東京証券取引所では、ETF(上場投資信託)について、「長期投資に向いている銘柄」を選定して、公表していますが、どのようなETFでしょうか。
これは、2016年12月に公表された金融審議会市場ワーキング・グループ報告書において、「取引所のホームページのETF銘柄の一覧において、長期投資に向いている銘柄や積立のサービスが提供されている銘柄を明らかにする等、投資者に対する情報提供を拡充することが適当」とされたことを受けて実施されるようになったものです。
どのようなETFが長期投資に向いているかについては、様々な考え方があります。例えば、幅広く分散投資されている銘柄、信託報酬や購入時に支払う手数料といったコストが安い銘柄、分配頻度が少ない銘柄などが挙げられます。
東京証券取引所の定める「長期投資に向いている銘柄(ETF) #
一方、東京証券取引所では「長期投資に向いている銘柄」を、①先物等の派生商品で運用している銘柄ではないこと、②レバレッジ型やインバース型のETFではないこと、③監理・整理ポスト銘柄に指定されていないことを基準として選定しています。
では、それぞれについて見てゆきましょう。
①先物等の派生商品で運用している銘柄ではないこと #
先物等の派生商品で運用している銘柄とは、商品先物取引やボラティリティ指数先物取引の価格を用いる指標に連動するETFや主に先物取引に投資を行うETFのことを指しており、そうではない銘柄、つまり派生商品で運用していないETFであることが要件の一つになっています。
ただし、派生商品を利用しているETFであっても、次の目的で派生商品が利用されている場合は長期投資に向いている銘柄として問題ないとされています。
- ETFが投資の対象とする資産を保有した場合と同様の損益を実現する目的
- 信託の資産又は負債に係る価格変動及び金利変動により生じるリスク(為替相場の変動、市場金利の変動、経済事情の変化その他の要因による利益又は損失の増加又は現象の生じるおそれをいう。)を減じる目的
- 先物外国為替取引により、ETFの資産又は負債について為替相場の変動により生じるリスクを減じる目的
②レバレッジ型やインバース型のETFではないこと #
レバレッジ型とは、先物取引やオプション取引といったデリバティブ取引などを利用することによって、少ない元手で、多額の資金を活用して投資を行なった場合と同様の投資成果を目指すものを指します。このようなレバレッジを利用した投資では、その投資成果は、それが利益であっても、損失であっても、大きなものとなる可能性が高く、ファンドの基準価額もそれに応じて、大きく変動するため、価格変動リスクが大きくなります。
③監理・整理ポスト銘柄に指定されていないこと #
監理ポスト銘柄への指定は、株式やETFなどの上場有価証券が上場廃止基準に該当するおそれがある場合に、東京証券取引所が講じる措置です。投資家に、その事実を周知させることで、これに対応できるようにする目的で行われます。上場廃止が決定されると、ETFは整理ポスト銘柄へ指定されます。監理ポストに指定された銘柄は上場廃止になるリスクがあり、また、整理ポストに指定された銘柄は、上場廃止が決定されているため、当然ながら長期運用はできません。
東京証券取引所の「長期投資に向いている銘柄(ETF)」のファンド数 #
2024年8月末日現在、東京証券取引所には338本のETFが上場していますが、このうち278銘柄について、東京証券取引所では「長期投資に向いている銘柄」としてETF一覧ページにおいてファンド名に「○」印を付しています。
ただし、上記は、これらの基準に基づいて付されている参考情報であり、東京証券取引所が○の付された銘柄を推奨しているものではありません。また、基準は見直される場合があります。
「長期投資に向いている銘柄(ETF)」のまとめ #
東京証券取引所は、長期投資に適していると考えられるETFを選定し公表しています。その基準は、①先物等の派生商品で運用されていない、②レバレッジ型やインバース型ではない、③監理・整理ポスト銘柄でない、の3点です。これにより、価格変動リスクが低く、安定した運用が期待できるETFが選ばれます。ただし、選定は参考情報であり、東京証券取引所が推奨するものではありません。2024年9月現在、上場されている338本のETFのうち、278銘柄が長期投資に向いているとされています。