11月は40本の追加型株式投資信託が償還、このうち18本は繰上償還
投資信託協会によると、2023年11月に40本の追加型の株式投資信託が償還しました。償還とは投資信託が運用を終了することをいいます。
この40本のうち満期償還だったのは22本だけで、残りの18本は、ファンドが設定された時点で定められていた信託期間(運用期間)を満了せずに、運用の途中で償還された繰上償還でした。
繰上償還の理由
繰上償還の理由を見ると、18本中15本は残高の減少により商品性を維持することや効率的な運用を行うことが困難な状況であることが理由でした。残高の減少は繰上償還の最も多い理由であり、投資家にとっては大きな投資リスクの一つです。
「ストップライン付き野村ワールドボンド・ファンド」は、ファンドの基準価額が同ファンドにおいて「ストラップライン」と呼ぶ予め定められた水準を下回らないことを目標に運用が行われましたが、基準価額が22営業日連続してストップラインを上回る予め定められた水準(償還検討ラインと呼ぶ)以下となった場合には繰上償還を行うことが定められており、実際に、基準価額が22営業日連続で償還検討ライン以下となったために繰上償還が決定されました。
また、「スパークス・日本アジア厳選株ファンド・ヘッジ型(ダイワ投資一任専用)」については、ファンドの全ての受益権総口数を保有する受益者から全口解約の請求があり、信託約款に規定する「やむを得ない事情が発生した場合」に該当したことで繰上償還となりました。
さらに、「SBI-PIMCO ジャパン・ベターインカム・ファンド」は、ファンド・オブ・ファンズ形式で運用されていましたが、主要投資対象である投資信託証券「ピムコ・ジャパンクレジット・ファンド(適格機関投資家専用)」の繰上償還が決定されたことで、このファンドも繰上償還されました。
繰上償還の影響
投資家にとって投資信託の繰上償還は投資リスクの一つです。
保有している投資信託が繰上償還になった場合、その時点で評価損失があれば、償還時点で投資家の損失は確定されることになります。基準価額が回復することを期待して保有していた投資家も損失を確定し、現金化せざるをえません。一方、償還時に利益が出ていた場合は、利益を確定して通常は税金を支払うことになります。
時間をかけて選んだ投資信託が、想定していた運用期間途中で運用終了されてしまうため、老後や子供の教育資金を目的とした資金計画をやり直す必要が生じてしまいます。
そのような事態に直面しないために繰上償還はできるだけ回避したいものです。
この繰上償還リスクを回避するためには、投資信託を購入する前に、次の点を確認することがとても大切です。
- 運用残高(純資産総額)が十分大きいこと
- 運用残高が減少傾向にないこと
なお、投資信託協会のデータによると、ETFを除いた追加型株式投資信託(5431本)の1本当たりの平均残高は約191億円です(2023年11月現在)。一方で、純資産総額(残高)が500億円を超える投資信託は414本(2023年11月末現在)運用されています。少なくとも残高が平均以上あり、その残高が増加傾向にある投資信託を選択した方がよいでしょう。
1口当たり償還額
2023年11月に償還した投資信託の1口当り償還額(A)を見ると、40本中15本は設定時の基準価額である10,000円を下回る金額で償還しました。
1口当り償還額が最も低かったのは、三井住友DSアセットマネジメント株式会社の「米国小型株ツインα(毎月分配型)」で1口当り償還額は3,569.11円でした。同ファンドは2013年11月に設定され、今年11月に満期償還を迎えました。
一方で、1口当り償還額が最も高かったのは、野村アセットマネジメントの「野村通貨選択日本株投信(インドルピーコース)年2回決算型」で、1口当り償還額は48,342.02円でした。同ファンドは2013年6月に設定され、今年11月に満期償還を迎えました。
1口当たり償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額
1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額(トータル・リターン)で見ると、この合計額(A+B)が10,000円を下回ったファンドが7本ありました。これらのファンドを設定当初に購入した投資家は損失を被ったことになります。
1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額が最も低かったのは、スパークス・アセット・マネジメントの「スパークス・日本アジア厳選株ファンド・ヘッジ型(ダイワ投資一任専用)」で、合計額は8,010.04円(1口当り償還額8,010.04円+分配金0円)でした。前述の通り、同ファンドは、ファンドの全ての受益権総口数を保有する受益者から全口解約の請求があり、信託約款に規定する「やむを得ない事情が発生した場合」に該当したことで繰上償還されました。
