コア・サテライト戦略とは
コア・サテライト戦略とは、資産運用の手法の一つです。ポートフォリオ(運用資産全体)を中核(コア)となる部分と、非中核(サテライト)部分に分けて構築する方法です。
例えば、コア部分では低コストで広範に分散投資されたインデックスファンドを利用し、サテライト部分では、アクティブ運用型の商品や個別銘柄などを活用します。そうすることで、コア部分で市場平均程度のリターンを確保しつつも、サテライト部分で市場平均を上回るリターンの獲得を目指し、ポートフォリオ全体としても、リスクとコストを抑えながら、市場平均に勝つ可能性を追求することが可能であると言われています。
コア部分はその名のとおりポートフォリオの中核であり、守りの役割を果たします。そのために、流動性の高い市場において広範に分散投資され、コストの低いインデックスファンドを活用し、市場平均のリターンを確保します。ETFは、一般的なインデックスファンドと比較しても信託報酬などのコストが低く、コア部分に活用するのに適していると考えられます。
コア資産
イェール大学のCFOとして20年間平均で年率16.1%という運用成績を達成した著名ファンドマネージャーのデイビッド・スウェンセン氏は、その著書「イェール大学CFOに学ぶ投資哲学」の中で、コア資産に共通する、決定的に重要な特徴として次の3つを挙げています。
- コア資産には、基礎的で、重要で、それにしかない特徴があり、その特徴を通じてポートフォリオに貢献する。
- コア資産は、基本的に市場リターンに依存し、アクティブ運用には依存しない。
- コア資産には、幅が広く、底が厚い流通市場がある。
サテライト資産
一方、サテライト部分は攻めの役割を果たします。ある程度のリスクをとって、ポートフォリオ全体として市場平均に勝つ可能性を追い求めるための役割を果たします。つまり、ポートフォリオ全体としての分散とリターンの上昇の役割を果たします。ここではアクティブ運用のファンド、ニッチ市場の商品、ヘッジファンド、個別銘柄など、さまざまな投資対象が利用されます。
なお、前述のスウェンセン氏は、非コア資産は、上記の3つの条件のうち、どれかを満たさない資産と言っています。
このコア・サテライト戦略のメリットとしては、次のような点が挙げられています。
- ポートフォリオ全体のコストが抑えられる。
- ポートフォリオが代表的な市場平均指数を下回るリスクを低減することができると同時に、市場平均に勝つ可能性が高まる。
- ポートフォリオの中で、どの部分のパフォーマンスがよかったか、悪かったかが明確にわかる。
- アクティブ運用だけでポートフォリオを組んだ場合よりも、ボラティリティが低い。
- サテライト部分があることで、更なる分散が図られる。
インデックスファンドのみのポートフォリオでは、市場平均程度のリターンしか得られない、アクティブ運用のみのポートフォリオでは、市場平均に勝ち続けるファンドマネージャーを見出すのは困難であり、リスクが高すぎるという投資家に適した戦略だと言われていますが、一方で、サテライト部分の資産の選択には十分な調査が必要となります。
コア・サテライト戦略を利用した投資信託
インデックスファンドとアクティブ運用のファンドを組み合わせることで、コア・サテライト戦略を構築することができますが、この戦略を利用している投資信託もあります。その一例が、三菱UFJ国際投信が2000年4月7日から運用している「J ・エクイティ(愛称「K2000」)」です。J・エクイティでは、コア・ポートフォリオ(基本投資比率 85%程度)は、主として東証一部上場の大中型銘柄の中から、投資価値に対して割安と判断される企業に投資を行ない、 ノン・コア・ポートフォリオ(基本投資比率 15%程度)は、主として東証一部上場小型・二部上場、JASDAQ上場、マザーズ上場銘柄の中から、成長性に富み次世代の日本を担う企業へ投資を行ないます。J・エクイティの場合、コア部分にインデックスファンドは利用していませんが、コアの部分で安定した成長を目指し、サテライト(ノン・コア)ではさらなる収益の確保を目指すという、コア・サテライト戦略の考え方です。