エマージング・ボンド・ファンド #
新興国の債券に的を絞って投資するファンドを一般に「エマージング・ボンド・ファンド(emerging bond fund)」と呼びます。これは、新興国のことを英語でエマージングカントリー(emerging countries)、新興国市場のことをエマージングマーケット(emerging markets)と呼ぶためです。
エマージング・ボンド・ファンドには、アジア、東欧・ロシア、アフリカなど特定の新興国や新興諸国地域の債券に的を絞って投資するファンドと、世界中の新興国の債券に分散投資するファンドがあります。後者は一般にグローバル・エマージング・ボンド・ファンド(global emerging bond fund)と呼ばれています。
また、エマージング・ソブリン・ファンドと呼ばれるファンドは、新興国の国債だけを投資対象としているファンドです。これは国債のことをソブリン・ボンドと呼ぶためです。ファンドがどの地域のどのような債券を投資対象としているかは、各ファンドの目論見書に説明されています。
世界の新興国
中南米 | アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、メキシコ、ペルー、ウルグアイ、ベネズエラなど |
欧州 | クロアチア、キプロス、ハンガリー、ポーランド、ロシア、スロバキア、トルコなど |
アジア | 中国、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、韓国、台湾、タイなど |
アフリカ・中東 | イスラエル、カタール、南アフリカ、チュニジア、アラブ首長国連邦など |
エマージング・ボンド・ファンドのリスク #
エマージングボンドファンド(新興市場債券ファンド)は、主に新興国の政府や企業が発行する債券に投資するファンドです。これらのファンドは高い利回りを提供する可能性がある一方で、いくつかのリスクが伴います。以下は、エマージング・ボンド・ファンドに関連する主なリスクです。
1. 信用リスク(デフォルトリスク) #
- 新興国の政府や企業の財務状況が悪化し、元本や利息の支払いが滞るリスクです。新興市場は信用格付けが低い場合が多く、デフォルトのリスクが先進国の債券よりも高いことが一般的です。
2. 為替リスク #
- 新興市場債券は、しばしばその国の通貨で発行されます。投資家が異なる通貨で投資している場合、為替レートの変動が投資のリターンに影響を与える可能性があります。特に新興国の通貨は、政治的および経済的な要因によって変動しやすいため、為替リスクが高まります。
3. 金利リスク #
- 債券の価値は金利の動きに敏感です。一般的に、金利が上昇すると債券の価格は下落し、逆もまた同様です。特に新興市場では、金利の変動が予測しにくく、利回りの上昇が債券価格の下落を引き起こす可能性があります。
4. 流動性リスク #
- 新興市場債券は、先進国の債券に比べて市場規模が小さく、取引が活発でないことが多いため、流動性リスクが高くなります。市場が不安定な時期には、売却が困難になることがあり、価格が急激に下落する可能性があります。
5. 政治リスク #
- 新興国は政治的不安定性が高いことが多く、政変や政策変更、社会的な不安などが債券の価値に直接的な影響を与えることがあります。政府の交代や政策変更によって、債務返済能力が低下するリスクも考慮する必要があります。
6. 経済リスク #
- 新興国の経済は先進国に比べて変動が大きく、成長の停滞や景気後退が債券の返済能力に影響を及ぼすことがあります。例えば、原材料価格の変動や輸出の減少が国の財政に影響を与え、デフォルトリスクを高めることがあります。
7. インフレーションリスク #
- 新興国ではインフレーションが急激に上昇することがあり、これが債券の実質的な価値を減少させる可能性があります。インフレが高いと、投資家が受け取る利息や元本の実質的な購買力が低下するため、実質リターンが減少するリスクがあります。
8. 法的・規制リスク #
- 新興市場では、法的な保護や規制の整備が十分でないことが多く、投資家の権利が侵害されるリスクがあります。また、投資国の規制変更や資本規制の強化により、資金の回収が困難になる場合があります。
結論 #
エマージング・ボンド・ファンドは、高い利回りを提供する一方で、上記のようなリスクが伴うため、慎重なリスク管理が必要です。自身のリスク許容度や投資目標に応じて、エマージング・ボンド・ファンドへの投資を検討することが重要です。ポートフォリオの一部として分散投資の一環で組み入れる場合でも、これらのリスクを理解し、適切なリスク管理策を講じることが求められます。