2月は20本の追加型株式投資信託が償還、このうち14本が繰上償還
2024年2月に20本の追加型の株式投資信託が償還しました。償還とは投資信託が運用を終了することをいいます。
この20本のうち満期償還を迎えたのは4本だけで、2本は基準価額が一定の水準を達成したら償還するという条件を満たしての償還、そして残りの14本はファンドが設定された時点で定められていた信託期間(運用期間)を満了せずに、途中で運用を終了した繰上償還でした。
繰上償還の理由
繰上償還の理由を見ると、「国際のETF VIX短期先物指数」を除く13本のうち11本は残高の減少により商品性を維持することや効率的な運用を行うことが困難な状況になったことが理由でした。1本は、受益者が一人であり、その受益者が全口数を換金したい意向を示したため、残り1本は、2023年4月に自己設定を行い、販売会社および受益者の獲得に努めたものの、獲得できず、今後の販売見通しもたたないという理由でした。
「国際のETF VIX短期先物指数」については、同ETFは市場のボラティリティが低い状況においては徐々に価値が減少していく特性があり、受益権の併合を実施した後も基準価額が低水準となり、運用会社が今後も提供し続けることで将来的に投資家の資産を減価させてしまう可能性を考慮し、「受益者のため有利であると認める場合、またはやむを得ない事情が発生した場合」に該当すると判断したために繰上償還されました。
投資信託の運用残高の減少は繰上償還の最も多い理由であり、投資家にとっては大きな投資リスクの一つといえます。
繰上償還の投資家への影響
繰上償還は、投資家にとって大きな投資リスクです。
保有している投資信託が繰上償還になった場合、その時点で評価損失があれば、償還時点で投資家の損失は確定されます。将来基準価額が回復することを期待して保有していた投資家も損失を確定し、現金化せざるをえません。一方、繰上償還時に利益が出ていた場合は、利益を確定して通常は税金を支払うことになります。
時間をかけて選んだ投資信託が、想定していた運用期間の途中で運用終了されてしまうため、老後や子供の教育資金を目的とした資金計画をやり直す必要が生じてしまいます。
そのような事態に直面しないために繰上償還はできるだけ回避したいものです。
この繰上償還リスクを回避するためには、投資信託を購入する前に、次の点を確認することがとても大切です。
- 運用残高(純資産総額)が十分大きいこと
- 運用残高が減少傾向にないこと
なお、投資信託協会のデータによると、ETFを除いた追加型株式投資信託(5,452本)の1本当たりの平均残高は約222億円です(2024年3月現在)。一方で、純資産総額(残高)が500億円を超える投資信託は400本以上(2024年2月末現在)運用されています。残高が1兆円を超えるファンドも9本存在しています(2024年2月末現在)。残高が少なくとも平均以上あり、その残高が増加傾向にある投資信託を選択した方がよいでしょう。
1口当たり償還額
2024年2月に償還した投資信託の1口当り償還額(A)を見ると、ETFを除く19本中5本は設定時の基準価額である10,000円を下回る金額で償還しました。
1口当り償還額が最も低かったのは、マニュライフ・インベストメント・マネジメント株式会社の「マニュライフ・カナダ・リート・ファンド Aコース(為替ヘッジあり・毎月)」で1口当り償還額は8,353.22円でした。同ファンドは2016年11月に設定され、2024年2月に残高の減少を理由に繰上償還されました。
一方で、1口当り償還額が最も高かったのは、アライアンス・バーンスタインの「アライアンス・バーンスタイン・日本プレミア・バリュー株投信」で、1口当り償還額は34,735.4円でした。同ファンドは2009年2月に設定され、2024年1月に満期償還を迎えました。
1口当たり償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額
1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額(トータル・リターン)で見ると、この合計額(A+B)が10,000円を下回ったファンドが3本ありました。これらのファンドを設定当初に購入した投資家は損失を被ったことになります。
1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額が最も低かったのは、ブラックロック・ジャパンの「ブラックロック・イノベーター株式・ヘッジファンド(限定為替ヘッジあり)」で、合計額は9,218.88円(1口当り償還額9,218.88円+分配金0円)でした。同ファンドは、2022年1月に設定されましたが、受益者が一人であり、その受益者が全口数を換金したい意向を示したことで繰上償還されました。
