金融ADRとは
金融ADRとは、金融分野における裁判外紛争解決手続きのことです。
投資家と金融機関の間で発生した紛争について、裁判ではなく、国の認証を受けた第三者である民間事業者による調停や斡旋で解決しようとする制度です。平成21年6月17日に成立した「金融商品取引法等の一部を改正する法律」により金融ADRは創設されました。
この制度により、投資家にとって簡易かつ迅速な紛争解決が実現されることが期待されています。なお、ADRはAlternative Dispute Resolutionの頭文字をとったものです。直訳すると代替紛争解決手続きとなります。
認証紛争解決機関
苦情処理や調停や斡旋などの紛争解決手続きを実施する機関は、ADR促進法(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律)などの法律で定められた一定の基準・要件を満たした上で、法務大臣の認証を受けた事業者に限定されています。この認証を受けた機関を認証紛争解決機関と呼びます。
このため、2010年10月から金融機関は①苦情処理・紛争解決手続きの応諾、②事情説明・資料提出、③手続き実施者の解決案の尊重という内容を含む契約を指定紛争解決機関と締結することが義務付けられています。この契約を締結した金融機関の証券、保険、ローンなどの金融商品の商品パンフレット、金融機関のHPなどに次のような記載があります。
○○○(金融機関名)は、○○業法(法律名)に基づく金融庁長官の指定を受けた指定紛争解決機関である○○○○(指定紛争解決機関名)と手続実施基本契約を締結しています。○○○(金融機関名)との間で問題を解決できない場合には、○○○○(指定紛争解決機関名)に解決の申し立てを行うことができます。
投資信託に関するADR
投資信託に関するADRは、日本証券業協会の特定非営利活動法人である「証券・金融商品あっせん相談センター」(FINMAC=Alternative Dispute Resolution Financial Instruments Mediation Assistance Center)が行なっています。
FINMACは認証紛争解決機関であり、金融庁長官から、金融商品取引法第156条の39第1項の規定に基づく指定紛争解決機関として指定を受けており、株式、投資信託、FXの取引に関するトラブルの相談・苦情を受け付け、斡旋を行なっています。
FINMACの「あっせん苦情相談処理状況報告書」によると、2019年04月01日 ~ 2019年12月31日にFINMACに持ち込まれた相談・苦情・斡旋の件数は合計で4,598件で、内訳は相談が3,433件、苦情が814件、斡旋が351件でした。
これを商品別に見ると、株式が1,223件と最も多く、その他では債券(840件)、投資信託(598件)、金融先物デリバティブ(231件)、その他デリバティブ455件などとなっています。
指定紛争解決機関(金融)
- 日本証券業協会特定非営利活動法人「証券・金融商品あっせん相談センター」 (FINMAC)(日本証券業協会、投資信託協会、日本証券投資顧問業協会、金融先物取引業協会、日本商品投資販売業協会の連携による)
指定紛争解決機関(保険・その他)
- 社団法人生命保険協会 (生命保険業務、外国生命保険業務)
- 全国銀行協会(銀行業務、農林中央金庫業務)
- (社)信託協会(手続対象信託業務、特定兼営業務)
- (社)日本損害保険協会損保ADRセンター(損害保険業務、外国損害保険業務、特定損害保険業務)
- (社)保険オンブズマン(損害保険業務、外国損害保険業務、特定損害保険業務、保険仲立人保険募集)
- (社)日本少額短期保険協会(少額短期保険業務)
- 日本貸金業協会(貸金業務)