モダンポートフォリオ理論とは
投資信託の目論見書やパンフレット類に「モダンポートフォリオ理論」という言葉を見たことがある人は多いと思います。例えば、「このシステムでは、モダン・ポートフォリオ理論に基づき、市場全体の動きと個別銘柄の動きの関係を市場・財務ファクター(市場反応度、売買活況度、投資成果、企業価値など)と業種ファクターを分析し、最適なポートフォリオ(組入銘柄、数量)を構築します」というように使われています。
モダンポートフォリオ理論は、投資や証券の考え方を、理論的に表現し、展開したものです。「昔からある伝統的な投資の知恵を、整理整頓しなおしたもの」といえるでしょう。1990年のノーベル経済学賞受賞者ハリー・マーコウィッツ(Harry Markowitz) が1952年に発表した論文が、モダンポートフォリオ理論のはじまりであるといわれています。これは、分散投資のメリットを数学的に表現したものでした。その後、より高度な数学を使った精緻化が行われ、1970年代中頃にほぼ現在のモダンポートフォリオ理論が出来上がりました。
モダンポートフォリオ理論の主張
また、このころからコンピュータがビジネスに用いられるようになり、モダンポートフォリオは机上の空論から現実に使える道具として発達しています。モダンポートフォリオ理論は数学を多用することが多く、一見難しいように見えますが、その主張は非常に単純明解です。内容は2点に要約できます。
- 楽して儲かることはない⇒リスクリターントレードオフの原理
- 苦労をしたからといって儲かるわけでもない⇒分散投資による不要なリスクの抑制
こうしたモダンポートフォリオ理論の基本的な考え方は、大昔からあった先人の知恵と一致しています。「虎穴に入らずんば虎児を得ず」はリスクとリターンのトレードオフを的確に表した古代中国の格言ですし、「卵を一つのカゴに入れるな」は、西欧の投資の世界で大昔からある分散投資の薦めです。
つまり、モダンポートフォリオ理論の基本的な内容は決して新しいものでも現実からかけ離れた机上の理屈でもなく、誰もが知っている当たり前のことを、数式などを使ってエレガントに表現したものなのです。エレガントに表現するとどんな良いことがあるかというと、コンピュータや学者さんでもそれを理解できて、応用も利きやすくなったりする点であると言えます。例えばインデックスファンドはモダンポートフォリオ理論がもとになってできた金融商品ですし、クオンツ運用も、何らかの形でモダンポートフォリオ理論を内蔵しています。
【関連リンク】
- マーコウィッツのノーベル賞受賞発表(ノーベル財団)
- ハリー・マーコウィッツのホームページ