SFDRとは
SFDRは、Sustainable Finance Disclosure Regulationの略称で、日本語ではサステナブルファイナンス開示規則と訳されます。欧州連合(EU)における金融規制の一つで、ESG(環境、社会、企業統治)の観点から、金融商品の特性の評価・開示をEUの全ての金融市場参加者に義務付ける規則です。
SFDRは、金融市場参加者および金融アドバイザーに対し、金融商品に関する持続可能性リスクの統合および持続可能性への悪影響の考慮のプロセスおよび持続可能性関連情報の提供の透明性に関する規則を定めています。
SFDRは2019年12月に制定され、2021年3月10日に適用が開始されました。なお、SFDRはEU以外の金融機関であっても、欧州の投資家に金融商品を販売している場合は、規制の対象になります。
SFDRは、金融市場参加者によるグリーンウォッシュのリスクを低減する一方で、透明性を高め、最終投資家がESGと持続可能性が投資にどのように関わってくるかを理解しやすくすることを目的としています。
会社としての開示と金融商品ごとの開示について
SFDRでは、金融機関に対して会社としての情報開示と金融商品ごとの情報開示を義務付けています。
会社としての情報開示
金融機関は、①持続可能性(サステナビリティ)リスク方針、②事業体レベルでの持続可能性への悪影響についての情報、③持続可能性リスクの統合に関連する報酬方針をホームページで開示することが求められます。
なお、SFDRにおいて持続可能性(サステナビリティ)リスクとは、「環境、社会、ガバナンスに関する事象または状況のうち、それが発生した場合、投資価値に負の重要な影響を与える可能性のあるもの」と定義されています。
①持続可能性(サステナビリティ)リスク方針(第3条)
金融市場参加者は、投資意思決定プロセスにおいて持続可能性リスクを考慮することが義務付けられています。また、金融市場参加者は、持続可能性リスクの統合に関する方針についての情報をウェブサイトで公開することが求められます。金融アドバイザーは、投資アドバイスや保険アドバイスに持続可能性リスクを組み入れる方針について情報をウェブサイトで公開しなければなりません。
②事業体レベルでの持続可能性への悪影響について(第4条)
金融市場参加者は、投資決定が持続可能性の要素に及ぼす主要な悪影響を考慮する場合、その規模、活動の性質及び規模並びに利用可能とする金融商品の種類を十分に考慮した上で、それらの影響に関するデューディリジェンス方針に関する声明文を自社のウェブサイトで公表・維持しなければなりません。
投資判断の持続可能性要因に対する悪影響を考慮していない場合は、その明確な理由(関連する場合、そのような悪影響を考慮する意図があるかどうか、及びその時期に関する情報を含む)を開示しなければなりません。
③持続可能性リスクの統合に関連する報酬方針(第5条)
金融市場参加者及び金融アドバイザーは、その報酬方針に、それらの方針がいかに持続可能性リスクの統合と整合的であるかについての情報を含め、その情報をウェブサイトで公表することが求められます。
金融商品レベルでの情報開示
金融機関は、販売する金融商品ごとに、持続可能性リスクを契約前(目論見書やウェブサイトなど)及び契約後(定期報告書など)で開示することが求められます。
持続可能性リスクの統合について(第6条)
全ての金融商品について、持続可能性リスクが投資判断に組み込まれているかどうか、また組み込まれている場合には、それを投資判断に統合する方法、及び持続可能性リスクが利用可能な金融商品のリターンに及ぼすと思われる影響についての評価結果について開示することが求められます。
金融商品レベルにおける持続可能性への悪影響について(第7条)
金融商品が持続可能性の要因による主要な悪影響を考慮するかどうか、及び考慮する場合にはどのように考慮するかについての明確かつ合理的な説明を開示することが求められます。金融市場参加者が投資意思決定の持続可能性要因に対する悪影響を考慮しない場合、考慮しない旨及びその理由を開示することが求められます。
契約前開示における環境または社会的特性の促進の透明性について(第8条)
金融商品が、環境的もしくは社会的特性、またはこれらの特性の組み合わせを促進する場合、投資が行われる企業がグッドガバナンス慣行に従うことを条件として、以下の情報を開示しなければならない。
- それらの特性がどのように達成されたかについての情報。
- 指数が参照ベンチマークとして指定されている場合、その指数がこれらの特性に合致しているかどうか、またどのように合致しているかについての情報。
契約前開示における持続可能な(サステナブル)投資の透明性について(第9条)
金融商品が持続可能な投資を目的としており、インデックスが参照ベンチマークとして指定されている場合、以下の情報を契約前に開示しなければなりません。
- 指定されたインデックスがその目的にどのように合致しているかについての情報。
- 当該目的に沿った指定インデックスが、海外市場のインデックスとどのように異なるかについての説明。
また、金融商品が持続可能な投資を目的としており、参照ベンチマークとして指定されていない場合、開示情報には当該目的をどのように達成するのかについての説明が含まれている必要があります。
さらに、金融商品が炭素排出量の削減を目的としている場合、パリ協定の長期的な地球温暖化の目標を達成する観点から、低炭素排出量のエクスポージャーを目的とすることを含める必要があります。開示すべき情報には、パリ協定の長期的な地球温暖化目標の達成の観点から、炭素排出量の削減の目的達成のための努力の継続がどのように確保されているかの詳細説明を含みます。
金融商品が環境性や社会性を促進することを謳っている場合や、持続可能な投資を謳っている場合には、上記のほかにもウェブサイト及び定期報告書において開示する内容が詳細に定められています。
SFDRの全文→https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32019R2088&from=DE