勝てるファンドを見つけるのは難しい


インデックスファンドのようにベンチマークに連動するのではなく、ベンチマークを上回ることを目指す、つまり、できるだけファンドが値上りすることを目指す方がよいではないのか、という疑問を持つ人も多いでしょう。

同じ投資信託であれば、インデックスファンドで指数と同程度の運用成績を達成するよりも、アクティブファンドでベンチマークを上回る投資成果を期待した方がよいと考えるのは当然かもしれません。

しかし、そうは上手くいかないのが投資の世界です。

アクティブ運用のファンドは、より良い成績を目指すために、その分多くの調査や分析に必要となるアナリストなどのスタッフを含めたコストが必要となります。より手間暇かかった運用を行います。そのため、インデックスファンドに比べて投資家が負担する費用が大きくなります。コストの大きさは、ファンドの運用成績の押し下げ要因となります。しかも、投資家はそのコストを毎年毎年負担し続けることになります。この投資家が負担するコストを日本では信託報酬と呼びます。

また、ベンチマークを上回る投資成果を目指すということは、それだけリスクをとっていることになります。リスクが大きいということは、その分損失の可能性も大きくなります。ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンは投資の原理原則なのです。したがって、アクティブファンドの運用成績がインデックスファンドを下回ることもよくあります。

アクティブファンドがベンチマークを上回る投資成果を目指していても、実際にベンチマークを上回る投資成果が得られるとは限りません。少し古いデータになりますが、ペンシルベニア大学大学院のジェレミー・シーゲル教授が、1971年1月から2006年12月の米国の株式投資信託(ミューチュアルファンド)の全ファンドの平均利回りをベンチマークと比較した結果を著書「株式投資(Stocks for the Long Run)」の中で示していますので紹介します。

 

株式ミューチュアルファンドとベンチマークの利回り
全ファンド ウィルシャー5000指数 S&P500株価指数
1971-2006 10.49% 11.55% 11.53%
1975-1983 18.83% 17.94% 15.74%
1984-2006 10.80% 12.26% 12.77%

(年率複利利回り、販売および解約手数料は除く)

(出所:抜粋、株式投資、ジェレミー・シーゲル)

 

ウィルシャー5000指数S&P500は、米国を代表する株価指数です。全ファンドの平均利回りは1971年-2006年までの期間全体において、ウィルシャー5000指数とS&P500指数を下回っているのです。販売および解約手数料を引けば、投資家の取り分は更に低くなります。つまり、ベンチマークを上回る運用というのは、目論見書で謳っている程簡単ではないのです。

更に、その簡単ではない指数を上回るというタスクを実現してくれそうなファンドマネージャーを見つけることは、極めて困難なことです。しかも、ある一時期において運用成績がよいファンドマネージャーをみつけることができたとしても、それが継続するかどうかはわかりません。何十年にもわたり優れた運用成績を残してきたファンドやファンドマネージャーをみつけるのは非常に困難ですし、将来においてもその成績を維持できるファンドマネージャーをみつけるのは、ほとんど不可能かもしれません。将来のことは誰にもわからないのです。

そうであるなら、コストが低く、確実にベンチマークに連動する投資成果、つまり市場平均を達成するインデックスファンドに投資する方が投資家にとってはずっとメリットがあるのではないでしょうか。しかも、この数年は、インデックスファンドとファンドのコストに対する投資家の目が厳しくなってきていて、投資家が負担する信託報酬率も驚く程低下しています。

 

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