寄付き・高値・安値・終値の4つの価格の意味するところは述べたが、市場参加者がこれらの4つの価格の中で終値を重視するのはなぜだろうか。今回は、終値の意味について考えておきたい。
チャートとは、過去の相場の動きを記したグラフのことであり、テクニカル分析とは、(チャートを使って)過去の価格データから相場を分析・予測することとなる。
テクニカル分析は、広義には価格の分析と価格以外の指標の分析に分けられるが、価格分析は、さらに、トレンド系とオシレーター系に大別される。
ローソク足の描き方・見方について述べ、寄付き・高値・安値・終値の4つの価格の意味するところを「当該期間の価格帯の両端と時間帯の両端」だとした。したがって、長期にわたるほど高値・安値の重要度が増すのである。
また、実際に相場予測をする上で、過去の年間の価格変動幅なども参考になることを述べた。
終値の意味
テクニカル・アナリストは、1日のさまざまな値段のうち、寄付き・高値・安値・終値を使う。それらは当該日の価格帯の両端と時間帯の両端を意味する。その4つの中で、終値が重要とされるのはなぜだろうか。一般に、朝刊の株式欄を開いた時に、まずどこを見るかというと、やはり終値だろう。例えば、テクニカル分析の技法の中でもポピュラーな移動平均(後述)にしても終値をデータとして使用するのが一般的である。
寄付き・高値・安値・終値のうち、終値が重要視されるのは、明日のことを考えるのに明日に1番近い価格から出発するのだという意見は理解しやすい。将来は最も近い過去(現在)の延長線上にあるからだ。相場の動きが仮にランダムであるとしても、このことは争えない事実だ。翌日に備えて、夜中にじっくり考えるためというのも、先物市場で値洗いに終値を使うのも、同様の趣旨だろう。
W・D・ギャン(今世紀初頭に活躍したテクニカル・アナリスト)は「立会い時間中に株価がどれほど高かったか安かったかは関係なく、終値こそが益を上げたか損を出したかの基準」なのだと述べる。これも日々の評価の洗い替えに使うのが終値であると言っているのに等しい。
しかし、テクニカル分析を行う上で、終値に日々の動きを代表させる理由としては、これらの説明だけでは不十分であろう。前記のものよりもよいと思われる解答は、終値は市場参加者が存在を容認したレー トだということである。つまり、相場がそこにあることを皆が認めた価格だということだ。高値は売ったほうがよいと考える人が多く、だから、そこをトップに下落し、安値は買ったほうがよいと考える人が多かったから、そこをボトムに反騰したわけである。つまり、高値も安値も市場参加者が容認しなかったレートである。だからこそ、高値・安値としてチャート上に残されたのだ。終値以外、他の時間帯の価格は、すべて同様である。相場がそこにあることを市場参加者が容認せず売買を続けたから、その価格から上昇・下落したわけだ。
一方、終値は、理由はどうあれ、もはや手出しをしなかった価格だ。市場参加者が手を出したくなかったということの意味を考えるならば、終値が1日の市場参加者すべての仮想コストと見なせなくもないということ になる。これはあくまでわれわれの仮説であるが、そうであるからこそ、移動平均などの作成に終値が使われるのであろう。
いずれにせよ、終値が重要なのは、時間の端だからということには変わりはない。
2本以上のローソク足の見方
さて、ここでローソク足の見方に戻って、複数のローソク足について説明しておく。
複数のローソク足の見方は以下のようなものである。 ①ギャップ(後述。2本のローソク足の価格帯で重なっていない部分。「窓」とか「 空<くう>」ともいう)の有無。②陰陽の組み合わせ。2本の相対的な長さの関係(1本めのほうが長い・短い・同じ長さ)、位置の関係(1本めのほうが高い・低い・同じ水準)、陰陽の別(陰同士、陽同士、陰陽の混合)が考えられる(第2図)。
これらの2本のパターンをどのように見るかという手がかりは、2本を1本に纏めて考えることである。つまり、1本めの寄付きから2本めの終値までを仮の1日(1期間)と考え、1本に合成してみて解釈するのである(もっとも、2本以上のものを1本に合成して考えるというのは、時間という条件を無視しているわけでもあり、限界もあることは知っておかねばならないが、前述した寄付き・高値・安値・終値の4つの意味を考えれば可能であることも理解できよう)。例えば、陽線2本が右下がりに続いている(「下赤<赤は陽線の意味>」と呼ばれるパターンだが、名称を覚えておく意味はない)と、見た目には強く見えるが、実際は2本を合成すると、ひげが上下に少し長く、実体の小さい「コマ」や「寄引同事線」の類に近いことがわかる(第3図)。つまり、方向性が上か下か判然としないパターンで、出現する位置によっては相場の転換期かもしれないということだ。前回述べたよう線3本が右下がりも同様に考えること ができる(第4図)。
さて、ローソク足のさまざまなバターンを認識する技法に、いわゆる酒田五法と呼ばれるものなどがあるが、ここでは省略する。テクニカル・アナリストが知っておくべき、もっと大事な事項があるからである。