個人型確定拠出年金の費用
税制優遇制度が魅力の個人型確定拠出年金(iDeCo)ですが、将来受け取る年金額に影響を与える費用についても、きちんと理解しておきたいものです。なお、確定拠出年金の税金も併せて理解しておきましょう。
個人型確定拠出年金では、加入時、積立期間中、年金受給時のそれぞれにおいて手数料がかかります。では、どのような手数料がどの時点でかかるのか見てみましょう。
加入時に負担する費用
国民年金基金連合会に支払う手数料・・・個人型確定拠出年金の実施者は国民年金基金連合会です。国民年金基金連合会が提供する事務費用を加入者が負担します。加入時におけるこの手数料は2,777円(2016年12月現在)です。
積立・運用期間中に負担する費用
①口座管理手数料・・・口座管理手数料は、確定拠出年金の口座を保有して、積立を行っている期間中、毎月、国民年金基金連合会、事務委託先金融機関、運営管理機関に対して、その業務費用として加入者が負担する手数料のことです。加入者が拠出する掛金(積立金)から毎月差し引かれます。
- 国民年金基金連合会・・・手数料として毎月の掛金から 103円(年間1,236円)が差し引かれます。
- 事務委託先金融機関・・・国民年金基金連合会から委託を受けて個人別資産を管理する金融機関に対して毎月64円(年間768円)を支払います。
- 運営管理機関・・・加入者の窓口となる金融機関(運用関連管理機関)と記録関連運営管理機関に手数料を支払います。金額は運営管理機関により異なります。例えば、ゆうちょ銀行の場合では、毎月370円(年間4,440円)(2016年現在)です。
口座管理手数料の例:
例えば、ゆうちょ銀行で個人型確定拠出年金を利用していて、毎月の掛け金が23,000円というケースで見てみましょう。口座管理手数料の合計額は、103円+64円+370円=537円となります。この537円を毎月の掛金23,000円から差し引いた額(22,463円)が商品購入金額に充てられることになります。
2016年1年間の掛け金と手数料の一例:(ゆうちょ銀行で個人型確定拠出年金に加入しているサラリーマンのケース)
掛金対象年月 | 拠出金額 | 口座管理手数料合計 | 商品購入金額 |
2016年1月 | 23,000円 | 537円 | 22,463円 |
2016年2月 | 23,000円 | 537円 | 22,463円 |
2016年3月 | 23,000円 | 537円 | 22,463円 |
2016年4月 | 23,000円 | 537円 | 22,463円 |
2016年5月 | 23,000円 | 537円 | 22,463円 |
2016年6月 | 23,000円 | 537円 | 22,463円 |
2016年7月 | 23,000円 | 537円 | 22,463円 |
2016年8月 | 23,000円 | 537円 | 22,463円 |
2016年9月 | 23,000円 | 537円 | 22,463円 |
2016年10月 | 23,000円 | 537円 | 22,463円 |
2016年11月 | 23,000円 | 537円 | 22,463円 |
2016年12月 | 23,000円 | 537円 | 22,463円 |
合計 | 299,000円 | 6,444円 | 269,556円 |
掛金から差し引かれる口座管理手数料の1年間の合計と内訳は次のようになります。1年間に6,444円の手数料がかかっています。
対象期間 |
機関名 |
手数料金額(期間合計) |
2016年1月から12月 | 国民年金基金連合会 | 1,236円 |
運営管理機関(注) | 4,440円 | |
事務委託先金融機関 | 768円 | |
合計 | 6,444円 |
(注)上記はゆうちょ銀行の例であり、運営管理機関により手数料は異なります。
②信託報酬・・・掛金の運用を投資信託で行う場合、投資信託を保有している期間中、運用資産の中から運用管理に対する対価として信託報酬が各ファンドの保有額に応じて日々差し引かれます。信託報酬率は投資信託により利率は異なりますが、運用資産に対して年率0.5%から1.5%程度です。
例えば、信託報酬率が年1%のファンドがあったとします。運用残高が次のように日々変化した場合、日々差し引かれる信託報酬の額は(A)のようになります。運用が上手くいっても、あるいは損失が生じても、信託報酬は差し引かます。
1月15日 | 1月16日 | 1月17日 |
1月18日 |
|
運用残高 | 100万円 | 100.3万円 | 100.1万円 | 100.6万円 |
差し引かれる信託報酬の額(A) | 27.39円 | 27.47円 | 27.42円 | 27.56円 |
一般に、特定の株価指数や債券指数に連動した運用成果を目指すインデックスファンドと呼ばれる投資信託の信託報酬は、ファンドマネージャーがその知識、経験、技術を基に、指数を上回る運用成果を目指して運用を行うアクティブ運用ファンドの信託報酬より低く設定されています。
信託報酬は、投資信託の運用期間中は継続して負担する費用です。信託報酬率が高いということは、その分運用成績にとって押し下げ要因になります。ファンドが高い信託報酬に見合った運用成績を残しているかどうか、過去の運用成績を確認することも大切です。投資信託を選択する際には、信託報酬率を含めて商品を比較しましょう。
運営管理機関(金融機関)別の手数料と各運営管理機関が提供する商品の手数料率は特定非営利活動法人確定拠出年金教育協会のHPで調べることができます。
年金受給時に負担する費用
事務委託先金融機関・・・年金の給付が開始されると、受給時ごと(年金の振り込みが行われる都度)に手数料として432円(2016年12月現在)の手数料がかかります。
なお、上記の他に転職などによる資産の移管時は、国民年金基金連合会への手数料が1回につき2,777円かかります。また、運営管理機関によっては、移管手数料がかかる場合があります。
(データ等は全て2016年12月末現在のものです。法改正などにより変更されることがあります。最新の情報は国民年金基金連合会のiDeCo公式サイトでご確認下さい。)
確定拠出年金の基本の目次