商品ETFとは?


商品ETF

商品ETF,コモディティ金融市場における投資商品の多様化が進む中、インフレの懸念が高まる現在、注目を集める投資対象の一つとして「商品ETF」が挙げられます。

商品ETFは、金や銀、石油、天然ガス、農産物などのコモディティ(商品)の価格に連動するように設計された上場投資信託(ETF)です。ETFは株式のように証券取引所で取引されるため、商品ETFを利用することで、個人投資家は通常プロフェッショナルだけが参加できる商品取引市場への投資を、少額から簡単かつ効率的に行うことができます。

商品ETFは、特にポートフォリオの多様化を目指す投資家にとって魅力的な選択肢となっています。なお、商品を指す英語の「commodity」から、商品ETFは「コモディティETF」とも呼ばれます。

この記事では、商品ETFにおける商品とは何か、商品ETFの特徴、種類、仕組み、そしてリスクに至るまで、初心者にも分かりやすく解説します。

ETFの基本

 

商品とは

商品ETFにおける商品とは、金融市場で取引される商品を指します。具体的には、金・銀などの貴金属、銅やアルミニウムなどの工業用金属、とうもろこしや大豆などの農産物、そして原油・天然ガスなどのエネルギー商品が含まれます。

貴金属
  • パラジウム
  • 白金
工業用金属
  • ニッケル
  • アルミニウム
エネルギー
  • ガソリン
  • 原油
  • 天然ガス
農産物
  • カカオ
  • コーヒー豆
  • 小麦
  • 大豆
  • とうもろこし
  • 砂糖

商品ETFの主な特徴

商品ETFには次のような特徴があります。

 

多様な商品へのアクセス

投資家は複雑な商品取引を経ずに、商品ETFを通じて金、銀、石油、天然ガス、農産物など、さまざまな商品市場に参入することができます。

高い流動性

商品ETFは証券取引所で取引されるため、株式と同様に市場の取引時間内であればいつでも売買できます。ただし、一般に取引所での売買は流動性が高いと考えられがちですが、実際には東京証券取引所に上場している商品ETFの中には流動性の低いものもあるため、注意が必要です。

高い透明性

ETFはその保有資産を日々公開しているため、投資家はETFが何にどのくらい投資しているかを正確に把握することができます。これは東京証券取引所のホームページに掲載されているPCF(Portfolio Composition File)情報で見ることができます。また、運用会社が月次で公表している月報でも知ることができます。

低いコスト

多くの商品ETFの管理費用(信託報酬)は低く抑えられています。商品ETFを利用することで、個々の商品を直接購入する際にかかる費用や手間を省くことができます。

リスク分散

異なる資産クラスは、市場や経済状況に対して異なる反応を示すため、商品(コモディティ)は、株式や債券と負の相関を持つことが多いと言われています。

例えば、債券はインフレに弱い資産クラスであり、インフレが進行すると、債券の利回りが上昇し、既存の債券価格は下落します。一方で、商品価格はインフレが進行すると上昇する傾向があります。特に、原材料やエネルギー価格などが上昇するため、商品はインフレヘッジとして機能します。

また、金は典型的な安全資産とされ、経済不安やインフレ時に株価が下落局面にあるときに、金価格が上昇する傾向があります。

 

商品ETFの種類

商品ETF(コモディティETF)は、特定の商品価格に連動するように設計されているものと複数の商品で構成された商品バスケットや商品指数の価格変動に連動するよう設計されているものがあります。また、海外市場には、レバレッジ型やインバース型の商品ETFも上場しています。

 

単一商品ETF・・・特定の単一商品(例えば、金、銀、原油など)の価格の値動きに連動するように設計されたETF

単一商品ETFの例

ETF名(銘柄コード) 投資対象
NEXT FUNDS金価格連動型上場投信(1328)
SPDRゴールド・シェア(1326)
純プラチナ上場信託(現物国内保管型)(1541) 白金
純パラジウム上場信託(現物国内保管型)(1543) パラジウム
WisdomTree 天然ガス上場投資信託(1689) 天然ガス

商品セクターETF・・・特定のセクター(エネルギー、貴金属、農産物など)に焦点を当てたETF

商品セクターETFの例

ETF名(銘柄コード) 投資対象
WisdomTree 穀物上場投資信託(1688) 大豆、とうもろこし、小麦等
WisdomTree 農産物上場投資信託(1687) 大豆、とうもろこし、コーヒー、砂糖、大豆粕
WisdomTree 産業用金属上場投資信託(1686) 銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、鉛
WisdomTree エネルギー上場投資信託(1685) 原油、天然ガス、軽油、ガソリン
WisdomTree 貴金属バスケット上場投資信託(1676) 金、銀、パラジウム、プラチナ

商品全般をカバーする指数への連動を目指すETF・・・穀物、貴金属といった特定のセクターではなく、商品市場全般をカバーする商品指数への連動を目指すETF

ETF名(銘柄コード) 投資対象
WisdomTree ブロード上場投資信託 (1684) 金、原油、大豆、銅

レバレッジ型ETF・・・対象となる商品の価格変動の2倍または3倍の値動きになるよう設計されたETF

通常の市場の動きよりも大きな価格変動を目指します。具体的には、特定の指数や商品の価格変動に対して、2倍、3倍といった倍率で反応するように設計されています。例えば、対象となる商品価格が1%上昇すると、2倍のレバレッジ型商品ETFは2%上昇し、3倍のレバレッジ型商品ETFは3%上昇することを目指します。これらは短期的な取引に適したETFです。

