブリン投資家は、 現在、 世界の地政学と並んで、 インフレが来年の世界経済の成長に対する最大の脅威であると考えている。 回答者の2/5は、 先進国市場のインフレが今後2年間にわたって高止まりすると予想し、 さらに2/5はインフレが徐々に低下すると予想、 1/5弱はスタグフレーションを予測している。回答者の半数以上(59%)が、 米国のインフレ率が今後5年間で平均3~4%になると予想しており、 パンデミック前の水準を上回っているものの、 今後数年でインフレが鎮静化するという一定のコンセンサスも得られている。

ソブリン投資家はインフレと金利が急速に上昇するにつれて、 マクロ経済の前提を再考し、それに応じて投資先を調整している。実際に回答者の大半(59%)は、 さらなる金利上昇を見越してポートフォリオを再構築したと述べている。これは、 債券への資産配分を引き続き減少させ、それに対応してプライベート・マーケットのオルタナティブ投資、 特に不動産、 プライベート・エクイティ、 インフラへの配分を増加させてきていることが示されており、 大半(71%)の回答者がこれらの対応によりインフレヘッジ効果が期待できると考えている。現在、 ソブリン投資家のポートフォリオに占めるプライベート資産の割合は、 平均で22%を占め、 過去最高になっている。 (2011年に2,050億米ドルであったものが、 現在7,190億米ドルのプライベート・アセットを保有している*。 )

今後1年間に資産配分の増加、維持、あるいは減少を予定している資産クラスを尋ねたところ、プライベート・エクイティが最も人気が高く(差し引き+29%)次いで非上場不動産が+23%だった。一方、 債券(-12%)と現金(-4%)には最も弱気な回答が多く、株式に対するセンチメントはほぼ横ばい(+1%)となっている。

 

ソブリン投資家は北米とアジア太平洋地域への投資を増やし、 中央銀行による人民元へのさらなる配分が予想される

ウクライナでの軍事紛争により、欧州の投資に対するセンチメントは悪化している。欧州先進国(19%)、欧州新興国(13%)は、ソブリン投資家らが資産配分を減らす可能性が最も高い地域となっている。一方、 北米(33%)とアジア太平洋地域(23%)への資産配分を、今後、増やす可能性が高いと回答している。

例年(過去数年間)の調査結果では、中国への資産配分に対して関心が高いことが示されていた。今年は、ソブリン投資家の過半数(52%)は、中国は昨年よりも投資先として厳しい状況にあると述べ、回答者の33%は、米国と中国の相互依存関係が潜在的な地政学的リスクを軽減することに同意すると回答している。

中央銀行の間では、米ドルが依然として世界の主要な準備通貨だが、準備金に占める配分はここ数年にわたって徐々に減少しており、2016年から2021年にかけて65.4%から58.8%に減少していた。中央銀行は、特にロシアの外貨準備凍結を受けて、世界の準備金に占める中国人民元の割合が今後も増加すると認識している。

中央銀行の外貨準備高における人民元の資産配分は、2016年の1.1%から2021年末には2.8%に増加し、中央銀行の過半数以上(63%)が現在人民元の資産配分を有している。ほとんどの中央銀行は、今後5年間に人民元の資産配分を引き上げる意向であるものの、ポジション自体はアンダーウェイトになると見なしている。29%が人民元を今後5年以内に「真の準備通貨」になると考えている一方、同意しないと回答した割合も29%となっている。

 

ソブリン投資家はデジタル資産を注意深くみている

機関投資家がデジタル資産を採用することが広く期待されているにもかかわらず、ソブリン投資家はデジタル資産を投資対象とは見做していない。ソブリン投資家のわずか7%がデジタル資産に資産を配分しているが、その多くは原資産を有しているブロックチェーン企業への投資を通じたもの。ボラティリティ(68%)と規制圧力(55%)が最も広く懸念されており、デジタル資産が信頼できるインフレヘッジとして機能すると考えているのはわずか15%のみとなっている。

しかし、デジタル資産の研究は増えている。2018年には、ソブリン投資家のわずか12%がこの分野の調査を行っていた。現在、 この数字は41%。ソブリン投資家は一般に、プライベート・エクイティやベンチャーキャピタルを介して基盤となるテクノロジーに投資することに抵抗を感じておらず、55%が、適切な機会があれば業界への投資を検討すると述べている。

 

規模拡大と、 プライベート・マーケットへの投資の必要性がアウトソーシングを促進

2021年、ソブリン投資家は、運用資産総額を2018年の約8兆米ドルから、 10.5兆米ドルに増やした**。

この規模の拡大は、プライベート・マーケットという競争が激しく、難解な分野へのエクスポージャーの増大と相まって、運用の複雑さを増し、ファンドが目的達成を支援する外部マネジャーを探すよう促した。 一部のファンドは、国内市場以外のプライベート・マーケットでの資産管理に苦労しており 投資を内製化するための以前の動きに逆行していると指摘した。ソブリン投資家の半数以上がサードパーティの資産運用会社と戦略的パートナーシップを築いており、この割合は、投資ソブリンの場合は9/10以上に上る。

 

インベスコのオフィシャル・インスティチューション・ヘッドのロッド・リンゴー氏 は次のように述べている。

ソブリン投資家は、 規模の拡大と業務の拡大が、 力強いパフォーマンスの妨げになる可能性があることを認識しています。 パートナーシップやアウトソーシングは、 運用コストを下げるだけにとどまらず、 他者の専門知識を活用することこそが、 アウトソーシングを促進していく上で最も重視されています。 特に詳細な知識と実践的な管理が必要な市場では、 アルファを大規模に獲得することは困難です。 そのため、 ソブリン投資家が、 未開拓の領域の道先案内人として、 これらの課題を克服するためのソリューションに、 アウトソーシングを採用するのは当然の傾向と考えています。

*      出所:NMGコンサルティング、 2022年3月現在
** 出所:Global SWF Global Track at https://globalswf.com

注記:

インベスコ グローバル・ソブリン・アセット・マネジメント・スタディの発行は2013年に始まり、今回で10回目となる。 2022年のソブリン投資家は主に3つのカテゴリに分けられる(ソブリン投資家としての種類、 地域、 運用資産規模)。本調査のフィールドワークは、 NMGコンサルティングが2022年1月から3月の間に実施した。 調査対象機関の総運用資産総額は2022年3月時点で23兆米ドル。

インベスコ グローバル・ソブリン・アセット・マネジメント・スタディ2022年(英語版)→https://www.invesco.com/igsams