ESG投資が注目を集める中、投資信託の運用会社や機関投資家のESG活動報告書やスチュワードシップ・レポートなどにおいて、「ICGNグローバル・スチュワードシップ原則」に賛同表明したという記載を目にすることがあります。
ICGN グローバル・スチュワードシップ原則とはどのような原則でしょうか。
ICGNとは？
ICGNはInternational Corporate Governance Networkの略称です。日本語では国際コーポレート・ガバナンス・ネットワークと訳されています。ICGNは1995年に英米の機関投資家を中心に、企業統治（コーポレート・ガバナンス）に関する意見や情報の国際的な交換を目的に設立された団体です。
ICGNは、効率的なグローバル市場と持続的な経済の促進に向け、実効的なコーポレートガバナンスの構築と投資家のスチュワードシップの醸成をミッションに掲げています。
ICGNの本部はロンドンにあります。45カ国を超える国の機関投資家などがメンバーとなっており、世界最大級の投資家であるカリフォルニア州職員退職年金基金CalPERSや日本の年金積立金管理運用独立行政法人（GPIF）もICGNのメンバーです。また、経団連は2019年6月に日本におけるコーポレート・ガバナンス強化や建設的対話の促進に向けた協力・連携に関する「覚書」をICGNと締結するなど、コーポレート・ガバナンスの権威とも言える存在です。
ICGNグローバル・スチュワードシップ原則とは？
ICGNグローバル・スチュワードシップ原則は投資家のスチュワードシップ責任・方針・プロセスにおけるベストプラクティス（最善慣行）についてICGNの見解を示したものです。スチュワードシップは「責任ある機関投資家」と訳されます。つまり、ICGNグローバル・スチュワードシップ原則は、責任ある機関投資家としてどうあるべきか、適切な受託者責任をどう果たすべきかという原則です。
ICGNグローバル・スチュワードシップ原則は、第一部の原則本体(７原則)、第二部の各原則に係るガイダンス、第三部の各市場参加者の役割(The ecosystem of stewardship)から構成されています（2019年11月末現在、2020年6月に改定が実施される予定）。
ICGNグローバル・スチュワードシップ原則の7つの原則は次の通りです。
1 内部のガバナンス：実効的なスチュワード シップの基盤
原則 1: 投資家は国が要求する目標やICGN グローバル・スチュワードシップ原則との整合性が確保できるよう自らのガバナンスの実務に対するレビューと受益者・顧客に対し受託者としての役割を果たす能力があるか否かについてのレビューを継続的に行 うべきである。
2 スチュワードシップ 方針の策定・実施
原則 2: 投資家は、責任ある投資の範囲を 特定するスチュワードシップ方針を策定・実施することについてコミットすべきである。
3 投資先企業のモニタリング及び評価
原則 3: 投資家は投資ポートフォリオに含まれる企業のモニタリングと新規の投資対 象企業の評価に努めるべきである。
4 企業へのエンゲージメントと投資家の協働
原則 4: 投資家は受益者・顧客のために、投資先企業へのエンゲージメントを実施し、価値の維持・向上に努めるべきである。また、懸念のある分野について意見交 換を行えるよう、他の投資家と協働する準備も行うべきである。
5 議決権の行使
原則 5: 議決権を有する投資家は受益者・顧客の利益のため、ポートフォリオ全体において、適切な注意（due care,diligence）と判断の下、十分な情報に基づき、独立した議決権行使の意思決定に努めるべきである。
6 長期的価値創造の促進と環境・社会・ガバ ナンス(ESG)要因の統合
原則 6: 投資家は企業の長期的な業績と持 続的な成功の促進に努め、マテリアルな環境・社会・ガバナンス(ESG)の要因をスチュワードシップ活動に統合すべきである。
7 透明性、開示、報告の強化
原則 7: 投資家は自らの責任の実効的な履 行について十分な説明責任を果たすため、スチュワードシップ方針・活動を公表するとともに、どのように履行されたかについて受益者・顧客にも報告を行うべきである。
ICGN グローバル・スチュワードシップ原則の全文→https://www.icgn.org/sites/default/files/ICGN_Global_Stewardship_Principles_JPN_1.pdf
2019年11月末現在、日本の運用会社では、アセットマネジメントOne、損保ジャパン日本興亜アセットマネジメント、ニッセイアセットマネジメントがICGNグローバル・スチュワードシップ原則に賛同しています。
