投資信託の運用方法には、大きく分けると「アクティブファンド」と「インデックスファンド」があります。
アクティブファンドは、株価指数などの市場平均を上回る投資成果を目指すファンドです。一方、インデックスファンドは、特定の指数に連動する投資成果を目指すファンドです。
アクティブファンド #
投資信託では、ファンドの運用を担当する専門職をファンドマネージャーと呼びますが、アクティブファンドでは、このファンドマネージャーが業績見通し、市場動向、景気などを分析・予測しながら各投資信託に組み入れる銘柄やその比率を決定し、ファンドが基準(ベンチマーク)としている市場平均を出来るだけ上回るように努めて運用します。アクティブファンドは、アクティブ型ファンド、アクティブ運用ファンドとも呼ばれています。
例えば、東証株価指数をベンチマークとしているアクティブファンドは、東証株価指数の動きを上回る成果を達成することを目指しますし、S&P500指数をベンチマークとしているアクティブファンドは、S&P500指数を上回る投資成果を目指します。
インデックスファンド #
一方、インデックスファンドは、市場平均の動きに連動することを目指すファンドです。インデックス型ファンド、インデックス運用ファンドとも呼ばれています。ファンドの基準価額がベンチマークに連動するように設計・運用されており、ファンドマネージャーの判断が銘柄選択や配分に影響を与えることはありません。
例えば、東証株価指数をベンチマークとしているインデックスファンドは、東証株価指数の値動きに連動する投資成果を目指しますし、S&P500指数をベンチマークとしているインデックスファンドは、S&P500指数に連動するように設計されています。
つまり、ベンチマークへの連動を目指すのがインデックスファンド、ベンチマークを上回る投資成果を目指すのがアクティブファンドということです。
インデックスファンドの注意点 #
インデックスファンドは、運用目標が指数に連動することと単純明快なため、相場上昇時には非常に有効な投資手段となりますが、反対に相場が軟調となった場合には、ファンドマネージャーが株式組み入れ比率を下げて損失を回避するというような術が用意されていないため、基準価額は相場の下落にあわせてストレートに下がることを覚えておいて下さい。
インデックスファンドの台頭 #
NISA(少額投資非課税制度)において、低コストのインデックスファンドが注目されるようになり、中でも三菱UFJアセットマネジメントが運用している「eMAXIS Slim」シリーズのインデックスファンドへの大幅な資金流入が継続しています。中には純資産総額がすでに1兆円を超えているファンドもあります。それだけ、個人投資家に低コストのインデックスファンドの魅力が浸透してきたということです。
勝てるファンドを見つけるのは難しい #
同じ運用であるならば、インデックスファンドで指数と同じ運用成績を目指すよりも、アクティブファンドで指数を上回る運用成績を目指す方がよいはずだと思う人も多いはずです。でも、そうとも言えないのが投資の世界です。次の「勝てるファンドをみつけるのは難しい」のです。
インデックスファンドのようにベンチマークに連動するのではなく、ベンチマークを上回ることを目指す、つまり、できるだけファンドが値上りすることを目指す方がよいではないのか、という疑問を持つ人も多いでしょう。
同じ投資信託であれば、インデックスファンドで指数と同程度の運用成績を達成するよりも、アクティブファンドでベンチマークを上回る投資成果を期待した方がよいと考えるのは当然かもしれません。
しかし、そうは上手くいかないのが投資の世界です。
アクティブ運用のファンドは、より良い成績を目指すために、その分多くの調査や分析に必要となるアナリストなどのスタッフを含めたコストが必要となります。より手間暇かかった運用を行います。そのため、インデックスファンドに比べて投資家が負担する費用が大きくなります。コストの大きさは、ファンドの運用成績の押し下げ要因となります。しかも、投資家はそのコストを毎年毎年負担し続けることになります。この投資家が負担するコストを日本では信託報酬と呼びます。
また、ベンチマークを上回る投資成果を目指すということは、それだけリスクをとっていることになります。リスクが大きいということは、その分損失の可能性も大きくなります。ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンは投資の原理原則なのです。したがって、アクティブファンドの運用成績がインデックスファンドを下回ることもよくあります。
アクティブファンドがベンチマークを上回る投資成果を目指していても、実際にベンチマークを上回る投資成果が得られるとは限りません。少し古いデータになりますが、ペンシルベニア大学大学院のジェレミー・シーゲル教授が、1971年1月から2006年12月の米国の株式投資信託(ミューチュアルファンド)の全ファンドの平均利回りをベンチマークと比較した結果を著書「株式投資(Stocks for the Long Run)」の中で示していますので紹介します。
期間 | 全ファンド | ウィルシャー5000指数 | S&P500株価指数 |
---|---|---|---|
1971-2006 | 10.49% | 11.55% | 11.53% |
1975-1983 | 18.83% | 17.94% | 15.74% |
1984-2006 | 10.80% | 12.26% | 12.77% |
ウィルシャー5000指数とS&P500は、米国を代表する株価指数です。全ファンドの平均利回りは1971年-2006年までの期間全体において、ウィルシャー5000指数とS&P500指数を下回っているのです。販売および解約手数料を引けば、投資家の取り分は更に低くなります。つまり、ベンチマークを上回る運用というのは、目論見書で謳っている程簡単ではないのです。
更に、その簡単ではない指数を上回るというタスクを実現してくれそうなファンドマネージャーを見つけることは、極めて困難なことです。しかも、ある一時期において運用成績がよいファンドマネージャーをみつけることができたとしても、それが継続するかどうかはわかりません。何十年にもわたり優れた運用成績を残してきたファンドやファンドマネージャーをみつけるのは非常に困難ですし、将来においてもその成績を維持できるファンドマネージャーをみつけるのは、ほとんど不可能かもしれません。将来のことは誰にもわからないのです。
そうであるなら、コストが低く、確実にベンチマークに連動する投資成果、つまり市場平均を達成するインデックスファンドに投資する方が投資家にとってはずっとメリットがあるのではないでしょうか。しかも、この数年は、インデックスファンドとファンドのコストに対する投資家の目が厳しくなってきていて、投資家が負担する信託報酬率も驚く程低下しています。
アクティブファンドとインデックスファンドの違いまとめ #
アクティブファンドとインデックスファンドは、投資信託の運用方法の2種類です。アクティブファンドは市場平均を上回る成果を目指し、ファンドマネージャーが銘柄選択や運用方針を積極的に決定しますが、コストが高くリスクも大きいことが特徴です。一方、インデックスファンドは特定の指数に連動する運用を目指し、低コストでシンプルな運用が可能ですが、相場下落時のリスク回避策はありません。近年、低コストのインデックスファンドが注目を集め、多くの投資家に支持されています。アクティブファンドで市場平均を上回る成果を得るのは難しく、インデックスファンドが投資家にとって効率的な選択肢とされています。