アクティブ・シェアとは


アクティブ・シェアとは

アクティブ・シェア(active share)は、投資信託の中身が、その投資信託ベンチマークとしている指数の中身とどの程度違うかを示す数値の一つです。つまり、ベンチマークを上回る投資成果を目指すアクティブ運用ファンドが、実際にどの程度アクティブな(ベンチマークと異なる)運用をしているかを知るための指標です。

アクティブ・シェア比率は0%から100%の間の数字で示されます。ベンチマークと全く同じであれば0%、ベンチマークとすべて異なるのであれば100%となります。数値が高いほど、独自の運用を行なっていることになります。

投資信託の運用において、アクティブ運用であることを謳い、インデックスファンドより高い信託報酬を徴収していても、実際にはベンチマークと同じような銘柄構成の投資信託もあります。このような投資信託をクローゼット・インデックス・ファンドと呼びます。アクティブ・シェアが低いほど(ベンチマークと銘柄構成が近いほど)、アクティブ運用のファンドが、ベンチマークを上回る成績を達成するのは困難になります。

なお、アクティブシェアについての詳細は、ノードルダム大学のマーティン・クレーマー教授とニューヨーク大学のアンティ・ペタジストロ博士が2009年にReview of Financial Studiesに発表した「How Active is Your Fund Manager」(あなたのファンドマネージャーはどの程度アクティブ運用しているか)で説明されています。

 

アクティブ・シェアの計算式

アクティブシェアは次の計算式で求めます。

 

i = 銘柄番号(i =1,2,,,,n)

N=保有銘柄数

w fund,i=ファンドにおけるi番目の構成比率

w index,i=指数(ベンチマーク)におけるi番目の構成比率

 

 

アクティブ・シェアの計算

実際の投資信託では50銘柄から数百、多い場合は1,000銘柄以上が組み込まれていますが、ここでは、5銘柄から9銘柄で構成されたファンドを仮定して考えてみます。

ここにA,B,C,D,Eという5銘柄で構成されたベンチマークがあったとして、各々の構成比率は20%だとします。一方、これをベンチマークとするAファンド、Bファンド、Cファンドがあり、それぞれの銘柄構成が次の通りだとします。

 

  • Aファンドの銘柄構成:銘柄A(20%)、B(20%)、C(20%)、D(20%)、E(20%)

つまり、Aファンドはベンチマークと同じ銘柄を同じ比率で保有しています。これを上記の計算式に当てはめると次のように、アクティブシェアは0%となります。完全なインデックスファンドということです。

銘柄 A B C D E F G H I
ベンチマーク 20% 20% 20% 20% 20% 0% 0% 0% 0%
ファンド 20% 20% 20% 20% 20% 0% 0% 0% 0%
fund-index 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0%
絶対値 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0%
SUM 0%
アクティブ・シェア 0%

 

  • Bファンドの銘柄構成:銘柄A(0%)、B(0%)、C(0%)、D(0%)、E(0%)、F(25%)、G(25%)、H(25%)、I(25%)

これは、ベンチマークと同じ銘柄は一つも保有していないファンドです。これを上記の計算式に当てはめると次のように、アクティブシェアは100%となります。完全なアクティブ運用ファンドということになります。

 

銘柄 A B C D E F G H I
ベンチマーク 20% 20% 20% 20% 20% 0% 0% 0% 0%
ファンド 0% 0% 0% 0% 0% 25% 25% 25% 25%
fund-index -20% -20% -20% -20% -20% 25% 25% 25% 25%
絶対値 20% 20% 20% 20% 20% 25% 25% 25% 25%
SUM 200%
アクティブ・シェア 100%

 

  • Cファンドの構成銘柄:銘柄A(5%)、B(0%)、C(5%)、D(5%)、E(5%)、F(20%)、G(30%)、H(15%)、I(15%)

Cファンドは、ベンチマークと同じ銘柄も組み入れていますが、その保有比率は低く、ベンチマークに入っていない銘柄の組入比率が高い状況です。これを上記の計算式に当てはめると次のように、アクティブシェアは80%となります。アクティブ運用が実行されているファンドということになります。

 

銘柄 A B C D E F G H I
ベンチマーク 20% 20% 20% 20% 20% 0% 0% 0% 0%
ファンド 5% 0% 5% 5% 5% 20% 30% 15% 15%
fund-index -15% -20% -15% -15% -15% 20% 30% 15% 15%
絶対値 15% 20% 15% 15% 15% 20% 30% 15% 15%
SUM 160%
アクティブ・シェア 80%

 

アクティブ・シェア比率の公表

投資信託の運用会社の中には、レオス・キャピタルワーク株式会社株式会社ポートフォリアのように、アクティブ・シェア比率を算出し、月報やHPで公表しているところもあります。

株式会社ポートフォリアの「みのりの投信」の月次レポート平成30年7月号によると、同ファンドのアクティブシェア比率は96.91%、レオス・キャピタルワークスのひふみ投信の2018年7月度月次報告書によると、同ファンドのアクティブシェア比率は89.6%で、両ファンドとも、高いアクティブシェア比率であることがわかります。

 

高いアクティブ・シェアについて

アクティブシェア比率が高いファンドの方が、運用成績が良くなる可能性が高いという研究結果がありますが、アクティブシェア比率が高いことが高いパフォーマンスを約束するわけではありません。また、負担する費用が高ければ、投資家は高いアクティブ・シェアによってもたらされた超過収益の恩恵を享受できなくなることもあります。

前述のクレーマー教授は、2017年に「Active Share and the Three Pillars of Active Management: Skill, Conviction and Opportunity」と題する論文を発表し、結論として「アクティブシェアは、アクティブ運用ファンドにとって重要である。投資家は、やがてはアンダーパフォームすることになる低アクティブシェアのファンドに高い費用を払うべきではない。高アクティブシェアのファンドがグループとしてアンダーパフォームしたという証拠はないが、高アクティブシェアの忍耐強いファンドマネージャーは非常に成功している」と述べています。

 We conclude that Active Share matters for actively managed funds: investors should not pay (too) much for low Active Share funds which generally underperform, there is no evidence that high Active Share funds as a group have underperformed, while patient managers with high Active Share have been quite successful.

 

また、株式会社QUICKは、「アクティブ型の「真偽」を判別 新指標で投信選び」と題する記事の中で主な日本株アクティブファンドのアクティブシェアをリストしています。

なお、米国の投資信託のアクティブシェア比率を調べることができるサイト(https://activeshare.info)があります。