2024年6月現在、東京証券取引所にはレバレッジ型の商品ETFは上場していませんが、米国市場にはProShares Ultra Gold(UGL)やDirexion Daily Gold Miners Bull 3X Shares(NUGT)などが上場しています。

インバース型ETF・・・対象となる商品の価格が下落することで利益を得るよう設計されたETF

例えば、金の価格が下がると、ETFの価格がその2倍の割合で上昇し、逆に金の価格が上がると、その2倍の割合で下落するように設計されたETFです。

2024年6月現在、インバース型の商品ETFは東京証券取引所には上場していませんが、米国市場には、例えば、ProShares UltraShort Gold(GLL)、ProShares UltraShort Silver (ZSL)、ProShares UltraShort Bloomberg Crude Oil (SCO)などが上場しています。

 

商品ETFの仕組み

商品ETF(商品上場投資信託)の仕組みにはいくつかの種類があり、それぞれ異なる方法で商品価格への連動を実現しています。主な仕組みの違いは以下の通りです。

現物保有型商品ETF

基礎となる商品(例:金、銀、プラチナなど)を実際に保有することによって、その価格に連動するETFです。ETFの運用会社(管理会社)が実際に物理的な商品を購入し、保管します。例えば、金の現物保有型ETFであれば、運用会社は金地金を購入し、信託会社や保管銀行に保管します。保有する現物商品に基づいてETFが発行され、投資家は証券取引所を通じてETFを購入したり、売却したりすることができます。これにより、投資家は実際の商品を保有することなく、商品価格に連動する投資が可能となります。

先物ベースの商品ETF

先物ベースの商品ETFは、現物ではなく、その商品の先物契約を用いて運用されるETFです。これにより、投資家は商品市場に間接的に投資することができます。ETFの運用会社は、対象となる商品の先物契約を購入します。先物契約とは、将来の特定の時点に特定の価格で商品を売買する契約です。先物契約を保有することに基づいてETFが発行されます。

スワップベースの商品ETF

スワップベースの商品ETFは、対象となる商品の価格変動に連動するスワップ契約を利用して運用されるETFです。この仕組みにより、ETF自体は現物商品や先物契約を直接保有せずに、間接的に商品市場に投資することができます。ETFの運用会社は、金融機関(通常は銀行や証券会社)とスワップ契約を締結します。この契約により、金融機関はETFの運用会社に対して、対象商品の価格変動に連動するリターンを支払うことを約束します。運用会社はその対価として、金利などを金融機関に支払います。スワップ契約を基にETFが発行され、投資家は証券取引所を通じてこのETFを購入したり、売却したりすることができます。

これらの仕組みの違いを理解することで、投資家は自身の投資目的やリスク許容度に応じて最適な商品ETFを選ぶことができます。

 

商品ETFのリスク

商品ETFに投資する際には、いくつかの特有のリスクが伴います。これらのリスクを理解することは、投資決定を行う際に非常に重要です。以下に、主なリスクを挙げます。

市場価格のボラティリティ

商品価格は、気象条件、政治的な出来事、需給バランスの変化など、さまざまな外部要因によって大きく変動する可能性があります。このため、商品ETFの価値もまた大きく変動することがあり、投資家は短期間で大きな損失を被るリスクがあります。

ロールオーバーリスク

ロールオーバーリスクは、先物ベースの商品ETFのリスクの一つです。先物契約には有効期限があり、期限が近づくと新しい契約に更新(ロールオーバー)する必要があります。この更新の際に発生するコストや、先物価格の変動によって、投資の成果が悪化することがあります

信託報酬と費用

ETFには信託報酬やその他の手数料が発生します。これらのコストは投資リターンを直接減少させるため、特に長期投資の場合、パフォーマンスに大きな影響を与える可能性があります。東京証券取引所に上場している商品ETFの信託報酬は年率0.4%から0.85%(税抜)程度です。

経済的要因によるリスク

インフレ率の変動、金利の変化、通貨の変動など、経済全体に影響を与える要因は、商品価格に直接的な影響を及ぼす可能性があります。これらのマクロ経済的要因によって、商品ETFの価値が減少するリスクがあります。

流動性のリスク

一部の商品ETFは、取引量が少ないために流動性が低い場合があります。流動性が低いと、市場価格で迅速にポジションを開閉することが難しくなり、特に急激な市場変動時に不利な価格で取引を余儀なくされる可能性があります。

トラッキングエラー

商品指数ETFは、特定の商品指数の値動きに連動する投資成果を目指しますが、さまざまな要因で指数のパフォーマンスと完全に一致することはありません。これをトラッキングエラーと呼びますが、トラッキングエラーは、ETFのパフォーマンスに影響を与える可能性があります。

地政学的リスク

特定の商品は、地政学的緊張や紛争が多い地域で生産されることが多いため、これらの地域での政治的不安は商品価格に影響を与える可能性があります。

これらのリスクは商品ETFに特有のものであり、投資家はこれらの要因を考慮し、自身のリスク許容度と投資目標に合わせて慎重に投資を行う必要があります。

 

商品ETFのまとめ

商品ETFは、投資家にとって商品市場へのアクセスを容易にし、ポートフォリオの多様化やリスク管理のツールとして活用されています。ただし、商品ETFには市場の変動性やコストなどいくつものリスクも存在するため、投資前に十分な検討と理解が必要です。