重要情報シート #
重要情報シートとは、金融機関が提供する金融商品やサービスに関する重要な情報を簡潔に記載したシートのことです。顧客にわかりやすい情報を提供することや異なる商品やサービスの比較を容易にすることを目的としています。投資信託についても提供されています。
金融庁は金融機関に対して「顧客本位の業務運営」を行うことを求めており、「顧客本位の業務運営に関する原則」を2017年3月に策定しました(2021年1月に改訂)。ほとんどの金融機関はこれを採択しています。この原則の一つに「重要な情報の分かりやすい提供」(原則5)が含まれており、重要情報シートはこれを実現する一つの手段であると捉えられています。
金融市場ワーキング・グループが作成した重要情報シート例によると、重要情報シートには、①金融商品・サービスを提供する「金融事業者」についてのものと②「個別の商品・サービス」についてのものが作成されています。投資信託については、販売業者・仲介業者が重要情報シートを作成・提供します。なお、2024年7月末現在、セゾン投信株式会社、レオス・キャピタルワークス、コモンズ投信などの直販を行っている運用会社では重要情報シートの提供をホームページ上で行っています。その他のファンドについても、オンライン証券のHPなどで提供されていますが、全てのファンドについて提供されているものでもありません。
金融事業者に関する重要情報シート #
金融商品・サービスを提供する金融事業者についての重要情報シートには、次のような内容が記載されます。
- 会社の基本情報
- 社名
- 登録番号加入協会
- ホームページアドレス
- 取扱商品・・・会社が顧客に提供している商品(預金、株式、保険、投資信託などの一覧表)
- 商品ラインナップの考え方・・・顧客に提供している商品選定の考え方や留意点などの説明。
- 苦情・相談窓口・・・当該事業者の顧客相談窓口や加入協会共通の相談窓口、金融庁の金融サービス利用者相談室の電話番号など。
<金融市場ワーキング・グループが作成した重要情報シート例>
投資信託についての重要情報シート #
金融事業者が提供する投資信託を個別商品・サービスについての重要情報シートには、次のような内容が記載されます。
- 商品の内容
- 金融商品の名称・種類
- 組成会社(運用会社)販売委託元金融商品の目的・機能商品組成に携わる事業者が想定する購入層
- パッケージ化の有無
- クーリング・オフの有無
- リスクと運用実績
- 損失が生じるリスクの内容
- 運用実績(過去1年間・5年間など)
- 費用
- 購入時に支払う手数料
- 継続中に支払う手数料
- 運用成果に応じた手数料
- 換金・解約の条件
- 償還期限
- 解約手数料について
- 解約ができないケースについての説明
- 事業者と顧客の利益相反について・・・想定される利益相反のケース(手数料、利害関係人、営業担当者の報酬体系など)についての説明
「商品組成に携わる事業者が想定する購入層」について #
重要情報シートに記載されている情報のほとんどは目論見書と重複していますが、この中の「商品組成に携わる事業者が想定する購入層」は目論見書には掲載されていない項目です。商品組成に携わる事業者とは、基本的には投資信託の運用会社のことです。この項目で、運用会社がどのような投資家を想定してファンドを作ったのかを確認し、自分がその想定対象者に該当するかを検討することも、投資判断に役立ちます。
多くの株式ファンドやバランス型ファンドにおいては、ファンドの商品組成に携わる事業者が想定する購入層には次のような記載が見られます。
- 元本割れリスクを許容する方
- 中長期での資産形成を目的とする方
また、債券ファンドでは、次のような記載が多く見られます。
- 中長期での資産形成を目的としている方
- 元本割れリスクを許容する方
- 分配金の仕組みを理解し、投資信託の運用を続けながら、分配金を定期的に受け取りたい方
一方で、ブルベア型のファンドでは次のような記載が見られます。
この商品は、日々の基準価額の値動きが株式市場全体の日々の値動きの概ね○倍程度となる投資成果を目指したい方で、同種の商品に対する知識や投資経験がある投資家を主に念頭において組成しています。
この商品は、中長期の投資には適しません。また、この商品は、大きく元本割れするリスクを許容でき、短期間の取引による売買差益の獲得を目的とする方に適しております。レバレッジの高い商品であり、初心者向けの商品ではありません。
重要情報シートまとめ #
重要情報シートは、金融機関が提供する商品やサービスについて、顧客に分かりやすく情報を伝えるために作成される資料です。投資信託などの個別商品や事業者情報に関して、リスク、費用、解約条件、対象顧客層などが簡潔に記載され、顧客の理解や商品の比較を促進します。特に目論見書にはない「想定される購入層」の記載が投資判断の参考になります。金融庁が推進する「顧客本位の業務運営」の一環として作成されています。