レバレッジ型ETFの分配方針
目論見書において、レバレッジ型ETFの分配方針を見ると、年1回分配を行うと定めているETFがほとんどですが、分配実績を見ると、ほとんどのファンドで分配は行われていません。レバレッジ型ETFは、リスクをとって市場の変動から大きな利益を獲得することを目的とするETFであって、そもそも分配目的で投資するファンドではないからです。
レバレッジ型ETFの分配原子は?
レバレッジ型ETFとは、TOPIXレバレッジ(2 倍)指数やハンセ ン中国企業株レバレッジ指数のようにレバレッジ型のベンチマークへの連動を目指すETFです。株価指数先物を利用することで、ブルベア型ファンドのように株価指数の2倍の運用成績や2倍逆の運用成績を目指します。レバレッジ型ETFでは株価指数先物以外には、短期公社債やコール・ローンを組み入れています。この短期公社債やコール・ローンから獲得する利息がレバレッジ型ETFの分配金の原資になります。
ETFでは、受取利息から経費を差し引いた部分が、分配対象額となります。売買益は分配対象となりません。しかし、ほとんどのレバレッジ型ETFでは、これらの受取利息の額がファンドの経費を上回る水準に達しないため、分配は行われません。
レバレッジ型ETFの分配金の計算の例
例えば、月次の売買代金において2015年を通して1位を維持した野村アセットマネジメントのレバレッジ型ETF「NEXT FUNDS日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(1570)」を例に見てみましょう。同ETFも、分配方針においては、年1回分配を行うことになっていますが、設定来分配は実施されていません。
同ETFの直近(2014年5月21日から2015年5月20日)の分配金の計算書を表にすると次のようになっています。
項目 | ||
当期配当等収益額 | A | 90,195,565円 |
分配準備積立金 | B | △1,582,441,884円 |
配当等収益合計額 | C=A+B | △1,492,246,319円 |
経費 | D | 1,935,072,972円 |
収益分配可能額 | E=C-D | 0円 |
収益分配金 | F | 0円 |
次期繰越金(分配準備積立金) | G=E-F | △3,427,319,291円 |
口数 | H | 19,060,000口 |
1口当たり分配金 | I=F/H | 0円 |
当期配当(A)が約9,000万円ありますが、前期控除しきれなかった経費(B)が約15.8億円あり、差引で配当等収益合計額(C)が約14.9億円のマイナスになります。負数ですので、経費(D)約19.3億円を控除することはできませんので、(E)収益分配可能額は0円となります。したがって、分配は行われません。また、配当等収益合計額と控除できなかった経費の合計額約△34億円が次期繰越金となりますので、今期についても、配当収益が前期と同程度であれば、分配は行われないと推測できます。
分配金を支払ったことがあるレバレッジ型ETF
ほとんどのレバレッジ型ETFでは上記の例と同じような構図になり、分配金はほとんど期待できません。ただし、2015年に分配を実施したレバレッジ型ETFが1本存在しました。それが2014年8月26日に東京証券取引所に上場した日興アセットマネジメントの「上場インデックスファンド日経レバレッジ指数(1358)」で、同ETFは2015年7月に1口当たり50円の分配を実施しています。同ETFは指数の変動率が、日経平均株価の前日比変動率(%)の2倍となるように計算された、日経平均レバレッジ・インデッ クスに連動を目指すETFですが、株価指数先物やコール・ローンの他に、上場インデックスファンド225を組み入れており、同ETFからの配当金が分配の原資となりました。
項目 | ||
当期配当等収益額 | A | 11,192,727円 |
分配準備積立金 | B | 0円 |
配当等収益合計額 | C=A+B | 11,192,727円 |
経費 | D | 6,351,488円 |
収益分配可能額 | E=C-D | 4,841,239円 |
収益分配金 | F | 4,732,350円 |
次期繰越金(分配準備積立金) | G=E-F | 108,889円 |
口数 | H | 94,647口 |
1口当たり分配金 | I=F/H | 50円 |