一方、この合計額が最も高かったのも、野村アセットマネジメントの「野村通貨選択日本株投信(インドルピーコース)年2回決算型」で、合計額は48,542.02円(1口当り償還額48,342.02円+分配金200円)でした。
2023年11月に償還した追加型株式投資信託の一覧
運用会社 | ファンド名 | 設定日 | 償還時純資産 総額 (百万円) |
1口当り 償還額 (A) (円) |
期中 分配金 (B) (円) |
合計 (A) + (B) (円) |
満期/繰上 |
野村 | グローバル・ハイブリッド証券ファンド(為替ヘッジあり)2020-11(限定追加型) | 2020.11.9 | 2,063 | 9,551.34 | 5.00 | 9,556.34 | 満期 |
野村 | ストップライン付き野村ワールドボンド・ファンド | 2018.8.17 | 1,865 | 9,574.24 | 0.00 | 9,574.24 | 繰上 |
野村 | USバンクローンファンド・為替ヘッジあり(毎月) | 2014.5.13 | 161 | 7,200.33 | 2,200.00 | 9,400.33 | 満期 |
野村 | USバンクローンファンド・為替ヘッジなし(毎月) | 2014.5.13 | 1,152 | 10,740.29 | 3,825.00 | 14,565.29 | 満期 |
野村 | USバンクローンファンド・為替ヘッジあり(年2回) | 2014.5.13 | 33 | 9,282.74 | 30.00 | 9,312.74 | 満期 |
野村 | USバンクローンファンド・為替ヘッジなし(年2回) | 2014.5.13 | 130 | 15,771.84 | 160.00 | 15,931.84 | 満期 |
野村 | 野村通貨選択日本株投信(ユーロ)毎月 | 2013.6.27 | 2 | 28,791.42 | 1,230.00 | 30,021.42 | 満期 |
野村 | 野村通貨選択日本株投信(トルコリラ)毎月 | 2013.6.27 | 68 | 7,042.26 | 5,930.00 | 12,972.26 | 満期 |
野村 | 野村通貨選択日本株投信(中国元)毎月 | 2013.6.27 | 96 | 33,188.38 | 4,920.00 | 38,108.38 | 満期 |
野村 | 野村通貨選択日本株投信(インドネシアルピア)毎月 | 2013.6.27 | 91 | 33,331.84 | 4,920.00 | 38,251.84 | 満期 |
野村 | 野村通貨選択日本株投信(インドルピーコース)毎月 | 2013.6.27 | 500 | 30,175.91 | 7,380.00 | 37,555.91 | 満期 |
野村 | 野村通貨選択日本株投信(ユーロ)年2回 | 2013.6.27 | 11 | 28,461.19 | 200.00 | 28,661.19 | 満期 |
野村 | 野村通貨選択日本株投信(トルコリラ)年2回 | 2013.6.27 | 22 | 13,756.11 | 180.00 | 13,936.11 | 満期 |
野村 | 野村通貨選択日本株投信(中国元コ)年2回 | 2013.6.27 | 20 | 44,135.89 | 200.00 | 44,335.89 | 満期 |
野村 | 野村通貨選択日本株投信(インドネシアルピア)年2回 | 2013.6.27 | 44 | 44,380.08 | 190.00 | 44,570.08 | 満期 |
野村 | 野村通貨選択日本株投信(インドルピー)年2回 | 2013.6.27 | 174 | 48,342.02 | 200.00 | 48,542.02 | 満期 |
大和アセットマネジメント株式会社 | ダイワ・バランス3資産(外債・海外リート・好配当日本株) | 2005.10.3 | 208 | 11,371.45 | 7,380.00 | 18,751.45 | 繰上 |
シュローダー | シュローダー・エマージング中小型株式ファンド | 2020.2.7 | 6 | 15,345.03 | 0.00 | 15,345.03 | 繰上 |
アライアンス | AB米国不動産好利回り債券ファンド(為替ヘッジなし) | 2018.11.30 | 6 | 14,474.35 | 0.00 | 14,474.35 | 満期 |
