ETFの上場廃止決定後のプロセス
整理銘柄への指定
取引所がETFの上場廃止を決定すると、ETFは整理銘柄に指定されます。
整理銘柄とは、上場廃止が決定された銘柄ということです。これはETFだけでなく、株式にも共通です。整理銘柄に指定される期間は1カ月間です。これを整理銘柄指定期間と呼びます。
投資家はこの1カ月の間に、保有するETFを取引所で売買して、ポジションを手仕舞うことになります。この1カ月間が、取引所において該当するETFを売買できる最後の期間になります。整理銘柄に指定されると、信用取引は行なえなくなります。また、上場廃止が決まった場合、想定していた価格でETFを売却することが困難になることも想定されます。
上場廃止
整理銘柄指定期間が終了すると、ETFは上場廃止になります。
整理銘柄指定期間内に取引所で売却しなかった場合には、投資家は、運用会社の指定する証券会社に対してETFの買取請求を行なって換金することになります。この期間を受益権の買取請求期間と呼びます。指定された証券会社を通じてETFを購入・保有している場合は問題になりませんが、他の証券会社を通じて購入したETFについては、ETFを売却するためだけに、指定された証券会社に取引口座を開設し、ETFを預けてある証券会社の口座から、指定証券会社の口座へ振り替えを行なう必要が生じます。ここでのETFの買取価額は、買取りの申込みを販売会社が受け付けた日(買取請求受付日)の翌営業日(ファンドにより異なる)の基準価額となります。
繰上償還
上場廃止になったETFは信託約款の規定に基づき、運用会社と受託者との合意のうえで、繰上償還されます。この繰上償還日がETFの信託終了日となります。
なお、信託終了日を過ぎると、証券保管振替機構などの振替機関での取り扱いが終了するため、受益証券が発行され、振替受益権は受益証券に移行されます。この受益証券を償還受益証券と呼びます。ETFを信託終了日までに換金してなかった場合、信託終了日から10年間は、償還受益証券による買取請求の手続きを行なうことができますが、この場合、買取価額は信託終了日の基準価額となります。
上記の流れをまとめると次のようになります。
運用会社が取引所に対して上場廃止申請
↓
取引所が上場廃止を決定
↓
整理銘柄指定期間
↓
上場廃止
↓
受益権の買取請求期間(上場廃止から信託終了日の3営業日前の日までなど)
↓ 受益証券の発行(信託終了日の数営業日前)
信託終了日(繰上償還日)
↓
償還受益権の買取請求期間(信託終了日から10年間)
上場廃止リスク
ETFが繰上償還・上場廃止となれば、投資家は売却するか買取請求を行なうかして、現金化せざるをえなくなり、市場の状況によっては損失を実現することになるかもしれません。長期保有を考えてETFを購入していた投資家にとっては、計画が頓挫してしまいます。
残念ながら、新規に上場されるETFについては、どのETFが繰上償還される可能性が高いのかについて推測や判断をすることはできません。既に上場しているETFについては、純資産総額の大きさ、上場口数の推移、売買高、基準価額とベンチマークの乖離および解消までの期間など、総合的に検討してみることが大切です。