一方、この合計額が最も高かったのも、アライアンス・バーンスタインの「アライアンス・バーンスタイン・日本プレミア・バリュー株投信」で、合計額は39,145.4円(1口当り償還額34,735.4円+分配金4,410円)でした。
2024年2月に償還した追加型株式投資信託の一覧
運用会社 | ファンド名 | 設定日 | 償還時純資産 総額 (百万円) |
1口当り 償還額 (A) (円) |
期中 分配金 (B) (円) |
合計 (A) + (B) (円) |
満期/繰上 |
日興 | 時間分散型バランスファンド(安定指向)2016-11 | 2016.11.21 | 105 | 13,021.00 | 0.00 | 13,021.00 | 条件 |
SBI岡三ア | イオングループ・ファンド | 2014.2.27 | 909 | 17,359.07 | 0.00 | 17,359.07 | 満期 |
T&D | ROE日本株ファンド | 2014.3.28 | 257 | 11,732.03 | 8,500.00 | 20,232.03 | 満期 |
ニッセイ | 限定追加型・繰上償還条項付 ニッセイ世界リカバリー株式厳選ファンド(為替ヘッジなし) | 2022.11.28 | 6,685 | 14,917.98 | 0.00 | 14,917.98 | 条件 |
ゴールドマン | GSビッグデータ・ストラテジー(外国株式) | 2017.12.19 | 1,282 | 18,752.08 | 0.00 | 18,752.08 | 繰上 |
ゴールドマン | GSグローバル・リアルアセット・ファンド(毎月決算・分配条件提示型・為替ヘッジなし) | 2023.4.21 | 105 | 10,002.17 | 600.00 | 10,602.17 | 繰上 |
アライアンス | アライアンス・バーンスタイン・日本プレミア・バリュー株投信 | 2009.2.24 | 288 | 34,735.40 | 4,410.00 | 39,145.40 | 満期 |
三菱UFJ | 国際のETF VIX短期先物指数 | 2010.12.15 | 2,404 | 389.99 | 51.00 | 440.99 | 繰上 |
One | DIAMバランス・インカム・オープン(毎月分配型) | 2006.9.28 | 144 | 9,923.26 | 4,330.00 | 14,253.26 | 繰上 |
ブラックロック | ブラックロック・イノベーター株式・ヘッジファンド(限定為替ヘッジあり) | 2022.1.31 | 9 | 9,218.88 | 0.00 | 9,218.88 | 繰上 |
ブラックロック | ブラックロック・ワールド・ボンド・オープン(為替ヘッジなし) | 1998.7.1 | 206 | 13,122.12 | 1,510.00 | 14,632.12 | 繰上 |
ブラックロック | ブラックロック・ワールドボンド・オープン(為替ヘッジあり) | 1998.7.1 | 143 | 8,721.89 | 915.00 | 9,636.89 | 繰上 |
アムンディ | りそな・TOPIXオープン | 2004.11.19 | 940 | 29,420.82 | 0.00 | 29,420.82 | 繰上 |
三井住友DS | ETFバランス・ファンド | 2013.8.28 | 591 | 10,529.83 | 0.00 | 10,529.83 | 繰上 |
三井住友DS | 世界小型株厳選ファンド | 2019.2.1 | 767 | 13,427.09 | 1,950.00 | 15,377.09 | 繰上 |
三井住友DS | 三井住友・JPX日経400オープン | 2014.2.14 | 1,078 | 25,000.52 | 0.00 | 25,000.52 | 満期 |
マニュライフ | マニュライフ・カナダ・リート・ファンド Aコース(為替ヘッジあり・毎月) | 2016.11.18 | 34 | 8,353.22 | 1,680.00 | 10,033.22 | 繰上 |
マニュライフ | マニュライフ・カナダ・リート・ファンド Bコース(為替ヘッジなし・毎月) | 2016.11.18 | 80 | 11,145.15 | 3,360.00 | 14,505.15 | 繰上 |
マニュライフ | マニュライフ・カナダ・リート・ファンド Cコース(為替ヘッジあり・年2回) | 2016.11.18 | 8 | 9,692.37 | 0.00 | 9,692.37 | 繰上 |
マニュライフ・ | マニュライフ・カナダ・リート・ファンド Dコース(為替ヘッジなし・年2回) | 2016.11.18 | 15 | 15,441.88 | 0.00 | 15,441.88 | 繰上 |
(データ等出所:投資信託協会、EDINET、各ファンドの有価証券届出書・臨時報告書)