ラッセル・インベストメント、『運用機関の投資展望調査』の結果を発表-インフレ圧力や景気後退懸念がくすぶるものの株式に対する強気姿勢は変わらず


ラッセル・インベストメントは、前四半期に引き続き、日本および海外における日本株の運用機関を対象に、『運用機関の投資展望調査』を実施した。

ラッセル・インベストメントは、調査結果の概要を次のように述べている。

2008年6月度『運用機関の投資展望調査(調査期間:5/26~5/30)』の結果、今回調査にご協力頂いた運用機関の多くが引き続き株式に強気、債券に弱気の見通しを持っていることが確認されました。

調査対象10資産のうち上位4資産を株式が占め、日本株式(全般)が引き続き強気のトップ、日本債券に対する弱気の割合が最も高くなっています。但し、調査開始以来の長期トレンドを見ると、株式を強気と見る運用機関の割合は低下傾向にあります。一方、弱気見通しについては、日本株式が前回の14%から今回9%に低下した一方で、日本国債が51%から60%に、外国債券も34%から44%に増加するなど、債券を株式対比弱気に見る運用機関の割合が高まっています。時系列的には株式への強気度合が低下しているものの、 債券対比では強気を維持していると考えられます。

日本株式の割安度合いについては、日本株式市場の水準を割安だと考える運用機関の割合が52%と前回の調査時点の76%から低下した一方で、適正だと考える運用機関の割合は、前回の17%から一気に41%まで上昇しました。運用機関のセンチメントに変化が起きており、これは最近の日本株式の上昇と2008年の企業収益の下方収益観測が高まっていることが背景にあると思われます。

セクター別の見通しでは、エネルギーセクターに対し、依然52%の運用機関が強気に見ており、強気見通しの1位を堅持しています。

また、これまで出遅れ感のあった情報技術セクターに対しても、強気見通しが50%に達し、期待感の高まりが見て取れます。金融セクターについては、バリュエーション的に魅力度が高まったとしてアンダーウェイト幅を縮小する運用機関も出てきており、今回の調査においても、弱気の割合が前回の32%から19%にまで低下しました。

また、今回の調査で、今後12ヶ月で有望な投資テーマをお聞きしたところ、総回答数101のうち、37回答が、地球温暖化やエネルギーなどの地球規模の問題に関連したテーマをあげています。食料、水資源など、環境問題全般を合わせますと、実に半数に及ぶ52回答がこれらを今後市場で重要性を増すテーマであると回答しているのは興味深いことです。今後エネルギー価格が株価形成に重要な役割を果たすと考える運用機関が多い一方で、M&A については、日本の株価に与える影響はそれほど大きくないと見ているようです。

ラッセル・インベストメントのチーフ・インベストメント・オフィサージャパン/アジア・パシフィック、クリストフ・キャスパー氏は、「日本株式市場については、3月時点で昨年来高値からの下落率が3割超に達していましたが、2008年度に入ってからの上昇率は13.5%と世界で上位となるなど、ここへ来て急速に持ち直してきています。前回の調査では、多くの運用機関が今後12ヶ月間で日本株式市場の上昇トレンドへの回帰が期待できると見ていましたが、すでにその兆候が現れ始めていると言えそうです」と述べている。

また、キャスパー氏はエネルギー価格について、「WTI原油先物価格が今回の調査直前の5月中旬に1バレル135ドルを突破して史上最高値を更新し、ピークアウトの時期が憶測されるようになりましたが、需給関係等からここしばらくの原油価格の高止まりを予想する機関投資家も少なくなく、エネルギー関連株への一段の上昇期待は薄れていないようです」と述べている。

ラッセル『運用機関の投資展望調査』について

ラッセル・インベストメントでは、2004年より米国をはじめ諸外国の運用機関の協力のもと、四半期毎に『運用機関の投資展望調査』を実施している。海外での評価を踏まえ、2006年3月より日本でも調査を開始した。同調査は、四半期に一度、各運用機関の投資意思決定を行っている運用担当者に、資産クラス及びセクターごとの見通しや今後の投資戦略に影響を及ぼすと思われるトピック等について質問している。データの分析およびレポートの作成にあたっては、同社のインベストメント・マネージメント&リサーチ部が担当し、各期のデータを吟味し、集められた回答の定量的な分析にとどまらず定性的な分析も行う。

今回の調査期間は、2008年5月26日~5月30日。この期間に回答した運用機関は計53社で、日本株式を運用対象とする運用機関が大半を占めており、また、日本に拠点を持たない海外の運用機関も含まれる。