6月は30本の追加型株式投資信託が償還、このうち11本が繰上償還
投資信託協会によると、2022年6月に30本の追加型の株式投資信託が償還を迎えました。償還とは投資信託が運用を終了することを言います。
この30本のうち満期償還(定時償還)は16本で、11本のファンドは設定された時点で定められていた信託期間(運用期間)を満了せずに、運用の途中で信託期間を繰り上げて償還されたもの、3本は約款で定めた条件を満たしたことを受けての償還でした。
繰上償還の理由
2022年6月に繰上償還されたファンド11本の繰上償還の理由を見ると、東京海上アセットマネジメントの「東京海上Roggeグローバルインフラ・ハイイールド債ファンド」シリーズの4本は、残高の減少により当初定めた運用方針に則った運用を継続することが困難になったためというものでした。
あおぞら投信の「あおぞら・新グローバル分散ファンド(限定追加型)」シリーズの6本については、運用方針において、基準価額が一定水準(11,500円)に到達した場合、安定的な債券運用に切り替え運用を行うことが定められており、これら6本のファンドでは、実際に基準価額が11,500円に到達し、債券運用が行われていました。いずれのファンドも信託期間が終了するまで期間が残されていましたが、純資産総額の減少により、受益権の総口数が投資信託約款の信託終了(繰上償還)に関する規定である10億口を下回る状態となり、効率的な運用および商品性の維持が懸念されることから、信託終了されました。
残る1本のりそなアセットマネジメントの「リスクコントロール・オープン」は、運用方針において、投資環境の悪化等により、基準価額があらかじめ定めた確保ラインと呼ばれる閾値(ファンドにおいては9,500円)に近づいた場合は、基準価額が『確保ライン』を下回るリスクを低減するために、マネーマザーファンドへの投資を通じて残存期間の短い国内の公社債等へ投資を行い、価格変動性の低い資産への投資割合を増やすことが定められていました。また、基準価額と『確保ライン』との差が20営業日連続して50円未満となった場合に、短期金融資産等を中心とした安定的な運用に切り替えた後、繰上償還することが定められており、実際に、2022年5月25日付けでファンドの基準価額と『確保ライン』との差が20営業日連続して50円未満となったため繰上償還されたものです。
投資信託は運用残高(純資産総額)が少なくなると、効率的に分散投資を行うことが困難になるため、各ファンドが約款で繰上償還の条件としている一定の残高(ファンドにより異なる)を下回った状態が継続すると繰上償還される傾向にあります。
繰上償還の影響
投資家にとって投資信託の繰上償還は投資リスクの一つです。
保有している投資信託が繰上償還になった場合、その時点で評価損失があれば、償還時点で投資家の損失は確定されることになります。基準価額が回復することを期待して保有していた投資家も損失を確定し、現金化せざるをえません。一方、償還時に利益が出ていた場合は、利益を確定して通常は税金を支払うことになります。
これにより、投資家は運用計画を見直さざるをえなくなります。時間をかけて選んだ投資信託が、想定していた運用期間途中で運用終了されてしまうため、老後や子供の教育資金を目的とした資金計画をやり直す必要が生じてしまうわけです。
多くのファンドが繰上償還される現状を鑑みると、ファンドの選択には十分な注意が必要です。
この繰上償還リスクを回避するためには、投資信託を購入する前に、次の点を確認することが大切です。
- 運用残高(純資産総額)が十分大きいこと
- 運用残高が減少傾向にないこと
なお、投資信託協会のデータによると、ETFを除いた追加型株式投資信託の1本当たりの平均残高は約148億円です(2022年6月末現在)。一方で、純資産総額(残高)が500億円を超える投資信託は338本(2022年6月末現在)運用されています。少なくとも残高が平均以上あり、その残高が増加傾向にある投資信託を選択した方がよいでしょう。
1口当たり償還額
2022年6月に償還した投資信託の1口当り償還額(A)を見ると、30本中16本は設定時の基準価額である10,000円を下回る金額で償還しました。
1口当り償還額が最も高かったのは、大和アセットマネジメントの「ダイワ日本リート・ファンド」で1口当り償還額は16,949.56円でした。
一方で、1口当り償還額が最も低かったのは、楽天投信投資顧問の「楽天日本株3.8倍ベア」で、1口当り償還額は1,345.59円でした。同ファンドは、日々の基準価額の値動きが日本の株式市場の日々の騰落率に対して概ね3.8倍程度反対となることを目指して運用を行うベア型ファンドです。
1口当たり償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額
1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額(トータル・リターン)で見ると、この合計額(A+B)が10,000円を下回ったファンドは4本でした。
1口当り償還額と期中分配金の合計額が最も高かったのは、大和アセットマネジメントの「ダイワ日本リート・ファンド」で、合計額は24,499.56円(1口当り償還額16,949.56円+分配金7,550円)でした。
合計額が最も低かったのは、「楽天日本株3.8倍ベア」で、合計額は1,345.59円(1口当り償還額1,345.59円+分配金0円)でした。
2022年6月に償還した追加型株式投資信託の一覧
運用会社 | ファンド名 | 純資産 総額 |
1口当り 償還額 (A) |
期中 分配金 (B) |
合計 (A) + (B) |
満期/繰上 |
