自己投資口取得
自己投資口取得は、不動産投資法人(リート)が、自社の投資口を取得することです。上場企業の自社株買いに相当します。
平成25年6月の投信法の改正により、不動産投資法人による自己投資口の取得が可能となりました。ただし、不動産投資法人の場合は、投信法第80条第2項の規定により取得した投資口を相当の時期に処分または償却をしなければならないとされています。この点が、上場企業が自社株を購入し金庫株として長期間保有できるのと大きく異なる点です。(2018年4月末現在)
自己投資口取得の影響
不動産投資法人が自己投資口を取得し、償却した場合、発行済み投資口数は減少します。そのため1株当たり利益が増え、それに伴い1口当たり分配金も増加するため、投資家からは歓迎されるケースが多いといえます。新規物件取得の需要などがないときの、投資法人資金の有効活用策のひとつとも考えられます。
自己投資口取得の状況
2017年6月12日に、インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人がJリート初となる自己投資口取得の実施を公表(その後実施)して以降、同投資法人を含めて6つの投資法人が自己投資口の取得の実施を発表(実施)しています。
投資口取得の実施の発表日 |
投資法人名 |
2017/6/12 | インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人(3298) |
2017/10/10 | いちごホテルリート投資法人(3463) |
2017/10/13 | 日本リテールファンド投資法人(8953) |
2017/11/15 | グローバル・ワン不動産投資法人(8958) |
2018/2/28 | 大和証券オフィス投資法人(8976) |
2018/3/13 | 日本ロジスティクスファンド投資法人(8967) |
自己投資口取得の理由
各社の自己投資口取得の理由を各社の発表資料から抜粋すると次のようになります。
インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人
本投資法人の投資口価格の水準、手元資金の状況、財務状況、マーケット環境等を総合的に勘案し、自己投資口の取得及び消却により資本効率の向上と投資主還元を行うことが、中長期的な投資主価値の向上につながると判断したため。
いちごホテルリート投資法人
本投資法人の投資口価格は、2017 年7 月期末時点の1 口当たりNAV(純資産)139,940 円を20%超下回る水準にあります。こうした状況下、本投資法人では、自己投資口の取得および消却を行い、1 口当たりの純資産、純利益、および分配金を向上することが、投資主価値の最大化につながるものと判断いたしました。
日本リテールファンド投資法人
本投資法人は、投資主価値の向上に資するフリーキャッシュの使途を検討してまいりましたが、現況においてはその一部を相対的に割安な水準にある本投資法人の投資口の取得に活用することが、1口当たり分配金の増加を通じ投資主価値の向上につながるものと考え、自己投資口の取得についての決議に至りました。
グローバル・ワン不動産投資法人
本投資法人の投資口価格の水準、手元資金の状況、財務状況及びマーケット環境等を総合的に勘案した結果、自己投資口の取得及び消却により資本効率の向上と投資主還元を行うことが、中長期的な投資主価値の向上につながると判断した。
大和証券オフィス投資法人
の投資口価格の水準、手元資金の状況、財務状況、マーケット環境等を総合的に勘案し、自己投資口の取得及び消却により資本効率の向上と投資主還元を行うことが、中長期的な投資主価値の向上につながると判断した。
日本ロジスティクスファンド投資法人
一口当たりNAVや分配金利回り等を総合的に検討した結果、本投資法人の投資口価格が著しく割安であると考えられる水準で推移していると判断し、資本効率の向上及び投資主還元のための資本政策の一環として、自己投資口の取得を決定しました。
これらの会社説明からも、不動産投資法人の自己投資口取得は、
- 現金を必要とする新規優良物件の取得機会の減少
- 潤沢なフリーキャッシュ
- 投資口価格が割安な水準に放置されている
- 投資口1口当たり分配金の向上による投資主還元
などがその理由だとわかります。