三菱UFJ | ユ-ロ・ソブリン・オ-プン | 1998.7.31 | 928 | 5,454.51 | 7,675.00 | 13,129.51 | 繰上 |
ピクテ | ピクテ・ニッポン・グロース・ファンド | 1999.5.28 | 431 | 13,941.98 | 4,980.00 | 18,921.98 | 繰上 |
HSBC | HSBC中国人民元債券オープン(毎月決算型) | 2019.5.30 | 41 | 12,075.04 | 1,000.00 | 13,075.04 | 繰上 |
HSBC | HSBC中国人民元債券オープン(年2回) | 2019.5.30 | 67 | 13,209.62 | 0.00 | 13,209.62 | 繰上 |
HSBC | HSBC ニューフロンティア株式オープン | 2013.12.12 | 642 | 18,972.85 | 2,000.00 | 20,972.85 | 満期 |
アムンディ | りそな・JPX日経400オープン | 2014.1.22 | 3,055 | 21,014.33 | 0.00 | 21,014.33 | 満期 |
三井住友DS | 三井住友・NYDJインデックスファンド(為替ヘッジ型) | 2014.1.6 | 1,240 | 19,365.99 | 0.00 | 19,365.99 | 満期 |
三井住友DS | 米国小型株ツインα(毎月) | 2013.11.25 | 3,565 | 3,569.11 | 9,510.00 | 13,079.11 | 満期 |
三井住友DS | 米国ハイ・インカムBDCファンド(毎月) | 2013.11.29 | 1,339 | 8,748.79 | 6,940.00 | 15,688.79 | 満期 |
三井住友DS | 米国ハイ・インカムBDCファンド(年1回) | 2013.11.29 | 251 | 21,198.63 | 0.00 | 21,198.63 | 満期 |
スパークス | スパークス・日本アジア厳選株ファンド・ヘッジ型(ダイワ投資一任専用) | 2021.10.6 | 1 | 8,010.04 | 0.00 | 8,010.04 | 繰上 |
SBIアセット | SBI地方創生・世界高配当株式ファンド(為替ヘッジあり)<資産成長> | 2018.12.17 | 83 | 10,368.06 | 0.00 | 10,368.06 | 繰上 |
SBIアセット | SBI地方創生・世界高配当株式ファンド(為替ヘッジあり)<年3%定率払出し> | 2018.12.17 | 35 | 8,656.59 | 1,403.00 | 10,059.59 | 繰上 |
SBIアセット | SBI地方創生・世界高配当株式ファンド(為替ヘッジあり)<年5%定率払出し> | 2018.12.17 | 68 | 8,214.36 | 2,286.00 | 10,500.36 | 繰上 |
SBIアセット | SBI地方創生・世界高配当株式ファンド(為替ヘッジあり)<年7%定率払出し> | 2018.12.17 | 151 | 7,664.48 | 3,083.00 | 10,747.48 | 繰上 |
SBIアセット | SBI-PIMCO ジャパン・ベターインカム・ファンド | 2016.6.30 | 1,192 | 8,795.27 | 200.00 | 8,995.27 | 繰上 |
楽天 | 楽天・ビッグデータ日本株ファンド | 2019.4.22 | 62 | 10,243.03 | 0.00 | 10,243.03 | 繰上 |
あおぞら | あおぞら・先進国中短期公社債ファンド(為替ヘッジあり) | 2016.7.29 | 298 | 8,904.49 | 140.00 | 9,044.49 | 繰上 |
あおぞら | あおぞら・先進国バランス・ファンド(為替ヘッジあり) | 2016.7.29 | 110 | 9,813.50 | 370.00 | 10,183.50 | 繰上 |
あおぞら | あおぞら・グローバル・バランス・ファンド(部分為替ヘッジあり) | 2016.7.29 | 104 | 13,178.79 | 1,220.00 | 14,398.79 | 繰上 |
あおぞら | あおぞら・新グローバル分散ファンド(限定追加型)2020-10 | 2020.10.30 | 240 | 11,430.23 | 0.00 | 11,430.23 | 繰上 |
(データ等出所:投資信託協会、EDINET、各ファンドの有価証券届出書・臨時報告書等)