日興 | 日興・アッシュモア・グローイング・マルチストラテジー・ファンド | 2,053 | 8,845.24 | 2,060.00 | 10,905.24 | 満期 |
大和 | ダイワ先進国リートα 為替ヘッジあり(毎月分配型) | 1,269 | 3,031.01 | 8,220.00 | 11,251.01 | 満期 |
大和 | ダイワ先進国リートα 為替ヘッジなし(毎月分配型) | 745 | 4,103.19 | 11,890.00 | 15,993.19 | 満期 |
大和 | 通貨選択型ダイワ先進国リートα 円ヘッジコース(毎月分配型) | 109 | 2,926.83 | 8,340.00 | 11,266.83 | 満期 |
大和 | 通貨選択型ダイワ先進国リートα 通貨セレクトコース(毎月分配型) | 821 | 1,772.28 | 11,350.00 | 13,122.28 | 満期 |
大和 | ダイワ/フィデリティ・アジア3資産分散ファンド | 2,474 | 9,320.77 | 4,850.00 | 14,170.77 | 満期 |
大和 | ダイワ日本リート・ファンド | 1,456 | 16,949.56 | 7,550.00 | 24,499.56 | 満期 |
大和 | ダイワ日本リート・ファンド・マネー・ポートフォリオ | 68 | 9,977.52 | 0.00 | 9,977.52 | 満期 |
JPモルガン | JPMインドネシア債券ファンド(毎月決算型) | 2,526 | 7,317.37 | 6,280.00 | 13,597.37 | 満期 |
アバディーン | アバディーン・スタンダード・インフラ・ファンド | 4,142 | 6,873.85 | 945.00 | 7,818.85 | 満期 |
三菱UFJ国際 | アジア・オセアニア好配当株オープン(毎月決算型) | 728 | 10,610.11 | 9,270.00 | 19,880.11 | 満期 |
SOMPO | アセアン・オーナーズ・ファンド(為替ヘッジなし) | 245 | 11,438.94 | 100.00 | 11,538.94 | 満期 |
東京海上 | 東京海上Roggeグローバルインフラ・ハイイールド債ファンド(為替ヘッジなし)(毎月決算型) | 324 | 7,491.19 | 3,400.00 | 10,891.19 | 繰上 |
東京海上 | 東京海上Roggeグローバルインフラ・ハイイールド債ファンド(為替ヘッジなし)(年2回決算型) | 107 | 11,252.34 | 0.00 | 11,252.34 | 繰上 |
東京海上 | 東京海上Roggeグローバルインフラ・ハイイールド債ファンド(為替ヘッジあり)(毎月決算型) | 86 | 6,811.16 | 3,380.00 | 10,191.16 | 繰上 |
東京海上 | 東京海上Roggeグローバルインフラ・ハイイールド債ファンド(為替ヘッジあり)(年2回決算型) | 67 | 10,062.77 | 0.00 | 10,062.77 | 繰上 |
三井住友トラスト | 日本厳選高配当株ファンド2019-10(繰上償還条件付) | 1,497 | 12,017.52 | 0.00 | 12,017.52 | 条件 |
三井住友トラスト | 日本厳選割安株ファンド2018-04(繰上償還条件付) | 31,708 | 11,912.65 | 0.00 | 11,912.65 | 条件 |
三井住友トラスト | 日本厳選割安株ファンド2018-10(繰上償還条件付) | 12,652 | 12,076.85 | 0.00 | 12,076.85 | 条件 |
ラッセル | ラッセル・インベストメント新興国増配優良株 A(米ドル円ヘッジ) | 5 | 8,320.62 | 2,580.00 | 10,900.62 | 満期 |
ラッセル | ラッセル・インベストメント新興国増配優良株 B(為替ヘッジなし) | 61 | 9,610.44 | 7,280.00 | 16,890.44 | 満期 |
楽天 | 楽天日本株トリプル・ベア4 | 1,082 | 1,467.33 | 0.00 | 1,467.33 | 満期 |
楽天 | 楽天日本株3.8倍ベア | 3,040 | 1,345.59 | 0.00 | 1,345.59 | 満期 |
あおぞら | あおぞら・新グローバル分散ファンド(限定追加型)2018-02 | 773 | 10,603.36 | 0.00 | 10,603.36 | 繰上 |
あおぞら | あおぞら・新グローバル分散ファンド(限定追加型)2018-04 | 549 | 10,612.21 | 0.00 | 10,612.21 | 繰上 |
あおぞら | あおぞら・新グローバル分散ファンド(限定追加型)2018-07 | 680 | 10,534.73 | 0.00 | 10,534.73 | 繰上 |
あおぞら | あおぞら・新グローバル分散ファンド(限定追加型)2018-10 | 367 | 10,551.83 | 0.00 | 10,551.83 | 繰上 |
あおぞら | あおぞら・新グローバル分散ファンド(限定追加型)2019-01 | 303 | 10,605.49 | 0.00 | 10,605.49 | 繰上 |
あおぞら | あおぞら・新グローバル分散ファンド(限定追加型)2020-07 | 470 | 10,741.67 | 0.00 | 10,741.67 | 繰上 |
りそな | リスクコントロール・オープン | 276 | 9,511.25 | 675.00 | 10,186.25 | 繰上 |
(データ等出所:投資信託協会、EDINET、各ファンドの有価証券届出書・臨時報告書)