信託期間の延長とは #
投資信託の信託期間の延長とは、予め決められている運用期間の終了日を先延ばしすることです。例えば、信託期間が2028年1月10日までのファンドが、信託期間を5年先の2033年1月10日までにするという措置です。
投資信託は設定された時に、運用をいつまで行うかという「信託期間」が定められています。特に信託期間を定めない投資信託では、目論見書には「無期限」と記載されています。かつては信託期間が無期限の投資信託が多かったのですが、最近は、多くの投資信託で10年程度の信託期間が設定されています。信託期間は投資信託により異なります。なお、NISAやiDeCoの対象ファンドの信託期間は無期限となっています。
この予め定められている信託期間を、運用途中において、延長することを信託期間の延長と呼びます。
信託期間延長の影響 #
信託期間の短縮(繰上償還)とは異なり、信託期間の延長は受益者にとって、特にマイナスの影響はありません。基準価額が元本を下回っている状況においては、信託終了すると損失が確定してしまいますので、信託期間が延長されることで損失を回復する機会が得られる可能性もあるので、投資家にとってはメリットがあるケースもあります(ただし、その反対に延長された期間に損失が拡大するリスクも存在します)。
運用会社が信託延長する理由 #
運用会社が信託期間を延長する理由には、いくつかあります。これまでの延長の動向を見ると、投資家からの需要があることがその理由に挙げられます。運用成績がよく、投資家から運用を継続して欲しいという需要があるファンドにおいて、運用会社は信託期間の延長が受益者の利益に資すると判断する傾向にあります。
一方、バブルが崩壊した1990年台前半には、この反対の理由から信託期間の延長が相次ぎました。当時、バブル経済が崩壊し、株式市場は低迷していました。そのため、日本の株式で運用していた投資信託の多くが元本割れ状態に陥り、元本割れした投資信託について、信託約款を変更して信託期間を延長する措置を講じました。
投資信託の約款変更 #
信託期間の延長は、信託約款の変更が必要とされています。ただ、信託期間終了までの間、解約が制限されていない投資信託に係る信託期間を延長する場合については、受益者の利益に資する投資信託約款の変更であると認められており、商品としての基本的な性格を変更させるものではないので、受益者による書面決議は必要なく、約款変更は運用会社の判断で行われます。
信託期間の延長まとめ #
投資信託の信託期間の延長は、あらかじめ定められた運用期間をさらに延長する措置です。これは、運用成績が良好で投資家から継続の要望がある場合や、元本割れの状態で損失回避を図るために行われることがあります。延長には約款変更が必要ですが、解約が自由なファンドでは、運用会社の判断で受益者の書面決議を求めずに実施できます。