ソブリン債とは #
ソブリン債とは、政府および政府機関が発行する債券の総称です。また、世界銀行などの国際機関が発行する債券もソブリン債と呼ばれます。ソブリンとは英語の「sovereign」のことで、通常は「主権者、元首、君主、国王」を意味します。ソブリン債は英語で「sovereign bond」と言います。
ソブリン債:
異なる信用力 #
日本や米国政府が発行する債券も、新興諸国政府が発行する債券もソブリン債です。ですから、ソブリン債であるから全て安全な投資対象とは言えません。債券は国が発行するものですが、各国の信用力は異なります。
この信用力を評価したものが、格付機関による「信用格付け」です。信用格付は、発行体が財務債務を完全かつ期限通りに履行する能力についての、格付機関による評価です。
例えば、格付機関の一つである日本格付研究所の格付け(2024年9月5日現在)によると、米国と英国の長期債の格付は最も信用力の高い「AAA」(格付定義:債務履行の確実性が最も高い)であるのに対し、韓国は「AA」(格付定義:債務履行の確実性は非常に高い)、イタリアは「A」(格付定義:債務履行の確実性は高い)、トルコは「BB」(格付定義:債務履行に当面問題はないが、将来まで確実であるとは言えない)と異なっています。
ソブリン債の特徴 #
では、ソブリン債にはどのような特徴があるのでしょうか。特徴としては以下のような点が挙げられます。
- 発行主体が国家または政府機関
ソブリン債は国家(政府)またはその関連機関によって発行されます。発行者が国家であるため、民間企業が発行する債券よりも信用力が高いと考えられています。
- 信用リスクが国家の信用力に依存
ソブリン債の信用リスクは、発行国の財政状況や経済的安定性に依存します。信用力が高い国、例えばアメリカや日本、ドイツなどが発行する国債はリスクが低いとされますが、財政不安定な新興国などが発行するソブリン債は、デフォルト(債務不履行)のリスクが高まります。
- 通貨リスク
ソブリン債は、発行国の通貨建てで発行されることが一般的ですが、国際市場では外貨建てのソブリン債もあります。外貨建て債券は為替変動リスクが伴います。たとえば、米ドル建てのソブリン債を保有する場合、円安や円高の影響を受けることになります。
- 利率(クーポン)
ソブリン債の利率は発行国の金利政策や経済状況に左右されます。経済が安定した国の債券は一般的に利率が低い傾向にありますが、新興国のようにリスクの高い国のソブリン債の利率は高くなる傾向にあります。
- 市場での流動性
主要国が発行するソブリン債(例:米国債や日本国債)は流動性が高く、取引が活発です。これは、金融機関や政府間取引において重要な役割を果たしているためです。一方、新興国のソブリン債には流動性が低い場合があり、売買が容易ではないこともあり注意が必要です。
- 信用格付け(Credit Rating)
ソブリン債は、格付け機関(例:S&P、ムーディーズ、フィッチ)によって評価されます。これにより、投資家はその国の信用力を比較しやすくなります。信用格付けが高い国は低リスクとされ、格付けが低い国はリスクが高いと見なされます。
- デフォルトリスク
ソブリン債であっても、国家が財政的に困難に陥ると、債務不履行(デフォルト)するリスクがあります。歴史的には、アルゼンチン、ギリシャ、ベネズエラなどのソブリン債や政府機関債がデフォルトしています。
ソブリン債と投資信託 #
海外の債券に投資するタイプの投資信託の多くがソブリン債を投資対象としています。世界のソブリン債券に分散投資するタイプ、新興国のソブリン債に投資するタイプ、資源国のソブリン債に投資するタイプなど、投資対象地域はファンドにより異なります。
購入しようとしている投資信託の投資対象となっているソブリン債がどのような格付けの債券なのかをチェックすることも大切です。
ソブリン債を投資対象とするファンドの例(2024年9月4日現在)
ファンド名 | 純資産総額(百万円) |
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グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型) | 263,082 |
ワールド・ソブリンインカム《十二単衣》 | 46,920 |
エマージング・ソブリン・オープン(毎月決算型) | 20,832 |
グローバル・ソブリン・オープン(3ヵ月決算型) | 17,066 |
日興ピムコ・ハイインカムソブリンF毎月分配型(米ドル) | 14,404 |
エマージング・ソブリン・オープン(1年決算型) | 13,192 |
日興ピムコ・ハイインカムソブリンF毎月分配型(トルコリラ) | 11,008 |
ピクテ資源国ソブリンF(毎月分配型) | 10,605 |
日本や米国政府が発行する債券も、新興諸国政府が発行する債券もソブリン債です。ソブリン債であるから全て安全な投資対象とは言えません。債券は国が発行したものでも格付機関により「信用格付け」が行われていますので、購入しようとしている投資信託の投資対象となっている債券がどのような格付けの債券なのかをチェックすることも大切です。