ETFの乖離率
ETFの乖離率とは、ETFの基準価額の変化率(騰落率)とベンチマークの変化率(騰落率)との差のことで、計算式は次のようになります。
ETF(上場投資信託)は、日次の騰落率で見て、対象とする指数に連動するように運用される投資信託です。例えば、東証株価指数(TOPIX)への連動を目指すETFであれば、東証株価指数が1%上昇すれば、ETFの基準価額も1%上昇し、東証株価指数が1%下落すればETFも1%程度下落するように設計・運用されています。
具体的に、野村アセットマネジメントが運用しているNEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信(銘柄コード:1306)の直近の日次騰落率を見ると、次のようにETFとベンチマークであるTOPIXの日次の騰落率がほとんど同じであることがわかります。設計通りの運用が行われているということになります。
日付 | TOPIXの日次騰落率 | NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信の日次騰落率 | 騰落率差 |
2016年3月8日 | -1.04% | -1.03% | 0.01% |
3月7日 | -0.98% | -0.98% | 0.00% |
3月4日 | 0.46% | 0.46% | 0.00% |
3月3日 | 1.44% | 1.44% | 0.00% |
3月2日 | 3.75% | 3.75% | 0.00% |
3月1日 | 0.23% | 0.24% | 0.01% |
2月29日 | -1.02% | -1.04% | -1.02% |
2月26日 | 0.29% | 0.29% | 0.01% |
2月25日 | 1.79% | 1.83% | 0.03% |
(データ:適宜開示情報閲覧サービス)
乖離要因
しかし、ETFの基準価額の変化率とベンチマークの変化率に乖離が生じることがあります。そして、ETFによっては、その乖離が大きくなることもあります。乖離の要因としては、次の点が挙げられます。
①構成銘柄の違い
ETFはベンチマークに連動したパフォーマンスを達成するために、一般的には、ベンチマークを構成する銘柄を組み入れますが、このとき、一部の銘柄を組み入れないことがあります。例えば、流動性の極めて低い債券や株式の場合、ファンドが実際に組み入れることが困難な場合などにおいてです。そのようなケースでは、ETFの構成銘柄とベンチマークの構成銘柄が完全に一致しなくなり、この違いが乖離の一因となることがあります。
②構成比率の違い
一般に、ETFはベンチマークを構成する銘柄をベンチマークと同じ比率で組み入れますが、この組入比率に多少の差が生じることがあり、これが乖離の一因になります。
③使用する株価等の違い
ETFの基準価額の算出に使用される株価や債券価格、あるいは外貨建て資産の計算に利用される外国為替相場などが、ベンチマークにおいて算出に使用される価格等と異なることがあり、これが乖離の要因となります。
④費用負担の違い
ETFは信託報酬、売買委託手数料、監査費用、それらにかかる消費税等の費用を負担しますが、ベンチマークではそのような費用は発生しません。そのため、これらの負担が大きいETFほどベンチマークとの乖離が大きくなる可能性があります。
⑤現金の有無
ETFでは追加設定時や解約時、あるいは組入銘柄の配当金の受け取りや分配金の払出しの処理等によって信託財産に現金が発生します。一方でベンチマークでは現金は発生しないため、これも乖離の一因となります。
乖離率の公表
ETFはベンチマークへの連動を基本とする商品であるため、乖離率が大きくなることは、意図した運用が出来ていないことを意味し、投資家にとってはリスクとなります。そのため、証券取引所では、ETFの運用会社に対して、毎日、ETFの一口当たりの純資産額と対象指数の終値の変動率の乖離率を公表することを義務付けています。この乖離率は、東京証券取引所が運営する適宜開示情報閲覧サービス(TDnet)https://www.release.tdnet.info/inbs/I_main_00.htmlで確認することができます。
また、ETFはベンチマークに連動する商品として証券取引所に上場していますが、乖離率が大きくなり、ベンチマークに連動していないとなると、上場廃止になる可能性があります。東京証券取引所のルール(有価証券上場規定)では、国内ETFに関しては、「ETFの一口あたりの純資産額と特定の指標の相関係数が0.9未満となった場合において、1年以内に0.9以上とならないとき」、上場廃止となると定められています。