低ボラティリティ運用戦略 #
低ボラティリティ運用戦略とは、ボラティリティの小さい銘柄に投資することで、高い投資リターンを獲得しようとする投資手法のことです。
ボラティリティとは、株式や債券などの値動きの大きさ・ぶれの大きさを意味しています。ボラティリティが高い銘柄は、値動きが激しい銘柄ということになります。
一般に、投資の世界では、ハイリスク・ハイリターンが当たり前だと考えられてきました。つまり、リスクをとるほど、期待されるリターンも高くなるものの、一方で損失の可能性も高くなる。リスクをとらなければ得られるリターンも低いという考え方です。したがって、従来であれば、ボラティリティの高い銘柄に投資することで、より高いリターンが得られる可能性が高いと考えられてきました。
低ボラティリティ戦略に対する注目 #
しかし、近年ボラティリティの小さい銘柄で構成されたポートフォリオの方が、そうでないポートフォリオよりも高いリターンが獲得できるという内容の論文が発表されるようになり、低ボラティリティ戦略が注目を浴びるようになりました。
そのような論文の一つが、野村アセットマネジメントの投資開発部シニアクオンツアナリストの山田徹氏が財務省財務総合政策研究所のフィナンシャル・レビュー(平成25年第3号(通巻第114号))に発表した論文「株式市場におけるボラティリティ・アノマリーとアクティブ運用―低ボラティリティ株式投資の長期検証」です。この論文の要約は次の通りです。
世界の株式市場を対象に,ボラティリティの低い株式の長期パフォーマンスの検証を行った。各市場において個別株式ではなく業種指数を用いることで,米国では1920 年代,日本では1950 年代,その他の先進国で1970 年代からの信頼性の高い観測が可能となった。検証結果によると,最小分散ポートフォリオ等の低ボラティリティ株ポートフォリオは,ほぼ全ての市場で時価加重型指数よりも長期的に高いリスク調整後リターンを示すことが確認された。両者の差は,低ボラティリティ株は高ボラティリティ株よりも将来のリスク調整後リターンが高いという低ボラティリティ効果に加えて,時価加重型市場指数に株価変動が近い株式ほど将来のパフォーマンスが低いという非時価加重効果へ分解される。すなわち,低ボラティリティ株ポートフォリオは,ボラティリティの低い株式を数多く,時価加重せずに保有することで,相対的に高いパフォーマンスを実現していると考えられる。
(出所:財務省財務総合政策研究所のフィナンシャル・レビュー(平成25年第3号(通巻第114号)))
同様の論文が海外でも多く発表されました。これを背景に、金融業界では低ボラティリティ戦略が注目されるようになり、それが投資信託を含めた運用に利用されるようになりました。
低ボラティリティ戦略を利用したETFと投資信託 #
その一例が東京証券取引所に上場しているETF「上場インデックスファンドMSCI日本株高配当低ボラティリティ」(銘柄コード1399)です。同ETFは日本の株式を対象とした低ボラティリティ戦略のETFで、MSCIジャパンIMIカスタム高流動性高利回り低ボラティリティ指数に採用されている銘柄に投資を行い、同指数に連動する投資成果を目指します。
また、「上場インデックスファンドMSCI日本株高配当低ボラティリティ(βヘッジ)」(銘柄コード:1490)も、低ボラティリティ戦略のETFで、MSCI ジャパンIMIカスタム高流動性高利回り低ボラティリティ指数への連動を目指します。
この他にも、次の投資信託において低ボラティリティ戦略が採用されています。
- ニッセイ/MFS外国株低ボラティリティ運用ファンド
- 楽天・先進国低ボラティリティ株式ファンド(為替ヘッジあり)<ラップ向け>
- 楽天・先進国低ボラティリティ株式ファンド(為替ヘッジなし)<ラップ向け>
低ボラティリティ戦略のまとめ #
低ボラティリティ運用戦略は、値動きの小さい銘柄に投資することで、高いリターンを目指す投資手法です。伝統的な「高リスク・高リターン」の考え方に対し、ボラティリティが小さい銘柄の方が長期的に高いリターンを得られるという研究結果から注目されています。この戦略は、低リスクで安定したリターンを求める投資家に適しており、ETFや投資信託で広く採用されています。