ラッセル・インベストメント株式会社は、国内機関投資家向け運用商品のベンチマーク利用動向に関する調査を実施し、その結果を公表した。今回の調査は、2006年に日本国内で初めて行われた第1回調査に続く、第2回目となる。
ラッセル・インベストメントによると、今回の第2回調査では、国内株式に加えて外国株式についても調査の対象とされた。MSCI が昨年から今年5月末にかけて行った大幅な模様替えを契機に、他のインデックス・ベンダーとの競争が加熱する中、今後動きが出てくるかも知れない外国株式のベンチマーク再選定を先取りして、まずは現状を把握しておくことが調査を開始した狙い。また、前回2006年調査では海外に所在する運用機関にも回答を依頼したが、今回は国内に所在する運用機関のみを依頼先とした。
調査内容は、国内機関投資家向けに運用を行っている国内株式、外国株式についての2008年3月末および2007年3月末における各ベンチマーク別の運用資産額。ただし公募投信およびETFは除き、年金が行う自家運用の資産は含む。回答にあたっては、パッシブ運用とアクティブ運用に分けて運用資産額の記入を依頼。調査結果の概要は以下の通り。
【全体概要】
- 今回の調査における回答運用資産額は、国内株式が約41兆4千億円、外国株式が約28兆9千億円で、両者の比率は59:41 であった。この比率はわが国の企業年全体の比率である60:40(2007年3月末、企業年金連合会調べ)とほぼ等しい。
- 国内株式の内訳は、パッシブ運用が約19兆2千億円、アクティブ運用が約22兆2千億円で、パッシブ対アクティブ比率は46:54 となった。これに対して外国株式の内訳は、パッシブ運用が約16兆8千億円、アクティブ運用が約12兆1千億円であり、両者の比率は58:42 と、国内株式と比較してパッシブ運用の比率が高めになった。
- 企業年金の資産運用では、国内株式と比べて、外国株式の運用においてアクティブ運用機関がベンチマークを上回るパフォーマンスを獲得するのに苦心しており、そうした状況が今回の調査の回答運用資産額に影響している可能性がある。
【国内株式】
依然としてTOPIX への集中度が高いが、今回の調査から国内株式のベンチマーク動向について、次のようなことも観察された。
- 特にアクティブ運用のベンチマークとしてMSCI JAPAN GROWTH、東証二部総合、FTSE GWA、ラッセル野村中小型グロースといったインデックスが新たに登場しており、ベンチマークの多様化の兆候は確認された。
- 「ベンチマークなし」が増加し、約1兆2千億円と運用資産額としては、第3位の位置にある。2005年からの推移でみると、「ベンチマークなし」の構成割合はむしろ低下傾向にあったが、2008年に大きく伸びる結果となっている。昨年の市場変調を背景としたオルタナティブ投資の隆盛を反映した動きとみることもできる。
- ただし、スタイル・ベンチマーク全体の比率は4%強の水準からほとんど変化しておらず、スタイル運用が進んでいるとは断言し難い。
【外国株式】
MSCI KOKUSAI の比率が高く、特にパッシブ運用においては、95%超の構成割合を占め、ほぼ寡占の状況にある。ただし、外国株式ならではの地域特化という切り口が加わり、ベンチマークの利用状況は以下のとおり、非常に多様化している。
- ベンチマークの顔ぶれは、35種類以上と国内株式以上に多彩なもの。2007年との比較においても、FTSE World Developed、Russell 3000○R Value、S&P/Citigroup BMI Emerging Markets と3種類の新しいインデックスが採用されている。
- 地域特化は、全体の8.74%で前年比から約0.5%減だが、地域別にみるとエマージングを対象としたベンチマークでの運用資産額は伸びている。
- 外国株式においては、世界を対象とするか、地域特化かという2軸となっており、スタイル・ベンチマークの採用は、ごく限られたものに留まっている。
ラッセル・インベストメントについて
ラッセル・インベストメントは、現在世界47カ国において、年金、金融機関および個人投資家など様々な投資家の皆様を対象に総合的な資産運用ソリューションを提供している。グローバルに行う運用会社調査をもとに、資産運用、オルタナティブ投資、確定拠出年金サービス、資産運用コンサルティング、売買執行管理、株式インデックスの開発など幅広く業務を行っており、現在同グループが提供するファンドの運用資産総額は2008年3月末現在、約21兆円。グループの創立は1936 年。米国ワシントン州タコマを本拠地とし、米国最大手の個人生命保険会社であるノースウェスタン・ミューチュアル・ライフ・インシュアランスの子会社。日本においては1986年に東京オフィスを開設。現在、ラッセル・インベストメント株式会社を通じて各種サービスを提供している。