5月は6本の追加型株式投資信託が償還、このうち3本が繰上償還
投資信託協会によると、2023年5月に6本の追加型の株式投資信託が償還を迎えました。償還とは投資信託が運用を終了することをいいます。
この6本のうち満期償還(定時償還)は3本だけで、残りの3本は、ファンドが設定された時点で定められていた信託期間(運用期間)を満了せずに、運用の途中で信託期間を繰り上げて償還されたものです。
繰上償還の理由について
2023年5月に繰上償還されたファンド3本の繰上償還の理由を見ると、3本とも純資産総額が減少し、信託約款の繰上償還条項に定める金額を下回り、効率的な運用を行うことが困難な状況が続いていることが理由でした。依然として、残高の減少が繰上償還の最大の理由となっています。
なお、日興アセットマネジメントの「ブラジル株式ファンド」は、2008年6月に設定された当初は、信託終了日は2018年5月15日でしたが、2014年2月15日に、信託期間を2023年5月15日へ変更した上での満期償還となりました。
繰上償還の影響
投資家にとって投資信託の繰上償還は投資リスクの一つです。
保有している投資信託が繰上償還になった場合、その時点で評価損失があれば、償還時点で投資家の損失は確定されることになります。基準価額が回復することを期待して保有していた投資家も損失を確定し、現金化せざるをえません。一方、償還時に利益が出ていた場合は、利益を確定して通常は税金を支払うことになります。
これにより、投資家は運用計画を見直さざるをえなくなります。時間をかけて選んだ投資信託が、想定していた運用期間途中で運用終了されてしまうため、老後や子供の教育資金を目的とした資金計画をやり直す必要が生じてしまうわけです。
多くのファンドが繰上償還される現状を鑑みると、ファンドの選択には十分な注意が必要です。
この繰上償還リスクを回避するためには、投資信託を購入する前に、次の点を確認することがとても大切です。
- 運用残高(純資産総額)が十分大きいこと
- 運用残高が減少傾向にないこと
なお、投資信託協会のデータによると、ETFを除いた追加型株式投資信託(全5,482本)の1本当たりの平均残高は約179億円です(2023年6月末現在)。一方で、純資産総額(残高)が500億円を超える投資信託は377本(2023年5月末現在)運用されています。少なくとも残高が平均以上あり、その残高が増加傾向にある投資信託を選択した方がよいでしょう。
1口当たり償還額
2023年5月に償還した投資信託の1口当り償還額(A)を見ると、6本中3本は設定時の基準価額である10,000円を下回る金額で償還しました。
1口当り償還額が最も低かったのは、SBIアセットマネジメント株式会社の「SBI日本株 3.7ベアⅢ」で1口当り償還額は416.44円でした。同ファンドは株価指数先物取引を積極的に活用し、日々の基準価額の値動きがわが国の株式市場全体の値動きの概ね3.7倍程度逆となる投資成果を目指して運用を行うベア型ファンドです。
一方で、1口当り償還額が最も高かったのは、アセットマネジメントOne株式会社の「たわらノーロードplus 国内株式高配当最小分散戦略」で、1口当り償還額は16,528.12円でした。同ファンドは、国内株式のうち投資魅力度の高い高配当銘柄に実質的に投資し、低ボラティリティのポートフォリオを構築し、投資効率(リスク調整後リターン)の向上をめざすファンドでしたが、運用残高の減少を理由に5月に繰上償還されました。
1口当たり償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額
1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額(トータル・リターン)で見ると、この合計額(A+B)が10,000円を下回ったファンドが3本ありました。
1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額が最も低かったのも、SBIアセットマネジメント株式会社の「SBI日本株 3.7ベアⅢ」で、合計額は416.44円(1口当り償還額416.44円+分配金0円)でした。
一方、この合計額が最も高かったのは、「たわらノーロードplus 国内株式高配当最小分散戦略」で、合計額は16,528.12円(1口当り償還額16,528.12円+分配金0円)でした。
2023年5月に償還した追加型株式投資信託の一覧
運用会社 | ファンド名 | 設定日 | 償還時純資産 総額 (百万円) |
1口当り 償還額 (A) (円) |
期中 分配金 (B) (円) |
合計 (A) + (B) (円) |
満期/繰上 |
日興 | ブラジル株式ファンド | 2008.6.16 | 1,149 | 4,197.38 | 0.00 | 4,197.38 | 満期 |
日興 | RS日本株式ファンド <愛称:市場リスク配慮型日本株式ファンド> | 2013.6.18 | 228 | 15,833.07 | 0.00 | 15,833.07 | 繰上 |
三菱UFJ | コアバランス | 2013.7.1 | 10 | 9,714.56 | 0.00 | 9,714.56 | 満期 |
One | たわらノーロードplus 国内株式高配当最小分散戦略 | 2016.3.31 | 157 | 16,528.12 | 0.00 | 16,528.12 | 繰上 |
One | たわらノーロードplus 新興国株式低ボラティリティ高配当戦略 | 2016.3.31 | 62 | 12,997.35 | 0.00 | 12,997.35 | 繰上 |
SBIアセット | SBI日本株 3.7ベアⅢ | 2018.5.9 | 3,689 | 416.44 | 0.00 | 416.44 | 満期 |
(データ等出所:投資信託協会、EDINET、各ファンドの有価証券届出書・臨時報告書)